No.67 色彩と文化の融合 サラマンカ・マーケット

タスマニア再発見
カラフルなソックスと帽子の売店

タスマニア再発見

No.67 色彩と文化の融合 サラマンカ・マーケット

文=千々岩健一郎

世界の名だたる旅行ガイド、ロンリー・プラネットの「世界で訪れるべき都市ベスト10」の1つとしてホバートが取り上げられたのは2013年。「聳え立つウェリントン山の麓、ダーウェントの河岸に広がる安息の地は今や豊かな文化の融合の場を主張し、それは毎週土曜日、有名なサラマンカ・マーケットによって具現化される…」と同誌の公式の発表文書にあった。新設の「MONA」や、改装された「Tasmania Museum & Art Galley」などもその選択要因に大きく寄与しているものと思うが、やはりこの土曜恒例のオープン・マーケットほど、さまざまな文化と培われた個性を演出している場はないだろう。

サラマンカ通りは、ホバートのウォーターフロント、プリンセス埠頭に隣接し、19世紀初頭の捕鯨の港として栄えた時代の雰囲気を強く残した場所。当時、鯨油の倉庫として使われた3~4階建ての砂岩造りの建物とプラタナスの並木が通りに沿って立ち並び、かなたにウェリントンの山頂が展望できる歴史的なスポットだ。

サラマンカ・マーケットは、この通りを舞台に毎週土曜日、午前8時半から午後3時まで開催される恒例イベントである。1972年、ホバート市の1議員の提案で始められた最初のマーケットはわずかに12の出店だった。それが年々発展し、現在はおよそ300店舗、毎週の集客は2万5,000人から4万人の規模にまで拡大している。

野菜果物蜂蜜などの食材や、芸術品、骨董、木工品、ガラスや陶器の工芸品、布製品、植木、種苗が販売されているほか、レストランにワイナリー、さらに大々的に演奏する民謡グループや片隅でバイオリンを奏でる子どもの小遣い稼ぎまで多岐に渡る。


ウェリントン山をバックにしたマーケット風景

マルチカルチャーの国オーストラリアを象徴するように、世界各国の文化の香りのする品物もあるが、同時に手造りの作者の工夫や個性にあふれるものも多い。売り場の色彩の豊かさには歩いているだけで目を奪われる。季節の切花、ラオスのおばさんの野菜売り、カラフルな帽子や靴下の露店、大きな木箱にいっぱいの採れたてリンゴなど、思わずカメラで写し取りたいシーンばかり。

旅行の際はぜひとも土曜日の1日、ホバートでの自由時間を取れるように計画してはいかがだろう。この機会に、午後からダーウェント・リバーのクルーズ船に乗って、今なお話題の美術館「MONA」にも足を運んでみよう。


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千々岩 健一郎 プロフィル

タスマニア在住21年。1995年より旅行サービス会社AJPRの代表として、タスマニアを日本語で案内する同社の運営を行なうとともに、ネイチャー・ガイドとして活躍。特に植物関係の造詣が深く、その専門知識をもとに各種の自然観察ツアーやメディアのコーディネートなどを手がけている。北海道大学農学部出身。

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