ウェリントン山の「Lost Freight Cafe」/タスマニア再発見

タスマニア再発見

No.124 ウェリントン山の「Lost Freight Cafe」
文=千々岩健一郎

マウント・ウェリントンはホバート市後方にそびえる標高1,270メートルの山で、全体がウェリントン・パークとして保全され、まるでタスマニアの原生の自然を凝縮したような場所である。頂上まで車で行けるので訪問するツーリストも多いが、12月から1月にかけてのこの季節は、さまざまな野生の花々が見られることもあって歩いて登る人が多い。今回は、ウェリントン山の登山口「The Springs」にある、ちょっとユニークなカフェを取り上げよう。

ユニークなのはまずこの店の造り。名前が「Lost Freight(失われた貨物)」とあるように、20フィートのドライ・コンテナ1個がそのまま店になっている。コンテナのサイズは長さが約6メートル、奥行き2.5メートル、高さが2.6メートルなので、極めて限られたスペースしかない。左半分がキッチン兼カウンター、右側に最大4人ぐらいが座れる席のあるショップがあるだけだ。

カフェは自然に溶け込むように佇んでいる
カフェは自然に溶け込むように佇んでいる

もう1つのユニークな点はロケーション。スプリングは、ウェリントンの登山道路を標高680メートルまで登った地点にある休息所。駐車場とトイレ、案内板があり、ここから幾つかのハイキング・ルートがスタートするので、車を置いて歩き始める人も多い。従って、同店はハイカーたちへのインフォメーション・センターも兼ねている。ショップには無料のルート・マップの他、ウェリントンの歴史文化について触れた書籍なども販売されている。

かつて同地には19世紀の終わりに建てられたホテルが存在していたのだが、1967年の大きな山火事で消失した。歴史のあるホバートの裏山だけにウェリントン山には人びとの暮らしとつながるさまざまなストーリーも残されているのだ。

カフェのメニューはスペースの関係もあり限定されているが、コーヒーの味は本格的。食べ物はパイが中心だが、スイーツ・メニューはその割に充実している。営業時間(夏場)は平日が午前9時から午後4時、週末は午前8時から午後5時までと、週末に訪れる人が多いことが分かる。

ウェリントン山のハイキング・ルートは最近改修されて大幅に歩きやすくなっている。夏場のこの時期、スプリングから出発して頂上を目指すピナクル・トラックには12月中旬から咲き始めたクリスマス・ミントブッシュの花が咲き乱れ、トラック上にその独特の形をした花びらを散らしているはずだ。ハイキングのスタート前、あるいは歩き終わった後のくつろぎタイムを同店の周りのベンチに腰掛けてのんびり過ごしてみてはいかが?


千々岩 健一郎
1990年からタスマニア在住。1995年より旅行サービス会社AJPRの代表として、タスマニアを日本語で案内する事業の運営を行うと共に、ネイチャー・ガイドとして活躍。2014年代表を離れたがタスマニア案内人を任じて各種のツアーやメディアのコーディネートなどを手掛けている。北海道大学農学部出身。

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