No.18 世界遺産の森に咲く蜜の花

タスマニア再発見タスマニア西側に生息するレザーウッドの花

タスマニア再発見

No.18 世界遺産の森に咲く蜜の花

文:千々岩健一郎
 タスマニアは養蜂の盛んな州である。それはレザーウッドという、ここにしか咲かない香り高い花の蜜が手に入るからだろう。まだ味わったことのない人はぜひまずこの蜂蜜を味わってみてほしい。濃厚で、強い花の香りを持つこの味を覚えたら、やみつきになること請け合いだ。今回は、ちょうどこの季節が満開で、蜜蜂たちが群がって蜜集めをしているレザーウッドの花と、その蜂蜜を紹介しよう。
 レザーウッド(Leatherwood)は、世界中でタスマニアにしか存在していないユニークな植物だ。しかも、この木が生えているのはタスマニアでも雨の多い西側に限られていて、レインフォレストと呼ばれる湿った自然林にのみ存在する。地図で見ても分かるようにタスマニアの西側はほとんどが世界遺産に指定された国立公園だ。つまりこの蜂蜜は、世界遺産の森の中とその周辺部の森でひそやかに咲く花から集めて作られた貴重な自然食品というわけだ。

タスマニア再発見レザーウッドの花の蜜から作られるタスマニア産の蜂蜜

 例えばこの時期、10号線に沿ったネルソン滝の自然ウオークやセントクレア湖岸の森歩きをしてみると、トラックの上に白い花びらが落ちているのに気が付く。そこで上を見上げると、樹高が10数メートルの木の先端付近までいっぱいの花を付けたレザーウッドの木が見つかるだろう。花は白色の4弁で、ちょうど梅の花ぐらいの大きさ。この花をめがけて群がるミツバチの羽音が聞こえてくるかもしれない。
 特に森が川に面した所やハイウエー沿いなど日当たりが良い場所では、その咲き具合も格別に良い。1月から3月にかけてはこの花の蜜集めの最盛期で、タスマニア西部のハイウエー沿いでは、道路際に巣箱を設置してあるのが各所で目に入る。
 最後に、この花を見たいが西部の奥地まで出かけて行くには時間がないという人のために、ホバート近くのベストな観察場所を紹介しておこう。それはヒューオン・バレーの人気スポット「エアウオーク」で、ここならば2時間弱のドライブで訪問できる。エアウオークは、ヒューオン川の上流部の森を数十メートルの高さから見学できるユニークな施設で、この樹上デッキを歩くと白い花を無数に付けたレザーウッドの木の先端部分を間近に観察することができる。ホバートから一番近い世界遺産地域、ハーツマウンテン国立公園もすぐこの近く。
 ぜひ一緒に訪問してみてはどうだろう。


タスマニア再発見

千々岩 健一郎 プロフィル

 タスマニア在住18年。1995年より旅行サービス会社AJPRの代表として、タスマニアを日本語で案内する同社の運営を行なうとともに、ネイチャー・ガイドとして活躍。特に植物関係の造詣が深く、その専門知識をもとに各種の自然観察ツアーやメディアのコーディネートなどを手がけている。北海道大学農学部出身。

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