季節の味覚、スカロップ

タスマニア再発見
No.85 季節の味覚、スカロップ
文=千々岩健一郎

タスマニアにある我が家の近くのレストランでは、毎年冬から春のこの時期「スカロップ祭り」と称して採れたての貝を美味しく食べさせてくれる。天ぷら風にカラッと揚げたものをおなじみのチップスと盛り合わせたフィッシュ&チップスの類だが、季節感のある食材で趣深い。

タスマニア近海で採れるスカロップ「Commercial Scallop」は日本で言うイタヤ貝のことで、「Japanese Scallop」(日本のホタテ貝)とは異なる種類のものだ。ただし、当地の日本人の間ではもっぱらホタテという名前で通用している。日本のホタテに比べるとひと回り小さく、貝柱のみが流通している日本とは異なり、当地では貝柱にオレンジ色の卵巣が付いた状態で販売されるのが一般的(この貝は繁殖期以外はオスとメスの区別がなく、卵巣が精巣になる場合もある)。

7~12月ごろがスカロップのシーズン

7~12月ごろがスカロップのシーズン

このタスマニアのスカロップは元々、島周囲の浅い海底にふんだんに生育していたが、乱獲のために資源が枯渇して1980年代終わりごろには全く収穫できなくなった。実は、この資源再生のために日本の技術者たちがはるばるタスマニアまで招聘されたという歴史がある。当時、同州の水産業省の人間から、北海道で確立された増殖技術を導入したいという要請を受け、日本人4家族が移り住んだ。彼らは東海岸のトライバナ付近をベースに約20年にわたり増殖事業の指導を行った。増殖とは、種を一定の海域にまいて資源を育成するという準養殖的な方法だ。現在は1つの会社がこの東海岸でこの技術を確立し、安定した生産を行っている。

同時にある程度復活した周辺の天然資源も、永続的な活用を行うため漁獲量や収穫地をコントロールしながら一定量が収穫されている。現在マーケットで販売されているスカロップは、復活した天然の漁場で収獲されたものと管理された水域で増殖された準養殖タイプの2種類ということになる。

シーズンは7~12月ごろまでだが、もっとも収獲量が多いのは9月。とは言っても限られた数量しか収穫できないため価格的には決して安いものではない。スカロップは過熱し過ぎると身が固くなり風味を失ってしまうので、調理のポイントは焼くにしても煮るにしても短時間で済ますことだ。ホワイト・ソースやカレーの場合は、火を止めた後の余熱で調理するくらいがちょうど良い。


タスマニア再発見

 

千々岩 健一郎 プロフィル

1990年からタスマニア在住。1995年より旅行サービス会社AJPRの代表として、タスマニアを日本語で案内する事業の運営を行うとともに、ネイチャー・ガイドとして活躍。2014年代表を離れたがタスマニア案内人を任じて各種のツアーやメディアのコーディネートなどを手がけている。北海道大学農学部出身。

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