ベン・ホルトの豪州ワイン物語
山ブドウ #2
デニス・ギャスティンの本職はワイン関 係ではない。でも彼は、非常に多くのプ ロジェクトを同時に、しかも奥深く進め られる世界でも稀有な人だ。コンサルの ビジネスと同時進行で、過去20年間多く の時間を、日本とアジアのワインの調査 や生産地の訪問、ワイン・メーカーとの交 流に費やしてきた。すべて彼の“余暇”を 使って。でも、もちろん漫然とそうして いたのではなく、すべて、情熱ゆえの自 然な行動だった。
デニスが初めて北海道の山ブドウに出 会ったのは1985年、やり手の地方政治 家、池田町長の丸谷金保先生と会った時 だ。丸谷先生は1960年代後半の十勝地 震のダメージから地方経済を立て直すた め、ワイン産業を創出しようと決意。山 野に自生する山ブドウからインスピレー ションを得た。品種はヴィティス・アムレ ンシス種(ロシアのシベリアを流れるア ムール川から命名。そこにも同種の山ブ ドウが自生している)だった。
僕がデニスに山ブドウの印象を聞く と、「第一印象は森林だね。地面に降り 積もった落ち葉のような、野性的なアロ マがある。同様のアロマで思い出すヴィ ニフェラ種は、南アフリカのピノター ジュだけ。こちらはダチョウのような匂 いだね !」と答えてくれた。 僕は、デニスが山ブドウと一緒にどんな食事を薦めてくるのかについても興味津々 だった。デニスによると、丸谷先生はス パイシー・ポーク・ソーセージと、腎臓とレ バーの料理を出してくれたそう。でも、デ ニスが最近イタリアのサルデーニャ地方で 野生の豚を食べた時、山ブドウのワインが 欲しくてたまらなかったんだって !
デニスはこれまで多くの山ブドウのワ インを味わってきた。中でもお薦めは、 岩手県くずまきワイン(特に「フォー レ」というロゼ)。「ラベルには小さな 可愛らしいリスの絵がついていて、ワイ ルドなワインにぴったり」とか。ほかに は、おたるワイン、福井県白山、島根県 奥出雲葡萄園、長野県井筒ワイン、栃木 県ココ・ファーム・ワイナリー、山形県月 山、茨城県檜山酒造。
ただ、山ブドウにはもう1つ側面があ る。デニスが「きれいな紫色を出すことと 適度な果糖を保つのに苦心する」と話す通 り、実は、ワインにするのは難しいブドウ だ。ワイン・メーカーたちは、より良い結 果を求めて改良を重ねてきた。他種の山ブ ドウ、あるいは、他種のヴィニフェラ種と の交配するのもよくあること。この辺りは 次回の記事でご紹介しよう !
デニス氏へ:記事執筆へのご協力に感謝 します。
ベン・ホルト
オーストラリア政府観光局日本地区 マーケティング本部長。クイーンズラ ンド大学で文学修士(日本語と韓国 語)ならびに科学修士を取得後、在豪 日系企業などで食品輸出、商品取引、 マーケティングに従事。2002年から07 年9月までオーストラリア・ワイン事務 局日本代表を勤めたのち、現職。
Web: www.australia.com
(オーストラリア政府観光局)
Twitter: Mr_Riesling
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