あのラベルの赤い斜線

ベン・ホルトの豪州ワイン物語

ベン・ホルトの豪州ワイン物語

あのラベルの赤い斜線

このワインのラベルについて語るとしたら、本にもできるくらいだろう。というか、実際になっている。漫画もある。フェイスブック・ページまである。ラベルは、ほとんどに共通して赤い1本の斜線が入ったデザインになっていて、それぞれにちょっと変わったおもしろい背景がある。また、ラベルの名称は実に奇妙だ。単一畑のシラーズは「ザ・ヴォシフェレート・ディプソマニアック(アル中と大声で叫べ)」と「ザ・スウィンギング・マレーシアン(意気揚々のマレーシア人)」だし、「ラッフィング・マグパイ(“笑う”鳥のマグパイ)」というシラーズ・ヴィオニエのブレンドや、「デッド・アーム(死んだ腕−この場合は病気がついたため切断された枝のこと)」というシラーズもある。ルーサンヌは、「マネー・スパイダー(幸運を招くクモ)」だ。

ベン・ホルトの豪州ワイン物語

これらすべてと、そのほか数多くのワインの名称には、それぞれに由来がある。例えば、「ジャンプ・スタンプ」シリーズ。これは、障害物となる木の根を避けながら耕作するために開発されたスタンプ・ジャンプ・プラウという犂スキにちなんで命名されている。このシリーズのブドウ畑には、多くの木の根がはびこっていたに違いない。「ラッキー・リザード・シャルドネ」の名称は、収穫時、採れたてのブドウにアゴヒゲトカゲが入り込んでくることにちなんでいる。ブドウを圧搾する機械は、とても優しくその作業を行うのだが、それはシャルドネのためにもトカゲのためにも適した方法である。「ラブ・グラス・シラーズ」は、ブドウ畑に生える野生の草を示している。この植物には粘着質の花が咲き、職人の靴下や服にくっつく。同様にこのワインにも、主体のシラーズに他の品種が“くっついて”美味しくブレンドされる。

このようなことを考えつくには、背景に結構変わった人間がいるものだが、正しくその通り。オーストラリアの優れたワイン醸造家の1人、チェスター・オズボーンだ。派手なシャツを着て、美術と建築についてはどちらかというと奇抜な考えを持っているが、ブドウの種類とワイン造りのテクニックに関しては、辛抱強く試行錯誤を繰り返す、情熱のある人物だ。その結果、生産地(基本的にはアデレードの少し南の町、マクラーレン・ベール)を本当によく反映した素晴らしいワインができ上がる。彼は取締役3代目だが、80歳を優に超えるであろう彼の父のダーリーもまだまだかなり元気だ。僕がワイナリーでダーリーにばったり会った時、彼は会社の書類を抱えて「銀行に行ってくる」と話していた。あの歳で、見事にまだまだ現役なのだ。さあ、ダーレンベルグの不思議な世界へようこそ!


ベン・ホルト

◎ヒルトン・ワールドワイド・マーケティング統括本部長(日本・韓国・ミクロネシア地区担当)。QLD大学で文学修士(日本語と韓国語)ならびに科学修士を取得後、在豪日系企業などで食品輸出、商品取引、マーケティングに従事。2002年~07年にオーストラリア・ワイン事務局日本代表、12年5月までオーストラリア政府観光局日本地区マーケティング本部長を務めた後、現職。

Web: www.australia.com

(オーストラリア政府観光局)

Twitter: Mr_Riesling

www.facebook.com/Ben.Holt.69

 

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