新鮮魚介なら「ミュアーズ」/タスマニア再発見

タスマニア再発見
No.107 新鮮魚介なら「ミュアーズ」
文=千々岩健一郎

先日の地元紙マーキュリーに「ミュアーズ・フィッシュ・センター(Mures Fish Centre、以下ミュアーズ)」設立30周年の大きな記事が掲載された。この機会にホバートで最も有名なシーフードの拠点についてご紹介したい。ホバート・サリバンズ・コーブの2つのドックに挟まれたエリアは、いわばタスマニアのフィッシャーマンズ・ワーフ。漁船の係留されたドック周辺に鮮魚を販売する大小の店舗やレストランが集まっているが、その中心的存在がミュアーズである。

ひときわ目立つ煉瓦色の屋根、緑の壁の2階建ての建物には、広いスペースのダイニング・レストラン(Mures Upper Deck)、1階部分に魚売り場とカウンター・オーダーのレストラン(Lower Deck)、オイスター・バーなどがあり、1日中にぎわっている。

ビクトリア・ドックの「ミュアーズ」
ビクトリア・ドックの「ミュアーズ」

この施設は、ジョージ&ジル・ミュアー夫妻により、創業された。夫妻は、1962年結婚直後にロンドンを後にし、オーストラリアの地に新天地を求めた。ジョージが最初に水産物を扱う会社に勤めたのをきっかけに水産業に従事する道をたどった。

65年に独立を決心してからは、自分たちの漁船を所有して海の上での生活を始めた。魚介類を自ら漁獲し、販売する仕事を行っていたが、72年、ジョージのひざのけがが悪化したのをきっかけに、レストラン業に転進、バッテリー・ポイントにある小さなコテージを買い取り、瞬く間に多数の賞を獲得する人気店となった。

最初のレストランの成功と共に、より新鮮な材料を入手するために再び自分たちの船を持ったジョージは自ら漁船に乗り、週のうち船上で3日、店舗で3日働くというハードな生活を課し、更には他の店やホテルへの卸販売にまで拡大した。85年に州政府がウォーターフロント再開発の計画を打ち出した時、彼らは果敢にもこの大きなプロジェクトへの参加を決心した。

不足する資金を補う工夫をし、新しい施設の設計のために2カ月を掛けて世界中の同様の施設を見て回り、数々の工夫を積み上げていった。各して30年前の87年10月、現在の姿とほぼ同様の建物が完成し、オープンするに至ったのである。

残念なことに代表のジョージは03年病気で早世したが、現在は奥さんのジルと息子夫婦を中心に、3世代の家族経営の会社として成功を収めている。事業は、ビクトリア・ドックのフィッシュ・センターの営業に加えて、自社船での操業、別の小売店舗と卸売り、水産物加工センターの運営と多岐にわたり、まさにタスマニアのフィッシュ・センターとなっている。


タスマニア再発見

 

千々岩 健一郎 プロフィル

1990年からタスマニア在住。1995年より旅行サービス会社AJPRの代表として、タスマニアを日本語で案内する事業の運営を行うとともに、ネイチャー・ガイドとして活躍。2014年代表を離れたがタスマニア案内人を任じて各種のツアーやメディアのコーディネートなどを手がけている。北海道大学農学部出身。

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