深紅の女王「ワラタ」

タスマニア再発見
タスマニアを代表する花「タスマニア・ワラタ」

タスマニア再発見

No.77 深紅の女王「ワラタ」

文=千々岩健一郎

スケールの大きな西オーストラリアのワイルド・フラワーに対抗するつもりはないが、タスマニアにもユニークで素晴らしい野生の花々が多数ある。その中で、タスマニアを代表する花といえば、ワラタであろう。正式には、「タスマニア・ワラタ」。11月の終わりから12月にかけて標高の高い国立公園(標高700〜1,000m)で、深紅のあでやかなその姿が登場する。どちらかといえば地味なワイルド・フラワーの多いタスマニアでは、ひときわ色彩の目立つ女王的な存在である。

タスマニア・ワラタは、南半球に多いプロテアと同じ仲間のヤマモガシ科の植物である。ガクの変形した筒状突起が集まったその花のスタイルは極めて特徴的である。ヤマモガシ科には、バンクシア、グレヴィレア、ハケアなどの属が含まれていて、いずれも同様のユニークな花の特徴がある。シドニー・オリンピックのメダリストのブーケに使用されたNSW州のワラタと同属であるが、ずっと素朴でタスマニアにしかない固有種となっている。タスマニア・ワラタは潅木なので、大きいものでは高さが3メートル位にもなり、木の上から下まで無数に花が付いている満開状態では、離れたところからもすぐに分かる。クレイドル・マウンテン国立公園の入り口手前の道路沿いにはこの木がたくさんあって、11月の後半辺りから鈴なりのワラタの様子が車の中からも観察できる。12月に入ると、標高の高いダブ湖周遊サーキットの北岸付近のワラタが見ごろになる。いつかこの欄でも取り上げたボードウォーク沿いでも多数のワラタが観察できるので、クレイドルを訪問するのに最もお薦めのシーズンといえる。ホバートから近いマウント・フィールド国立公園では、有名なラッセル滝の周辺では難しく、未舗装の曲がりくねった道路を公園上部まで登っていかないと登場してこないが、同様にホバートから近いハーツ・マウンテン国立公園には、この花の名前が付いた「ワラタ展望台」があり深い谷の展望とともにこの花を間近に観察できる。ホバート中心部からもっとも簡単に観察できるのは、ウエリントン山だ。中腹1,000mのシャトー付近まで登れば、白い花をつけたハケアの仲間ニードル・ブッシュと共にワラタの花が観察できる。夏のタスマニア旅行では、ワラタの花を代表とするワイルド・フラワーの観察をぜひお楽しみください。


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千々岩 健一郎 プロフィル

1990年からタスマニア在住。1995年より旅行サービス会社AJPRの代表として、タスマニアを日本語で案内する事業の運営を行うとともに、ネイチャー・ガイドとして活躍。2014年代表を離れたがタスマニア案内人を任じて各種のツアーやメディアのコーディネートなどを手がけている。北海道大学農学部出身。

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