ディップの滝とビッグ・ツリー

タスマニア再発見
No.83 ディップの滝とビッグ・ツリー
文=千々岩健一郎

このコラムでは例年7月、題材として北西部地域を取り上げることが多かった。冬のタスマニアは低温と同時に雨も多く、旅行にあまり適していないのはご承知の通り。今回のテーマも北西部の人気の観光スポットだが、ここは冬場こそ見ごたえのある場所である。「Dip River Forest Reserve」が今回の訪問場所の正式名称だ。北西部の小さな港町スタンレーから2号線を10キロ東に走ったところから右折、C225号線をさらに26キロ走った所に目的地がある。30分強で到達するが、分岐点にある標識は小さいので見落とさないようにしたい。

この森林保護区の最大の見どころはディップの滝。高さも幅もタスマニアの数多い滝の中で最大級だが、最も特徴的なのは滝の落差を作っている崖の岩の形だ。太古の昔、地下のマグマが固まってできた玄武岩の多角形の柱が多数集まって階段状の斜面を形成している。上流から流れてきた水は集まった柱のてっぺんにぶつかりながら落ちていく。特に冬場の雨の続いた後の滝の轟音を伴うその光景は、恐ろしいほどのスケール感と迫力がある。夏場でも大雨の後には同様の姿が展望できるが、やはり冬場の方がそのチャンスは多い。

下から見上げるディップの滝は轟音と迫力が楽しめる

このディップの滝の展望ポイントは2カ所。川の手前の案内板とトイレのあるピクニック・サイトから152段のステップを下り、滝の下から見上げる方法が1つ。滝の高さを感じながら間近に見物したい人はこの階段を下っていくことになるが、常時湿っていて滑りやすく注意を要する。もう1つは、橋を渡った対岸の右手に滝を上部から展望できるデッキからの眺め。特に水量の多い冬場はここからの見物が危険がなく、時間も短縮でき無難である。

この保護区のもう1つの見どころはビッグ・ツリーだ。橋を渡って1キロほど移動した先の森の奥に鎮座している、樹齢400年といわれるユーカリの老木。マウント・フィールド国立公園のスワンプガムと同じ高木タイプのユーカリで、俗称ストリンギー・バークと呼ばれる。このユーカリは幹の太さと多数のコブが付き苔むした姿から、その古さが容易に伺い知れる。周囲には根元を保護するためのデッキが設けられてひと回りでき、周囲16メートルといわれるその大きさを実感できる。一般的にユーカリの寿命は最大でも400年なので、この木はタスマニアで最も古いユーカリの1つといっても良いであろう。


タスマニア再発見

 

千々岩 健一郎 プロフィル

1990年からタスマニア在住。1995年より旅行サービス会社AJPRの代表として、タスマニアを日本語で案内する事業の運営を行うとともに、ネイチャー・ガイドとして活躍。2014年代表を離れたがタスマニア案内人を任じて各種のツアーやメディアのコーディネートなどを手がけている。北海道大学農学部出身。

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