黄金の目のクロフエガラス

タスマニア再発見
No.88 黄金の目のクロフエガラス
文=千々岩健一郎

タスマニアのツーリスト・シーズンが到来。夏のタスマニアには海外のみならずオーストラリア本土からも数多くの人がやって来て、人気のクレイドル・マウンテン国立公園を訪問しブッシュ・ウォーキングを楽しむ。今回は、このハイキングの途中で必ずと言って良いほど登場する「クロフエガラス」を紹介しよう。例えば、ダブ湖周遊サーキットを歩いてちょうど中間地点の休憩ポイントでお弁当でも開けようものならいつの間にか近くに待機している。あるいは、ダブ湖展望台やワルドハイムのピクニック・ハットの近くなど、ハイカーたちが集まるところに登場するカラスのように真っ黒な鳥である。

尾羽の白と黄金の目が特徴のタスマニア・クロフエガラス
尾羽の白と黄金の目が特徴のタスマニア・クロフエガラス

日本のカラスとの違いは、尾羽に白が混じり、くちばしがやや太く、そしてするどくにらみつけるような黄金の虹彩を持っている点である。正しくは、タスマニア・クロフエガラス(Black Currawong)。英語名の「カラウォン」は鳴き声由来のアボリジニの言葉から来ている。クレイドルのホテルに宿泊していると、朝やねぐら入り前の夕暮れ時に「カラ・ウォーン」という感じのけたたましい声が森の中から響き渡る。

この鳥は雑食性だ。自然界では、植物の実や種、昆虫などを食べるが、人間の食べ物も好んで口にする。ハイカーたちの休憩ポイントなどに登場するのは、食べ残しや恵んでくれる食べ物を求めているためである。カラス以上に狡猾で、サンドイッチなどを無防備に食べていると、後ろから飛んできて巧妙に掠め取っていくので要注意。オーバーランド・トラックで、タスマニア最高峰のマウントオッサの頂上を目指し分岐点にバックパックを不用意に放置したりすると、ジッパーを開けて中の食料を盗み取ったりするという話を聞いたことがある。ことほどさように、食物に対しては貪欲な鳥のようである。

オーストラリアのアイドル的な鳥でマグパイといういたずら者がいるが、このマグパイの日本名は、カササギフエガラス。このクロフエガラスとは同じ仲間で、大きさはずっと小さいがけたたましい鳴き声や食物に貪欲なその性格はクロフエガラスと似ている点が多い。マグパイは豪州のほぼ全域で見られるようであるが、クロフエガラスはタスマニアの固有種。クレイドル・マウンテン国立公園やその他の国立公園を散策の折には、この鳥にぜひとも注目してみてほしい。なかなか好感の持てる存在である。


タスマニア再発見

 

千々岩 健一郎 プロフィル

1990年からタスマニア在住。1995年より旅行サービス会社AJPRの代表として、タスマニアを日本語で案内する事業の運営を行うとともに、ネイチャー・ガイドとして活躍。2014年代表を離れたがタスマニア案内人を任じて各種のツアーやメディアのコーディネートなどを手がけている。北海道大学農学部出身。

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