さくらワイン

ベン・ホルトの豪州ワイン物語

ベン・ホルトの豪州ワイン物語

さくらワイン

ここ数年間でオーストラリアのワイン愛好家の心と「口」に新しい地位を築いているロゼ。それは革命─「ドライ・ロゼ革命」と言っても過言ではないだろう。ここで言う「ドライ」とは、お酒を控える「干ばつ」のことではなく、ワインに含まれる残糖が非常に少ない、辛口の酒のことだ。今やオーストラリア中の店にずらりと並び、「ピンク・ワイン」のコーナーが設けられるほど豊富となったドライ・ロゼを、ワイン評論家、消費者ともども支持している。 そんな「革命」を待ち望んできたロゼ愛好家の1人が、皆さんの母国にいる小西亨一郎氏だ。秋田県を拠点に8年前、ほかのワイン醸造家から見れば驚きだが、消費者にとってはたいへん嬉しいものとなるロゼ・プロジェクトをスタートさせた。「花見に合うワイン」をテーマに、「春らしい色や食、そしてその季節の日本人の気分や情趣に合ったロゼを作りたい」という思いがきっかけだという。

小西氏がこのワインの材料に選んだのは、以前ご紹介した山ブドウ。日本土着の品種だ。青森県、秋田県、岩手県のブドウ農家と提携し、山ブドウの3つの亜種(ニホン山ブドウ、ワイングランド、国豊3号)を入手している。これら亜種に付けられた名前も興味深く、1つ1つ語れるほどだ。 小西氏は、収穫が終わったこれらの山ブドウを岩手県くずまきワインの工場にすみやかに発送させ、そこで醸造過程とブレンド度合いを監督する。年によって違いが出てくるが、それはそれでOK。その年の収穫に合わせたブレンドを生み出すことに挑戦している。 このプロジェクトでさらに興味深い点は、桜の花びらからイースト(酵母)を抽出し、それを使って山ブドウを発酵させているところ。日本のロゼの醸造にこれほど適した方法がほかにあるだろうか。

そもそも皆さんにこの話をお聞かせしようと思ったのは、偶然このワインの2011年のヴィンテージに出会ったことがきっかけ。さくらんぼと苺の香りに、山ブドウ特有のメンソールの爽快な香味が合わさる、小西氏の現在までの最高のヴィンテージだ。アタックはほんのり甘く、しかしその甘さはすぐに消え、こくのある丸みを帯びた味わいが広がり、酸によってドライな感覚が最後まで続く。氷を入れ、よく冷やして飲んだら、あらゆる日本の田舎料理と本当によく合った。世界初のこのロゼは、世界中を驚かせるだろう。


小西亨一郎氏が手掛ける、山ブドウと桜酵母仕込みの「さくらワイン」

 


 



ベン・ホルト
ベン・ホルト◎ヒルトン・ワールドワイド・マーケティング統括本部長(日本・韓国・ミクロネシア地区担当)。QLD大学で文学修士(日本語と韓国語)ならびに科学修士を取得後、在豪日系企業などで食品輸出、商品取引、マーケティングに従事。2002年〜07年にオーストラリア・ワイン事務局日本代表、12年5月までオーストラリア政府観光局日本地区マーケティング本部長を務めた後、現職。
Web: www.holt-blog.com
Twitter: Mr_Riesling
www.facebook.com/Ben.Holt.69

 

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