鄙(ひな)びた村の「Ingleside Bakery Cafe」/タスマニア再発見

タスマニア再発見

No.121 鄙(ひな)びた村の「Ingleside Bakery Cafe」
文=千々岩健一郎

タスマニアの北の玄関ロンセストン空港にほど近い、郊外の村エバンデールにあるのが人気ベーカリー「Ingleside Bakery Cafe」。鄙びた村なんて言うとしかられるかもしれないが、俗にジョージアン・ビレッジ(Georgian Village)と呼ばれているように、中心の通りに面してナショナル・トラストに指定された19世紀初頭の建物が立ち並ぶ良い感じの場所なのだ。

村の入り口にあるそんな古い建物の1つがこのベーカリー。一見ベーカリーらしくない重厚な建物は1867年に村の役所として造られたもので、以降1986年まで公民館や裁判所としても使用され、その閉鎖のわずか2年後にベーカリーに生まれ変わった。以来、村の代表的なダイニング・スポットとして住民や訪れるツーリストに親しまれている。

エバンデールの人気ベーカリー「Ingleside Bakery Cafe」
エバンデールの人気ベーカリー「Ingleside Bakery Cafe」

石造りの建物の中に入ると、高い天井が公共建造物らしい由来を感じさせ、古く擦り切れた木の床が長く人びとに親しまれてきた歴史を思わせる。気温の低い日には奥の暖炉に火が入り、天気が良い日には屋外で季節の花々を見ながら食事が楽しめるすてきな中庭も設けられている。

キッチンには骨董品のようなまきのオーブンがある。役場の建物をベーカリーとして使うようにした時に造った物らしいが、まきの火力を保つためになんと2万5,000個のレンガで固めたという稀少なスタイルの物だ。同店の最も人気のある商品は、そのオーブンで焼いた「ホタテ・パイ」らしいが、私のお薦めはサワー・ドウのライブレッド。

これはもちろんそのまま持ち帰っても良いのだが、このパンの厚切りトーストにスモーク・サーモンやアボカドをトッピングしたメニューが幾つかあり、お薦めできる。現代のカフェには不可欠のコーヒーは、最新のマシンが導入され専任のスタッフが抽出を行っていて期待を裏切らない。

もう1つ面白いのは、店内でタスマニアの地元グッズがいろいろと展示販売されていること。ハニーやジャム、ワイン、ビールなどの食品に加え、地元のアーティストが作ったジュエリー、オーナーがオークションで手に入れた骨董品などさまざま。オーダーが運ばれてくるのを待つ間、こういった品々を見て回る楽しみがある。

ところで、エバンデールの村は毎週日曜日にマーケットが開催されることでも有名だ。もし週末にロンセストン周辺を訪問する機会があれば、この日曜市を楽しみがてらこのベーカリーを訪問したら良いだろう。祝日は休みだが毎週日曜日は最も忙しい1日とのことなので、席を確保するのが大変かもしれないが。


千々岩 健一郎
1990年からタスマニア在住。1995年より旅行サービス会社AJPRの代表として、タスマニアを日本語で案内する事業の運営を行うと共に、ネイチャー・ガイドとして活躍。2014年代表を離れたがタスマニア案内人を任じて各種のツアーやメディアのコーディネートなどを手掛けている。北海道大学農学部出身。

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