野生のユリ「クリスマスベル」

タスマニア再発見
釣鐘状の花が垂れ下がって咲く、色鮮やかな「クリスマスベル」

タスマニア再発見

No.78 野生のユリ「クリスマスベル」

文=千々岩健一郎

先月のワラタに続いて、今回もタスマニアの季節のワイルド・フラワーを紹介します。ワラタほど目立つ存在ではありませんが、オレンジのあでやかな色合いを持ったユリの花「クリスマスベル」は、図鑑の表紙にも登場する夏を代表する花です。同属の近似種がほかの州にもあるようですが、この種はタスマニアの固有種(Blandfordia punicea)。クリスマスベルの名前が示す通りクリスマスの頃から1月の中旬ごろがベスト・シーズン。高さ50センチ程度の茎の先からいくつかの釣鐘状の花が垂れ下がって咲きます。鮮やかな赤みを帯びたオレンジ色に加えて、先端内側に黄色の花弁が顔を出して、地味な花の多いタスマニアのワイルド・フラワーの中では、ワラタと並んで非常に目立つ存在です。

昔、国立公園局のレンジャーから、この花は珪岩(けいがん)の岩場を好んで咲くのでロッキー・リリーの別名があるというのを聞いたことがあります。珪岩というのは、10億年以上も前の堆積岩が熱変成してできた変成岩で、タスマニアの特に西部に広く分布しています。同時に雨が多いという環境条件が、まさにこの花がタスマニアの西部地域のみに限定して見られる理由なのでしょう。

この花を観察するのに最も適した場所は、やっぱりクレイドル・マウンテン国立公園です。ワラタのように公園内の各所に咲いているわけではないので、見つけるには少し注意して歩く必要があります。クリスマス前後という時期でうまくタイミングがあえば、ダブ湖周遊サーキットの中ほどにある岩場に張り出して設けられた木道の付近に咲いているはずです。この岩盤が珪岩で、岩の割れ目に根を張っている数株のクリスマスベルが眼前で観察できます。同じクレイドル・マウンテン国立公園では、クレーター湖周辺のトラック沿いもポイント。火口のような湖を取り囲む岩盤も同様の珪岩地質で、この時期ハイキングの途中で湖畔で休憩したときには湖岸の岩盤の付近にオレンジのベルが無いかどうか探してみてください。

もし、クレイドルに加えてさらにタスマニアの西海岸まで足を伸ばすという人であれば鉱山博物館のあるジーハン付近のハイウェイ沿いで、この花が大群落を作って存在している場所があります。この地域は標高が低いために12月上旬から咲き始めて条件がよければ1月の中旬ぐらいまで見ることができます。ワラタとは異なり、なかなか簡単には見つけることのできない花ですが、もし見つかるとその喜びは大きいでしょう。


タスマニア再発見

 

千々岩 健一郎 プロフィル

1990年からタスマニア在住。1995年より旅行サービス会社AJPRの代表として、タスマニアを日本語で案内する事業の運営を行うとともに、ネイチャー・ガイドとして活躍。2014年代表を離れたがタスマニア案内人を任じて各種のツアーやメディアのコーディネートなどを手がけている。北海道大学農学部出身。

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る