No.24 草原の国立公園、ナラウンタプ

タスマニア再発見
公園名物のフォレストリー•カンガルー

タスマニア再発見

No.24 草原の国立公園、ナラウンタプ

文:千々岩健一郎
 ナラウンタプは北岸に位置する草原の国立公園で、タスマニアの野生動物の楽園だ。デボンポートから車で30分、ロンセストンからでも1時間弱の立ち寄りやすい場所にある。バス海峡に面する2つのビーチに沿った面積4,349ヘクタールのタスマニアでは小型の国立公園だが、野生動物の豊かさではほかに類を見ない。
 かつてはアスベストス国立公園という名前で知られていた。近くにアスベストが採れた山脈がありこの名前が付けられたものだが、この山脈がこの国立公園を形成していたわけではなかったので、2000年にアボリジニの言葉を取って現在の名前に変えられた。世の中でアスベストスのイメージが悪くなったことと、この付近はもともとアボリジニたちの重要な生活の場であったことがその理由だ。公園内を走る自動車道路の終点付近からベイカーズ・ビーチに出てみると、今でも彼らの生活の跡の貝塚が随所に散見される。
 さて、ここの最大の特徴である野生動物についてお話しておこう。この国立公園ではタスマニアにいるほとんどの野生動物たちが比較的簡単に観察できるが、特に注目すべきはまず、カンガルー。クレイドルをはじめとするタスマニアの各地の公園ではワラビーの仲間は簡単に出てくるのだが、カンガルーたちを見つけるのは容易ではない。ここには、このタスマニアのカンガルーの代表、フォレストリー・カンガルーが草原の彼方で遊んでいる。時として立ち上がった2匹のルーたちがお互いにボクシングをして遊んでいる様子が見える。
 次に登場するのはウオンバット。彼らは、日暮れ時の公園に入っていくと入り口付近の各所でのそのそと草を食んでいる様子が見え、近寄っていっても逃げようとはしない。暗くなる前に訪問すれば、夕方の光の中で写真を撮ることも容易だ。
 野生のタスマニア・デビルは通常、観察するのは非常に難しい。ここでは、このデビルすら暗くなった後、登場するのに出会うことがたまにあるようだ。かつて、筆者はある日本のテレビ番組の撮影のために公園内のバンガローに泊り込み、深夜、れき死した動物の肉を求めて集まってくるデビルの生態を撮影したことがある。こんなことが、町からほど近い場所でできるということが、この場所の動物たちの豊かさを証明している。
 日中の気温の低い8月から10月にかけては、ウオンバットが昼間でも巣から出てくる時期でもある。ベイカーズ・ビーチ沿いの草原を歩いて見ると、真昼間から巣穴の付近に出没する重量級のその姿が観察できることだろう。


タスマニア再発見

千々岩 健一郎 プロフィル
 タスマニア在住18年。1995年より旅行サービス会社AJPRの代表として、タスマニアを日本語で案内する同社の運営を行なうとともに、ネイチャー・ガイドとして活躍。特に植物関係の造詣が深く、その専門知識をもとに各種の自然観察ツアーやメディアのコーディネートなどを手がけている。北海道大学農学部出身。

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