No.35 北岸の国立公園、ロッキーケープ

タスマニア再発見
アニバーサリー・ビーチ

タスマニア再発見

No.35 北岸の国立公園、ロッキーケープ

文=千々岩健一郎

バス海峡に面した北岸のタスマニアは、暖かく日差しのやや強い場所といったイメージがある。北半球の同緯度の北海道でいえば、道南の襟裳や日高といった場所の感じであろうか。今回紹介するロッキー・ケープ国立公園は、この北岸に沿って東西に伸びている面積3,000ヘクタールの小さな国立公園。西にナット、東にテーブル・ケープ、これら2つの特異な地形に挟まれてある丘陵地帯だ。

ここは人気スポットのクレイドルやフレシネと比較すれば、目立たず訪れる人も少ない場所だが、ほかにはないいくつかの特徴があって捨てがたい魅力がある。

まずは、地質だ。タスマニアで最も古い、先カンブリアン期(10億年以上前)のものといわれる珪岩(Quartzite)が至る所でむき出しになった地形が存在する。国立公園の西側の入り口から入って灯台のある突き出た岬の先端に立ってみてほしい。バス海峡の雄大な広がりとともにこの古い珪岩が波で浸食された断崖が眼下にある。

または、東側の入り口シスターズ・ビーチから入り、50分ほど歩いてアニバーサリー・ビーチまで出かけてみてほしい。このビーチの長く続く砂浜の至る所には風化したシルト岩(珪岩と同様にタスマニアの最も古い時代の岩石)がむき出しになっていて、沖合いにはThe Five Sentries(5人の見張り番)と名付けられた岩礁群が見える。

次はアボリジニの歴史。この地域は数千年の昔からアボリジニたちの生活の場で、今でも存在するいくつかの洞窟周辺には貝塚があり、この地域で8,000年以上の長きに渡って彼らが生活をしていたことが分かる。岬の灯台の近くにある洞窟の最大のものは付近に解説のある展望デッキがあるが、ここも聖地になっていて中に入ることはできない。

最後の特徴はここの植生である。この国立公園の中央を東西に走っているのがシスターズヒル。このヒルに沿って、海岸線独特のヒースランドが存在し、春には数多くのワイルド・フラワーが咲きほこる。この限られた場所だけでも約40種のランがあるといわれる。

バンクシャーはオーストラリアの代表的な植物だが、このロッキー・ケープにはSaw Leaf Banksiaという葉っぱの縁がノコギリのような潅木がある。シスターズ・ビーチからアニバーサリー・ビーチに向かう途中のバンクシャー・グローブを歩けば、山火事の後でいっせいに成長を始めたこの木の群落が楽しめる。


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千々岩 健一郎 プロフィル

タスマニア在住18年。1995年より旅行サービス会社AJPRの代表として、タスマニアを日本語で案内する同社の運営を行なうとともに、ネイチャー・ガイドとして活躍。特に植物関係の造詣が深く、その専門知識をもとに各種の自然観察ツアーやメディアのコーディネートなどを手がけている。北海道大学農学部出身。

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