「Tetsuya’s」

シドニーのあの店この店
オーナー・シェフの和久田哲也氏

「Tetsuya’s」
特別な日だからこそ 肩肘張らないひと時を

                             文=食いしん坊ママ
 オーストラリア在住の日本人で一番有名な人と言えば、レストラン「テツヤズ」の和久田哲也さんではないだろうか。28年前、22歳の時に外国生活に憧れてワーキング・ホリデーで来豪。20代後半で自分の名前を冠した「テツヤズ」をウルティモに開店、後にロゼールに移り、一躍有名になった。
 数年前にシティにある元サントリー・レストランの日本式建物に移り、今やオーストラリア国内のみならず、日本やアメリカ、ヨーロッパからも予約が入る、世界有数のレストランとしての地位を誇っている。日本庭園を眺める店内には100席あり、プライベート・ルームも用意されている。「テツヤズ」の繊細な感覚で完璧に近いものを求める姿勢、そんな和久田さんを世界中の名シェフも賞賛する。私はロゼールにお店があったころからたまにではあるが、特別な時に食事を楽しむ場としてお邪魔していた。

シドニーのあの店この店
シグネチャ―・ディッシュのオーシャン・トラウトのコンフィ

 娘が2年間海外生活をしたいと言い出してから1年。出発が迫った1週間前に、娘と母の2人だけの時間を「テツヤズ」の昼食で、とふと思い立った。もちろんディナーは数週間前の予約が必要と知っていたが、土曜日のランチはやや余裕があるということを聞きつけ、ダメモトで電話をしてみた。結果はキャンセル待ちとなったが、幸いにも行けることになった。「わー、嬉しい ! 最高。サンキュー、マー(お母さん)」と喜ぶ娘と2人、2月初旬の土曜日12時半に颯爽と出かけた。
 席に通されると、担当のウエートレスが食べられない物があるかどうかを聞く。ソムリエからはたいそう豊富な種類のワイン・リストを。ワインは娘に選んでもらうことにした。ワインが届くと、娘の出発を祝ってまずは乾杯。娘は「すごく素敵な思い出になるわ」と久しぶりの「テツヤズ」に感激しているようす。
 まずはアぺタイザーのコーン・スープから。きれいなガラスの器に上品な味と量の冷たいスープが何とも心地良い。次は何かしら、と楽しみにしていると、オントレーの1品目はキャビアとスモークト・オーシャン・トラウト。続いて登場したのは、茶碗蒸風のリークと蟹の身のカスタード。蟹がダメな娘には、マッシュルーム入り。オントレーの最後はゴージャスなスキャンピー3点盛り。スキャンピーが大好きな娘は歓声を上げる。「メキシコ旅行中はきっとここの料理を夢見るわ」と、待ち受けるファスト・フードの生活を想像して娘が語る。
 料理は間を置いて運ばれるので、会話もたっぷり楽しめる。周りを観察してみると、家族連れやカップル、友人同士のグループ、旅行者などさまざま。着飾った人もいれば、昼間なのでカジュアルなジーパン姿の人もいる。そういえば「記念日などの特別な日を祝う時に気軽に来てもらいたい」と、いつか和久田さんが語っていたのを思い出した。不必要に着飾ることはないのだ。

 メインは「テツヤズ」のシグネチャー・ディッシュ、オーシャン・トラウトのコンフィで始まる。もはやシドニーで知らない人はいないだろうこのひと皿は、いつ来ても変わることのない絶妙な味だ。蟹の身とアボカドのテリーヌ、バラマンディーのグリル焼きとフェンネル、スパチコック、和牛ビーフとメインが続く。どれもテイスティングのサイズで量は少ないが、それでも和牛を食べ終わるころにはやや満腹に。「マー、デザートも4種類あるのよ ! 」と、娘は早くも気持ちはデザートに。その中でも、以前食べてから忘れられなかった「フローティング・アイランド」と再会できたことに2人で感激した。カプチーノとともにデザート4種類を楽しみ、私たちは見事にファイン・ダイニングを極める全13コースを平らげた。
 ダイエットもコレステロールも忘れ、おいしい料理を食べながら娘が旅発つ前に過ごした貴重なひと時は、あっという間に3時間を過ぎていた。勘定をお願いすると、思ったよりも安い。それもそのはず、娘が選んだ白ワイン「Lost Valley」は、なんと45ドルという良心的な値段。ワインとミネラル・ウォーター、チップを含んで料金は2人で480ドルだった。
「いいレストランは安い価格帯の中でもいいワインを選んで置いている」という娘の見解にも感心したが、これだけの料理をリラックスして味わえてこの値段なら納得。高級なイメージばかりが先行している「テツヤズ」だが、実はもっとカジュアルに楽しめるレストランなのだ。
 新たな門出を祝う素敵なランチの2日後、娘は元気にシドニー空港を飛び発った。

シドニーのあの店この店 シドニーのあの店この店
メインの1つ、和牛ビーフ ライム&わさび

蟹の身とアボカドのテリーヌ

シドニーのあの店この店 シドニーのあの店この店
3種類の調理法で供されるスキャンピー

バニラ風味のアングレーズがかかったフローティング・アイランド



 シドニーに在住して30年。オーストラリアの食生活はヨーロッパや中近東、アジアからの移民が多く入国して以来、ガラリと様変わりした。モダン・オーストラリアンと言われる、言わばオーストラリアに住む移民たちが持ち込んだ各国の素材や要素を利用し、豪州独自の洗練された料理が創り出され定着し出したのもここ10年くらい。今やいろいろな国の本場料理が楽しめるだけでなく、おしゃれなカフェやバーが続出。中には独創的に工夫されたお店や、抜群の景色を眺めるお店なども。また、話題性の多いシェフがどんどん出現して、シドニーのレストラン事情は大きく変貌し、楽しくなった。「食べる」ことが大好きな私は、1週間に3度は外食を楽しんでいる。そんな私の経験からお薦めのレストランをご紹介するコラムです。
シドニーのあの店この店
DATA
Tetsuya’s Restaurant
529 Kent St., Sydney NSW
予約Tel: (02)9267-2900
ランチ土12PM~
ディナー火~土6PM~
Web: www.tetsuyas.com
お値段の目安:
デガステーション・コースメニュー$195
各コースに沿ったお薦めグラス・ワイン数種$90
ワイン:グラス$13~、ボトル$40~$4,000を超えるヴィンテージ物まで種類豊富
備考:
BYOはワインのみ。1本につき$25のコルケージがつく
私の評価:
ムード ★★★★★
ロマンチック度 ★★★★★
高級感 ★★★★★
お客様や接待に ★★★☆
(ランチ・ディナーとも3時間はかかるため)
サービス ★★★★☆
子ども連れ 中学生以上をお薦め
英語力必要度 ★★
(メニューとワイン・リストをウェブでチェック)
費用対価値 ★★★★☆

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る