タスマニア、ロンセストンの魅力

タスマニア再発見
ワインの名産地として知られるタイマー・バレー

タスマニア再発見

No.70 ロンセストン(その3) タイマー・バレー

文=千々岩健一郎

タイマー・リバーはロンセストンのノース・エスクとサウス・エスクという2つの川の合流点を出発点とし、北のバス海峡に向けて流れていく、長さ65キロの大河です。この川の堆積土壌で形成された河岸のなだらかな丘陵地の間を、広い川幅を持ちゆるやかに曲がりくねって流れていくその姿はなかなか景観豊かです。

現在この川の流域は、タイマー・バレー・ワイン・ルートとしてタスマニアを訪れるワイン好きの格好の目的地として人気を博しています。ここの気候が、フランス中東部の高級ワインの産地ブルゴーニュ地方と似ていて、同様の高品質のワインが生産されることが知られているのです。

南緯42度に位置する冷涼な気候は、特にリースリング、シャルドネ、ピノグリスなどの白、赤だとピノノアールのブドウに定評があります。歴史的には、19世紀の中ごろに最初のブドウ畑が作られて、ビクトリアやサウス・オーストラリアのブドウ造りに際して苗木を供給したというような話があります。本格的に作られるようになったのは1960年代以降、世界にタスマニア・ワインの名前が知られたのは、1994年ワイン産業の創始者の1人アンドリュー・ピーリー氏が現在でも人気の高いナインス・アイランド・シャルドネを発表して、ロンドンの品評会でトロフィーを持ち帰ってからとのこと。現在では、タスマニアのワインの40%をこのタイマー・バレーで供給している。全長170キロに及ぶワイン・ルートを走ると、ここでワイン・セラーを設けている約44カ所のワイナリーを訪問することができる。

時間がなくルートの全部は無理、またそれほどワインにこだわらない人には、ロンセストンからこの川の西側を北に向けて走るA7のハイウエーを少しだけドライブしてみてほしい。約10分ほど走ると右側に水鳥の多く生息する湿地帯タイマー・アイランドがあり、さらに10分ほど走った高台に、タイマーの雄大な風景が展開するブラディズ・ルックアウトがある。入植当時この付近に潜み、義賊として人気のあった山賊マシュー・ブラディの名前を取った展望台で、この川の中流域の様子がよく分かる。時間がない人は、ここから近いスイス風住宅の開発地グリンデルワルドを訪問してロンセストンに戻る。もう少し時間がとれれば、さらに北上して、ユニークな形の斜帳橋バットマン・ブリッジを渡って対岸に移動。ここから東側のA8ハイウエーでロンセストンに戻る。途中には、人気のヒルウッドのイチゴ・ファームがある。季節がよければぜひ訪問先に加えたいところである。


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千々岩 健一郎 プロフィル

タスマニア在住21年。1995年より旅行サービス会社AJPRの代表として、タスマニアを日本語で案内する同社の運営を行なうとともに、ネイチャー・ガイドとして活躍。特に植物関係の造詣が深く、その専門知識をもとに各種の自然観察ツアーやメディアのコーディネートなどを手がけている。北海道大学農学部出身。

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