巨大シダ「マン・ファーン」

タスマニア再発見
ラッセル滝とマン・ファーン

タスマニア再発見

No.81 巨大シダ「マン・ファーン」

文=千々岩健一郎

タスマニアのレインフォレストや湿った深い渓谷を歩くと、巨大な木生シダに出くわす。場所によってはうっそうとしたシダの森を形成して、まるで恐竜時代に引き戻されたような錯覚を覚える。

これは俗称マン・ファーン、学名Dicksonia antarctica、つまり南極という名前の付けられたシダで、高さ10メートル以上に達するものもある。シダ植物は本来は草本類なので樹木のように幹が成長するということはないが、この木生シダは数メートル以上に成長して、まるで大きな木のように見える。実際は幹が肥大成長をして木質部を形成しているのではなく、茎の周りから出たたくさんの根が絡み合って柱を作っているのである。日本では、こういった木生シダをヘゴと呼び、この根の絡み合った幹を切り取ったものをヘゴ板と呼んで園芸の道具に利用したりする。

このマン・ファーンは湿った場所であればタスマニアのほぼ全域で見られる。写真のように高く伸びた幹の先から傘をさすように葉をつけた茎が広がる。先端部分から新しいゼンマイのような若芽が出て新しい葉を広げ、古く枯れた枝はその新しい葉の周りから枯れて垂れ下がる。新しい葉の髄の部分にはデンプン質が含まれ、古くはアボリジニの食糧にもなっていたらしい。ポッサムなどの動物たちもこの若い茎を食すようだ。もう1つ、葉の形を拡大してよく見ると複葉の構造が3重になっているというのも大きな特徴。つまり複々々葉の網目構造となっていて、これは専門的にはとてもユニークなものらしい。

日本には存在しないマン・ファーンだが、豪州の南東部に広く存在し、かつ似た種類がニュージーランドにもある。少し古い話だが、映画『ラスト・サムライ』の森の中での戦闘シーンにこのシダが登場してびっくりしたものだ。あの自然豊かな戦場のシーンは、日本国内ではなくニュージーランドで撮影されたものとバレてしまったというわけだ。

この木生シダ、マン・ファーンが茂るシダの森を体験するのにお薦めの場所の1つは、マウント・フィールド国立公園。入り口のビジター・センターからスタートするラッセル滝への散策路には、素晴らしいシダの森があり、ホバートからわずか1時間程度の場所で恐竜時代のような森の中を歩くことができる。


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千々岩 健一郎 プロフィル

1990年からタスマニア在住。1995年より旅行サービス会社AJPRの代表として、タスマニアを日本語で案内する事業の運営を行うとともに、ネイチャー・ガイドとして活躍。2014年代表を離れたがタスマニア案内人を任じて各種のツアーやメディアのコーディネートなどを手がけている。北海道大学農学部出身。

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