内なるベリーのマジック

ベン・ホルトの豪州ワイン物語

ベン・ホルトの豪州ワイン物語

内なるベリーのマジック

面白いことに、ワインを造る時にはこんなことが起きている。ブドウを潰して、酵母を入れる。そして、ブドウの糖分がアルコールに変わるまで発酵させる。では、これをすべて反対にしてみよう。ブドウは潰さず、酵母も入れない。それでも、ブドウは勝手に発酵し始める。ベリー(実)の中での魔法だ。なんとも、不思議だと思わないだろうか。

これをカーボニック・マセレーション(炭酸ガス浸漬法)という。ブドウの房ごとワイン用のタンクに入れ、酸素を除去するためにあらかじめ二酸化炭素を充填する。そして細胞内部が無酸素になり、酵素代謝がブドウの1つ1つの中で始まる。違った化学過程ではあるが、最終的には「ブドウの発酵」という同じ結果になる。多くの場合、タンクの底で自然発酵が起きている。これは、ブドウがそれ自体の重さで潰れるからだ。また、別の場合では、二酸化炭素を入れた後でさらに普通の発酵を起こさせる造り手もいる。

ここでステージ左から、最近バロッサの男爵として迎えられたウェイン・ダシュケが登場。彼はスワン・ヒル近くにある、ウーリネン・ワイナリーの造り手であった故スティーブン・ヒッキンボサムが、この手法を紹介したころから炭素方法を実験している。次の仕事に着いたミッチェルトン・ワイナリーでは「ザ・ドン」と通称する「伝説の造り手」ドン・ルイスとともに、その技術に磨きをかけた。


左がウェイン・ダシュケ、バロッサ男爵称号授与式にて

もともとカブ・マック(Cab Mac)とスティーブンに名付けられたウェインのワインは、シラーズ種から造られている。とはいえ、シラーズでありながらそれは軽くて、とても親しみやすく、飲みやすいワインだ。敢えて言うと、サクランボやイチゴを思い出させるような味だ。普通のシラーズとは少し違う。読者の皆さんの中に、赤ワインが苦手な人がいたら、ぜひ試してほしい。白ワインから赤ワインに移行する時には、このワインがうってつけだ。

もし、ボジョレー・ヌーボーを思い出したら、それは当たり。今はヌーボー解禁の時期だ。これも同じ二酸化炭素を使って造られている。違うのは「ガメイ種」というブドウを使っているところだけだ。

ワインについての皆さんの質問を受け付けています。日豪プレスのフェイスブック、メール(viceditor@nichigo.com. au)までお送りください。

ベン・ホルト
◎ヒルトン・ワールドワイド・マーケティング統括本部長(日本・韓国・ミクロネシア地区担当)。QLD大学で文学修士(日本語と韓国語)ならびに科学修士を取得後、在豪日系企業などで食品輸出、商品取引、マーケティングに従事。2002年~07年にオーストラリア・ワイン事務局日本代表、12年5月までオーストラリア政府観光局日本地区マーケティング本部長を務めた後、現職。

Web: www.holt-blog.com
Twitter: Mr_Riesling
www.facebook.com/Ben.Holt.69
 

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