ペンギンと共存する町、バーニー/タスマニア再発見

タスマニア再発見
No.98 ペンギンと共存する町、バーニー
文=千々岩健一郎

バーニー(Burnie)はタスマニア北岸の港町。メルボルンとの間に横たわるバス海峡に面し、人口はこの州4番目で、貨物船が多く行き来する港湾都市だ。港内にはパルプの原料となるウッド・チップの積み出し施設もある。人気の国立公園クレイドル・マウンテンまで1時間半という距離なので、時には大型客船の立ち寄りも見られる。

今回は、バーニーの騒がしい港の一角に野生のペンギンが住んでいるというお話。そのペンギンとは、体長は30センチ、体重1キロ程度と世界で最も小型のフェアリー・ペンギン(リトル・ペンギン)だ。日中は遠く沖合いまで出かけて魚を捕り、日の入りとともに夕刻海岸の巣に帰ってくる。このペンギンはタスマニア中で見られる種類のものだが、このバーニーのように人間が生活し活動している場所で普通に共存していることには驚かされる。何しろ人の行き来の多いおなじみのKFCの店舗から100メートルも離れていない所に彼らの巣が点在する。

バーニーのペンギンたち © Burnie City Council
バーニーのペンギンたち © Burnie City Council

バーニーの町でこんな特異な環境が維持されているのには、町の人びとの隠れた努力がある。バーニー市の支援とともに、ボランティア・グループ「Friends of Burnie Penguins Group」がさまざまな活動を行っているのだ。その主な活動は、海岸線の邪魔になる雑草の除去、コンクリート製の人工巣の設置、そして傷付いたペンギンを保護して治療することなど。また、ペンギンたちの最大の外敵は人間の飼っているペットの犬で、犬たちがペンギンの巣を荒らさないように、そしてペンギンが車道まで出て行かないようにするためのフェンスの整備も重要な仕事だ。

夏場の旅行シーズン、毎晩ペンギンが帰巣する時刻にボランティアが見学ツアーを行い、訪れる人びとへの啓蒙活動を行うことも活動の一部となっている。町の中心部から歩いても行ける所にペンギン観察センターが設けられており、暗くなってからこのセンターに行けば無料でこの見学ツアーに参加できる。ツアー終了後に観察センターから町まで歩いていくと、海岸線沿いの遊歩道の下に設置されたたくさんの人工巣穴と、既にそこに移り住んでいるペンギンの夫婦を見ることができるだろう。

バーニーは、タスマニア旅行の行程上なかなか宿泊プランに加えるのが難しい場所だが、カモノハシの出現する保護区が近くにあり、またチーズ工場やウイスキー醸造所などもできて充実してきた。タスマニア北部を旅行する際はぜひ1泊して、ペンギンたちの見学もしてみては。


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千々岩 健一郎 プロフィル

1990年からタスマニア在住。1995年より旅行サービス会社AJPRの代表として、タスマニアを日本語で案内する事業の運営を行うとともに、ネイチャー・ガイドとして活躍。2014年代表を離れたがタスマニア案内人を任じて各種のツアーやメディアのコーディネートなどを手がけている。北海道大学農学部出身。

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