ワイン・メーカーとブランド

ベン・ホルトの豪州ワイン物語

ベン・ホルトの豪州ワイン物語

ワイン・メーカーとブランド

日ごろ、「誰が作っているか」という理由で買ったり、使ったりしている商品はいくつあるだろう?買い物する時の心理を思い出してみよう。ブランド名で商品を買うことはよくある。またその反対に、ブランドでないから買わないこともある。いずれにせよ、ブランドによって商品を識別し、期待通りの商品だと信じワクワクし、満足する。ジーンズからパソコンまでさまざまなブランドの商品が浮かぶだろう。

例えばチーズはどうだろう。スーパーで、北タスマニアのフランクさんが作るブルー・チーズだからといって買うことは、おそらくあまりないと思う。でも、野菜の袋に写る栽培者の最高の笑顔を見て、「野菜炒めにしてみようかな」とアイデアが浮かぶ時もある。大量生産・大量出荷が普通になり、ほとんどの人は「私が作ったものをどうぞ」といった裏ラベルの話は信じていない。

生産者を知り、つながりを持ったりするのは、重要なことだろうか?僕にとってワインは、誰が作ったのかが分かり、フェイスブックでつながり、いろいろなワイン・ショーやテイスティングで製造者と直接話すことができる稀な商品の1つだ。ここで問題。もし、ブランドを実際に築き上げてきた当事者の造り手が、そのブランドにゆかりがなくなってしまった場合はどうなるのだろうか?私たちとワインの関係に変化はあるのか。

最近の例では、伝説のバロッサ・ワイン「トルブレック」の立役者、デイビッド・パウウェルのケースがそうだ。デイブは早い段階から、彼のワイナリーの運営存続のために資金の確保に携わり、ビジネス・パートナーの仕事を引き受けた。しかし、契約条項により、ワイナリーの「オーナー」の地位から解雇されるという結果になった。

これは豪、世界中のワイン業界にとってショックな出来事だった。なぜ、1から築き上げた自らのワイナリーから解雇されたのか?何年もかけ独自のバロッサ・ワイン・スタイルを発展させ、世界中を旅して自分の物語を語った人が、もう仕事に来なくてもよいと言われたらどうだろう。「トルブレック=デイブ」を、2つに切り離すとは…。

この一部始終は「トルブレック」ブランドが何を意味していたかを考えさせる(ひいては、すべてのワイン・ブランドにおいても)。彼なしで存続が可能なのか?たくさんの才能あふれるワイン・メーカーがあり、トルブレックの名の下で、素晴らしいワインを造り続ける人がいることには間違いない。しかし、それは同じワインになるのだろうか…。ワインを飲みながら思索にふける。

ワインについての皆さんの質問を受け付けています。日豪プレスのフェイスブック、メール(viceditor@nichigo.com. au)までお送りください。

ベン・ホルト
◎ヒルトン・ワールドワイド・マーケティング統括本部長(日本・韓国・ミクロネシア地区担当)。QLD大学で文学修士(日本語と韓国語)ならびに科学修士を取得後、在豪日系企業などで食品輸出、商品取引、マーケティングに従事。2002年~07年にオーストラリア・ワイン事務局日本代表、12年5月までオーストラリア政府観光局日本地区マーケティング本部長を務めた後、現職。

Web: www.holt-blog.com
Twitter: Mr_Riesling
www.facebook.com/Ben.Holt.69
 

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