「黒い森」ケーキのDaci & Daci Bakers/タスマニア再発見

タスマニア再発見

No.123 「黒い森」ケーキのDaci & Daci Bakers
文=千々岩健一郎

タスマニアの洋菓子屋さん、パティシエールならどこをお薦めするか? パン屋さんならば幾つかすぐに思い浮かぶけれど、ケーキの店はなかなか少ない。そんな中でのお薦めは、ホバートのウォーターフロント、マリー通りにある「Daci & Daci Bakers」だろう。州議事堂の向かい、首相公邸のある建物の隣で政治家のお客さんで混み合っているので私自身は敬遠していたのだが、最近2号店が北側のニュータウンに新しくオープンし行きやすくなった。

パン屋さんなのだが、ヨーロッパ・スタイルの洋菓子の品ぞろえが充実している。中でもお薦めはブラック・フォレスト・ケーキだ。ドイツ南西部に広がる「黒い森」をイメージして作られたヨーロッパの代表的なケーキとして名高いが、チョコレート・ムースとチェリー、お酒の利いたクリームの組み合わせが絶妙で私の好物の1つ。同店の物は、味はもちろんすばらしいのだが、そのスタイルが垢抜けている。チョコレート・ムースで覆った小さなドーム型で、名前を見ないととてもブラック・フォレスト・ケーキとは思えない。もちろん他にもいろいろとあるのだけれど、なかんずくこのケーキには特徴がある。

ブラック・フォレスト・ケーキ
ブラック・フォレスト・ケーキ

通常、販売されているのは個売りの物だが、注文すれば巨大なドーム型のパーティー用特別版のオーダーも可能だ。1個で12人分以上は楽にまかなえるという代物だから年末の集まりにもお薦めできる。

店の名前は、シェフでオーナーのダチ夫妻から来ている。ご主人のナッサー・ダチ氏は、1999年コソボから初めてタスマニアにやって来て、環境が特別気に入り1週間の予定を延ばし延ばしして4年間そのまま滞在を続けた。その後メルボルンに渡って伴侶を見つけ、7年後に改めてタスマニアに腰を落ち着けて同店をオープンするに至った。常に新しいアイデアを求めて味の追及に献身している彼だが、素材はできる限りタスマニアのクリーンな環境からの素材を尊重し、調達している。

ニュータウンの2号店
ニュータウンの2号店

店はあくまでベーカリーで、クロワッサンなどのパン類を始め、メニューを見ると朝食・昼食向けの数々のごちそうが並んでいる。レビューでは食事アイテムの評価も高いが、そんな名物の1つに本格クロック・ムッシュ(Croque monsieur)というのがある。1910年に初めて登場したフランスの定番カフェ・メニューとのことで、トライしてみる価値があると思うが、私としては、やっぱりパティシエールとしての同店、特にブラック・フォレスト・ケーキを試すことをお薦めする。


千々岩 健一郎
1990年からタスマニア在住。1995年より旅行サービス会社AJPRの代表として、タスマニアを日本語で案内する事業の運営を行うと共に、ネイチャー・ガイドとして活躍。2014年代表を離れたがタスマニア案内人を任じて各種のツアーやメディアのコーディネートなどを手掛けている。北海道大学農学部出身。

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