No.63 生きている化石 アナスピデス

タスマニア再発見
アナスピデス・タスマニエ

タスマニア再発見

No.63 生きている化石 アナスピデス

文=千々岩健一郎

太古の自然の島タスマニアには、ここにしか生息していない珍しい動物や植物が多数存在するのだが、今回はその中で「生きている化石」として知られているエビについての話を。正確にはアナスピデス・タスマニエ(Anaspides Tasmaniae)、別名マウンテン・シュリンプ(Mountain Shrimp)と呼ばれる小エビである。

およそ2億5,000万年前の三畳紀の化石のエビと同じ姿をしており、そのことが生きている化石と呼ばれる所以である。非常に温度に敏感な生物で、水温が低くかつ常時安定した環境でしか生活できないため、標高の高い湖や洞窟の中を流れる川、山間部の地下水が常時湧き出ているような場所などにのみ生息しており、なかなかお目にかかれない。

アナスピデスというのはギリシャ語で「硬い殻がない」という意味で、現代のエビと比較すると甲殻類らしい身体を守る堅い殻がないのが特徴らしい。それだけきわめてデリケートな身体を持つ動物ということである。体長は大きいもので5センチ、通常2センチから3センチぐらい。水中の岩の上を歩くように移動しているので、生息している湖や川に行って注意深く探せば意外と簡単に見つけることができる。とはいってもその場所を探すのが問題なのだが…。

まず最も行きやすい場所で確実に見ることができるのは、マラクーパ鍾乳洞。ここはウエット・ケーブで、洞窟の中に川が流れており、土ボタルが観察できる場所にもなっている。しかしここでの問題は光がないこと。洞窟ツアーのガイドに上手にお願いしてトーチでアナスピデスを探してもらえれば、短時間ながら比較的簡単に見ることができる。


アナスピデス・タスマニエ

明るいところでは、まずマウントフィールド国立公園のビジター・センター。この入り口にある展示ルームには、エビの泳ぐ映像を上手くアレンジして映したモニター・パネルが設置されている。実物については、上部ハイキング・トラック途中のターン(標高1,200メートル付近)で1度見たことがあるが、そこまで行くのは容易ではない。ハーツ・マウンテン国立公園のハーツの頂上に向かうハイキング・トラックの途中にもいくつか湖があり、ここでも見られるが、この場所に行くのもなかなか容易ではない。

最後に、とっておきの場所を紹介すると、ホバートの裏山ウェリントンの中腹。標高1,000メートルのところにシャレー(Chalet)と名付けられたBBQスポットがあり、この近くの小さな湧き水ポイントに多数生息している。天然水の収集のついでにぜひとも探してみてはいかがだろう。


タスマニア再発見

 

千々岩 健一郎 プロフィル

タスマニア在住21年。1995年より旅行サービス会社AJPRの代表として、タスマニアを日本語で案内する同社の運営を行なうとともに、ネイチャー・ガイドとして活躍。特に植物関係の造詣が深く、その専門知識をもとに各種の自然観察ツアーやメディアのコーディネートなどを手がけている。北海道大学農学部出身。

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