【特集】自然の神秘と歴史の島「タスマニアを旅しよう」


独自の進化を遂げた生態系と、入植時代からの興味深い歴史の記録を持つタスマニア州。そんな同州を毎月取り上げるコラム「タスマニア再発見」が、間もなく日豪プレスでの連載100回を迎える。これを記念し、これまでに同コラムで取り上げたタスマニア観光の見どころや知られざるその魅力を、自然、味覚、文化・歴史、生活の4側面からハイライトで紹介する。ぜひ旅の計画の参考にしてみては。


タスマニア基本情報
■面積:90,758km²(北海道の約8割)■人口:51万7,000人(2015年)■気候:四季があり、夏の最高気温は海岸で平均21度、内陸で17~24度。冬の最高気温は海岸で平均12度、内陸は雪が多く3度 ■時間帯:シドニーと同じくUTC+10時間(日本+1時間)で、夏時間もあり(10月第1日曜早朝~翌年4月第1日曜早朝。UTC+11時間)■タスマニアへの交通:【空路】国内線はメルボルン、シドニー、ブリスベン、アデレードを結ぶ。国際線は現在発着無し【海路】デボンポートとメルボルン間に週6便のフェリーが運航 ■タスマニア島内の交通:車、バス。一部の観光列車を除き、一般旅客用の電車は無し




オーシャン・ビーチ

常に強い西風が吹きすさぶ西海岸に約40キロ続く長大なオーシャン・ビーチ。西にはアフリカ大陸まで数万キロに及ぶ南氷海、北の海岸線には荒涼たる風景が延々と続く。南アフリカ産の多肉植物ピッグ・フェイスのピンクの花や、北半球のベーリング海域からの渡り鳥ハシボソミズナギドリ(マトン・バード)のコロニーなどがあり、独特で神秘的なスケール感を味わえる。


フレシネ半島国立公園

タスマニア東海岸の中ほどから南に垂れ下がるように突き出ているフレシネ半島は、昔から富裕層の避寒地として人気があり冬にもお薦め。赤い花崗岩がむき出しになったハザードと呼ばれる岩山が特徴で、そこを30分ほど登ると名所ワイングラス・ベイの展望台が。半島の東側に存在するフレンドリー・ビーチは、白い鳴き砂が延々と続き、明るく美しい海岸だ。


野生の川、ゴードン

タスマニア南西部を源とする全長181キロのゴードン川は、独特の河岸域の生態系を持ち、世界遺産に指定されている。深い森が河岸を覆う幻想的な景色は、ゴードン・リバー・クルーズで堪能できる。上流の湿原から流れ出たタンニンを含んだ赤茶色の水のために、晴れた日には鏡のような水面に空の青、湖岸の緑が映り込む神秘的な風景が現出する。


マウント・フィールド国立公園

ホバートから北西に車で1時間、ダーウェント川の中流域に位置するマウント・フィールド国立公園。勇壮なラッセル滝や、遊歩道の深く茂った木性シダの森、ユーカリの巨木(写真)で知られる。格調ある美しさの巨大ユーカリは樹齢数百年、樹高80メートル前後で、その根元に立てば、この木の大いなる精気に圧倒されるだろう。


オーバーランド・トラック

タスマニア旅行でもっとも訪問者が多いのが北西地域にある世界遺産・クレイドル・マウンテン国立公園。その南北を縦走するオーバーランド・トラックというハイキング・ルートは、高地のため夏でも雪や霜が珍しくなく、その距離65キロ、標準行程は5泊6日。初めの2日間は、開けた風景の氷河草原。そこにクレイドル・マウンテン、バーン・ブラフ、ぺリオン・ウェストなどの岩山の切り立った姿が。無数の湖沼、深い谷、滝、うっそうと茂る冷温帯雨林なども登場し、タスマニア最高峰マウント・オッサ(1,617メートル)への挑戦も。最終日のセントクレア湖とオリンパス山の岩峰の眺めは感動的だ。




オイスター

1947年に戦後の賠償の1つとして日本の広島と熊本の真牡蠣(Pacific Oyster)が導入されたのを始まりとして、牡蠣の養殖もタスマニアの産業に。直売所はホバート空港近くなら、直営レストランもある「Barilla Bay Oyster Farm」。ブルーニー島内ハイウェイ沿いの「Get Shucked Oyster」や、東海岸のコールス・ベイの手前9キロのハイウェイ沿いの「Freycinet Marine Farm」もお薦めだ。


サーモン

タスマニアの清らかな川の下流では鮭の養殖も盛んだ。生後1年から1年半は淡水で、その後海水に移され、直径100メートル超の巨大ないけすで生育。タスマニア南部ではダーウェントやヒューオン川の下流域に多くの養殖エリアがある。タスマニアの低温かつクリーンな環境で育った鮭には寄生虫がいないので、もちろん刺身など生でもおいしく頂ける。


レザーウッドの蜂蜜

「レザーウッド(Leatherwood)」は、世界でタスマニア西部のレインフォレストにしか存在しない樹木。この木の花から採れる蜂蜜は、濃厚で強い花の香りが特徴だ。毎年1月から3月にかけては、10号線近くのネルソン滝やセントクレア湖岸などで、枝いっぱいにこぼれるように美しい白い花をつけたレザーウッドを見ることもできる。


サクランボ

島の形がリンゴに似ていることからアップル・アイランドの愛称で呼ばれ、リンゴの生産で有名なタスマニアだが、近年はサクランボの生産も拡大。濃い赤色をした濃厚な味のダーク・チェリーが主流で、収穫期の12月から1月にかけては、ツーリングの途中の農園や販売所でも購入できる。夏のタスマニアを訪れるなら、旬の果物をぜひ楽しもう。




ポート・アーサー

ホバートから95キロの港湾の町の、豪州最大の監獄跡、ポート・アーサー。1830年、77年の閉鎖までに約12,000人の囚人がこの地で刑に服した。現在はユネスコ世界遺産にも指定されており、日に映える紅色のレンガと砂岩の外壁、緑の芝生と敷地を取り囲むユーカリの森、空の青と群青色の入り江など、意外にも明るい雰囲気が時の流れとともに感じられる。


ウールマーズ・エステート

北部ロンセストン空港から程近いロングフォード郊外で公開されている19世紀の大邸宅、ウールマーズ・エステート。当時の豪州最大級の羊毛農家の敷地で、木造の巨大な毛刈小屋、使い古しのビンテージ・カーなど、当時にタイムスリップしたような光景が。タスマニアでは11月がバラのシーズンで、2001年に開設された2ヘクタールのバラ園も見もの。


西海岸ウィルダネス鉄道

1896年から67年間、タスマニア西部開拓の歴史を担った旧マウント・ライル鉱山鉄道。西部の町クイーンズタウンと港町ストローンとを結ぶ35キロの路線だったが、1963年に廃止。しかし難工事を経て2002年、観光用の西海岸ウィルダネス鉄道として生まれ変わった。スイスで開発されたアプト式の歯車を使って急坂を登るのが特徴。


ヘリテージ街道

州都ホバートと北のロンセストンを結ぶ幹線道路ミッドランド・ハイウェイ。19世紀、馬車馬を休ませる宿場村が設けられたこの歴史ある街道には、今も入植時代の面影のある村や集落が残り「ヘリテージ街道」と呼ばれる。途中には砂岩造りの美しい橋「ロス・ブリッジ」や、映画『魔女の宅急便』のパン屋のモデルといわれる「Ross Bakery Inn」の建物も。




MONA

タスマニアの大富豪デービッド・ウォルシュが設立したホバートの「Museum of Old and New Art(MONA)」は、古代芸術と超現代的な作品に出合える私立美術館。軍艦のような外観の他、内壁の一部として3億年前の砂岩の岩盤という天然の地形や、WA州の羊毛倉庫由来の木材を再利用するなどユニークな建築だ。豪州出身アーティストの企画展なども開催。


アグフェスト

タスマニア北部カーリックで毎年5月の第1木・金・土曜に開催されるアグフェスト(Agfest)は、例年約7万人が訪れる同州最大の農業祭。タスマニアの食品、ガーデニング、ワイナリーなど多業種が出店し、オーガニックやハンドメイド製品のショッピングも楽しめる。乗馬関連エキスポやファッション・パレードなどの花形プログラムも目白押し。


サラマンカ・マーケット

毎週土曜、午前8時半から午後3時までホバートで開かれる大規模なマーケット。野菜や蜂蜜などの食品や、骨董、クラフト製品、植木などが販売され、飲食店やワイナリー、民謡のライブ演奏などにもタスマニアの文化的な豊かさが香る。会場のサラマンカ通りは19世紀初頭に捕鯨の港として栄えた場所で、元倉庫の砂岩造りの建物にその名残りが見られる。


ロンセストン

豪州の歴史の中でシドニー、ホバートに次いで3番目に古い町、ロンセストン。タスマニアの野生の島というイメージとは趣きを異にする文化的で温かな雰囲気がある州北部の町だ。歴史的なビクトリア様式の市議会アルバート・ホール(写真)や時計塔が有名な旧中央郵便局などを見ながらの散策も楽しい。ロンセストンではぜひ地元産ビール「ボーグス(Boag’s)」を味わおう。

体感する「タスマニア」
初めてのタスマニア旅行前に知っておきたいポイントとは?

珍しい野生動物

島であるタスマニアにはさまざまな野生動物が生き残っている。有袋類のウォンバットやワラビーを間近に観察するならクレイドル、肉食のタスマニア・デビルやフクロネコは野生動物公園で。卵で生まれる哺乳類のハリモグラは気温の高い午後の時間帯に一般道の脇に登場。運が良ければそこここでカモノハシも見られる。郊外での夜間運転の際には動物の飛び出しに要注意だ。

原生の森で深呼吸

より「自然」を感じるなら、太古の森、特に湿った西側の原生地域にある冷温帯のレインフォレストを歩くのがお薦めだ。野鳥の多い乾いたユーカリの森も良いが、苔むした南極ブナやキング・ビリー・パイン(杉の仲間)、木生シダが生い茂る深い森を楽しもう。春から夏の国立公園では、タスマニアワラタ、クリスマス・ベルなどの各種のワイルド・フラワーも。

素敵な町でひと休み

島をドライブして回ると、素敵な小さな町との出合いがある。古い橋のあるリッチモンドやロス、壁画の町シェフィールド、メルヘンチックなスタンレー、カモノハシの首都ラトローブ、日曜市のエバンデール、風車の町オーツランド、トピアリーのレイルトン、北岸のペンギン、潮吹き岩のビチェノなど。ハイウェイを降りて、ちょっと立ち寄ってみたい。



■連載コラム「タスマニア再発見」
Web: nichigopress.jp/category/event/Tasmania
■著者:千々岩健一郎
◎1990年からタスマニア在住。95年より旅行サービス会社AJPRの代表として、タスマニアを日本語で案内する事業の運営を行うとともに、ネイチャー・ガイドとして活躍。2014年に同社代表を離れた後も、タスマニア案内人を任じて各種のツアーやメディアのコーディネートなどを手がける。北海道大学農学部出身

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