ステーキの老舗「Ball & Chain Grill」/タスマニア再発見

タスマニア再発見
No.111 ステーキの老舗「Ball & Chain Grill」
文=千々岩健一郎

本紙9月号で、豪州牛肉の特集があり興味深く拝見した。それにちなんでという訳ではないが食のテーマの一環でタスマニアのステーキ喰い処を取り上げるとしよう。

「Ball & Chain Grill(ボール・アンド・チェーン・グリル)」は、ホバートの名高いサラマンカ通りの一角にある本格炭焼きが謳(うた)い文句の店である。Ball & Chainとは囚人の足かせのこと。この店を含むこの通りの建物は囚人たちの手によって19世紀初頭に造られた。建物外観だけでなく店内の雰囲気にもこの港の歴史を強く感じさせるものが残る。

特集記事の冒頭にグラス・フェッド、グレイン・フェッドの違いについての話があったが、タスマニアの一般的な牛肉はもちろんグラス・フェッドが主体。草の質が豪州で最も優れているここの牛肉はそれだけで評価が高い。

日本では牛肉の評価は霜降りの程度というのが一番に来るが、これはすき焼き文化の流れに則ったもの。肉と一緒に野菜やその他の具を煮て食べる料理にはあの脂のうまさが不可欠であるが、ステーキのように肉そのものを食べる料理には、必ずしも必要とは言えない。健康志向で純粋に肉の味を楽しむならばむしろグラス・フェッド。ただし「熟成」を十分に行ったものという条件付きだが。

サラマンカ通りの本格炭火焼きステーキ店「Ball & Chain Grill」
サラマンカ通りの本格炭火焼きステーキ店「Ball & Chain Grill」

同店の特徴は、熟成した英国系のグラス・フェッド肉を本格炭焼きで食べられること。数多くあるステーキ店の中でもタスマニアでいち押しの店であると思う。メニューにあるのは4つの部位。ランプ、ポーターハウス、スコッチ・フィレ、アイ・フィレ。ランプはモモ肉の中で最も柔らかいがロースには劣る。

ポーターハウスは俗に言うサーロイン、スコッチはリブロースの芯の部分、アイ・フィレはヒレ肉。日本人にはなじみがないがやはりお薦めはスコッチ・フィレ。適度に脂が乗っていてうまい。大・中・小のサイズが選択でき、普通の男性には300gの中サイズがちょうど良い。焼き具合の指定には「ブルー・レア」から「ウェルダン」までの6つの選択肢があるが、ウェブでその程度の写真が出ているので事前に確認しておいて欲しい。一般に好まれる「ミディアム・レア」でもかなりレアに近い焼き具合で出てくる。この店のもう1つの大きな利点は、メインをオーダーすると無料で食べることができるサラダ・バーがあることだ。ステーキが焼き上がるのを待ちながら新鮮野菜やパスタを自由に食べることができるが、食べ過ぎるとせっかくのステーキが食べられなくなってしまうので要注意。


タスマニア再発見

 

千々岩 健一郎 プロフィル

1990年からタスマニア在住。1995年より旅行サービス会社AJPRの代表として、タスマニアを日本語で案内する事業の運営を行うとともに、ネイチャー・ガイドとして活躍。2014年代表を離れたがタスマニア案内人を任じて各種のツアーやメディアのコーディネートなどを手がけている。北海道大学農学部出身。

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