No.65 クレイドルの新設ボード・ウォーク

タスマニア再発見
クレイドル・バレー・ボード・ウォーク

タスマニア再発見

No.65 クレイドルの新設ボード・ウォーク

文=千々岩健一郎

今回のテーマはクレイドル・バレー・ボード・ウォーク。「新設」としたが完成して既に8年以上経つ。それまで未舗装の車の道路しかなかった国立公園入り口とロニー・クリーク駐車場の間を、歩いていける木道が完成したのだ。現在でも意外に歩く人の少ないコースなので、あえて新設としてご紹介をする。

コースは、インタープリテーション・センター(旧ビジター・センター)の裏手をスタートして、オーバーランド・トラックの出発点になっているロニー・クリークまで、延長5.5キロ(約2時間)のすべてボード・ウォークで作られた歩きやすいトラックである。

訪問客数の増加に対して世界遺産の環境の保全を図るため、2007年から新しいマネジメント計画が導入された。その一環として、シャトル・バス方式が導入され、車での訪問者は入り口のビジター・センターに併設された駐車場に車を置いて、シャトル・バスに乗り換えて公園内に入るようになったのだ。そのほか、ダブ湖展望台にあるトイレの下水施設の改修や自動車道路の簡易舗装などが行われるとともに、この新設ボード・ウォークが作られたのである。

今年の夏にクレイドル・マウンテン国立公園を訪問の折には、シャトル・バスで展望台まで行った帰りに、このボード・ウォークを歩いて入り口まで戻ってみよう。

ロニー・クリークから中間点のスネーク・ヒルまでの間は、ダブ湖から流れ出るダブ・リバーの流れに沿ったコースで、ところどころに橋が設けられてタンニンの泡が浮いた赤い水の流れとともに、河岸に沿って生えるペンシル・パインの樹木が観察できる。スネーク・ヒルから終着点までのコースは、ボタングラスとコーラル・ファーンの草原とユーカリの林の対比が素晴らしい。1月のこの時期はコーラル・ファーンの黄金色の新芽が草原を埋め尽くし、そこに立つ枯れたユーカリの白い姿とのコンビネーションがとても面白い。ゴールの少し手前のボタングラスの草原で振り返ればクレイドルの姿も展望できる。

最後に、歩いている人からは見えないこのボード・ウォークのもう1つの重要な役割について。この木道の下には3つのパイプが設けられている。1本は送電、1本は画像送信、1本は下水管。下水管は、公園内のトイレから出た廃水を公園の外に排出するため。画像送信ラインは、ダブ湖展望台の様子を常時ビジター・センターのモニターに送信し、同時に公園局のウェブサイトを通じて世界中の人が閲覧できるようにするため。つまりこのボード・ウォークは国立公園の環境保全のための重要な役割を負っているという訳なのだ。


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千々岩 健一郎 プロフィル

タスマニア在住21年。1995年より旅行サービス会社AJPRの代表として、タスマニアを日本語で案内する同社の運営を行なうとともに、ネイチャー・ガイドとして活躍。特に植物関係の造詣が深く、その専門知識をもとに各種の自然観察ツアーやメディアのコーディネートなどを手がけている。北海道大学農学部出身。

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