【特集2016】ビール大国オーストラリアで、おいしさ再発見!①

ビール大国オーストラリアでビールのおいしさ再発見!

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「ビールに最適の季節はいつ?」−−オーストラリアでこんな質問をしたら、返ってくる答えはきっとこうだろう。“Any time!” オーストラリアの飲食文化の要の1つともいえるビール。どんなビールがあってどのように飲まれているのか、どういう風に注文すれば良いのか。最近では、日本では販売されない、オーストラリア限定の日本のビールも登場している。奥深いオーストラリアのビール事情を、あらためて基本から解説していきたい。文=空閑洋始

オーストラリアのビールの概要

オーストラリア人はビールが大好きで、いつでもどこでも飲んでいる、などと言われることがある。確かに、街角のパブでは、平日の昼間からオープン・エアーのテラス席で、おいしそうにグラスを傾けている人々の姿をよく目にする。バーベキューと並び、ビールはオーストラリアを象徴する飲食文化の代表的存在といえるかもしれない。

また、オーストラリアでビールと言えば、かつては男性が飲む物という印象が強かったが、最近では女性を意識した訴求や、料理と合わせる提案が目に付くようにもなっている。

しかし初めてビールを飲もうとする人にとって、注文するのはそう簡単ではない。パブや、ホテルやレストランのバー・コーナーに行って、「ビールをください」と言おうものなら、「何を?」「大きさは?」「瓶? タップ?」と矢継ぎ早に質問が飛んでくる。日本ならば、「とりあえずビール」と言えば、大きさだけ質問されてメーカー名さえ問われないこともしばしばだが、オーストラリアではたいていのパブやバーでは多くの種類のビールを備えており、何がほしいかきちんと注文しなければならない。逆にこれが、客にとっても、自分の好みのものをじっくり選ぶという、1つの大きな楽しみにもなっている。そんなオージー文化に仲間入りして、今まで味わったことのないビールを試し、新しいおいしさの発見に感動するのも、素敵な異文化体験となるだろう。

オーストラリアのビール製造会社は、メジャー・ブルワリー(Major Brewery)とマイクロ・ブルワリー(Micro Brewery)の大きく2つに分けられる。メジャー・ブルワリーは、大手ビール・メーカーを指し、現在、ライオン(Lion)、フォスターズ・グループ(Foster’s Group)、クーパーズ・ブルワリー(Coopers Brewery)の3社である。ライオンは日本のキリンビールの、フォスターズは英国のSABミラーの、それぞれグループ企業となっている。オーストラリアで非常にポピュラーと言われる「トゥーイーズ(Toohey’s)」はライオンの、「ビクトリア・ビター(Victoria Bitter: VB)」はフォスターズの製品だ。もっとも、ビール名にメーカー名が付いていることが多い日本と違い、オーストラリアのビールの名前にはメーカー名が付いていない場合が多く、飲んでいる人々も、それぞれのビールの名前は知っているけれども、それがどこのメーカーのビールであるのかを意識することはあまりないようだ。

一方、マイクロ・ブルワリーは、規模の小さいビール製造会社を指し、クラフト・ブルワリー(Craft Brewery)と呼ばれることもある。こうした醸造所で作られるビールは、「クラフト・ビール」や「ブティック・ビール」などと呼ばれる。いわゆる日本の「地ビール」に近い概念で、広大なオーストラリアでは、種類豊富なこの地元産ビールを愛好する傾向も強い。地域によっては「地元のビールしか飲まない」といった濃いファンも少なくないという。

また、ホーム・ブリューイングと呼ばれる自家製ビールがあるのも1つの特徴。スーパーマーケットなどには、自宅でビールを作るためのキットが販売されている。

オーストラリア人のビール好きを象徴するようなイベントもある。例えば、60年の伝統を持つ「German – Austrian Society」による、「オクトーバーフェスト」(Web: www.germanaustriansoc.com.au)。今年もシドニーなどで開催予定だ。これは、ドイツのミュンヘンで開催される「ビールのお祭り」が国内でも体験できるというもの。ドイツを中心に世界各国のビールが楽しめるほか、ドイツ、オーストラリアのさまざまな食事も楽しめる。普段は飲むことができない、この日のために醸造されたビールと出合える可能性もある。

ビールの種類

数えきれないほどたくさんの種類があるビール。あれこれうんちくを並べるよりは、いろいろと飲んで自分で味わってみるのが一番ではあるが、飲み比べする際の参考として、いくつかの分類方法をここで紹介してみよう。

まず、ビール製造時における発酵方法の違いで、上面発酵タイプと下面発酵タイプの2つに大きく分けられる。上面発酵は、発酵が進むと酵母が液体上面に浮かんでくる特徴を利用して作られるビール。20度前後の比較的高めの温度で発酵が進む。「エール」「スタウト」「ビター」「小麦ビール(白ビール)」などのタイプが当てはまる。対する下面発酵は、5〜12度ほどの低温でじっくりと熟成させて作られるビール。「ラガー」や「ピルスナー」と呼ばれるタイプが下面発酵による製造だ。

もっともこうした分類名や分類の仕方も、国によって若干定義が異なっていたり、ビール名(ブランド名)そのものには「ビター」と付いているのに製造方法は下面発酵であったりするなど、必ずしも製造方法とビール名が厳密に対応しているとは限らないので、あくまで、参考までの分類方法である。

「ドライ」ビールという呼び方も、それほど明確な定義があるわけではなく、これはどちらかというと「辛口」という味を表現しているものと考えていい。

また、瓶や缶ではなく、パブやレストランのバー・コーナーで見かける、ずらりと並んだ蛇口のような注ぎ口から直接グラスやジョッキに注がれるビールを「タップ(Tap)」あるいは「ドラフト(Draught)」ビールという。タップとは蛇口という意味だ。この蛇口は、樽などの大型のビール容器につながっている。

「ドラフト・ビール」を辞書で調べてあえて日本語にすると、一般的には「生ビール」と訳され、実際、日本人同士の会話では生ビールというとタップから注がれるビールのことを指す場合が多いようだが、実は厳密にいうとタップから注がれているビールが生ビールとは限らない。日本では生ビールは「熱処理されていないビール」という決まりがあるが、オーストラリアのビールはその大半が熱処理されており、日本でいう「生ビール」には該当しないものがほとんどなのだ。日本語にしないで「ドラフト・ビール」とそのまま呼ぶのがいいかもしれない。

さらに、ビールはアルコールの強さによっても分類される。オーストラリアのビールはアルコールの含有量により、フル・ストレングス(Full Strength)、ミッド・ストレングス(Mid Strength)、ロー・ストレングス(Low Strength)に分けられる。フル・ストレングスはアルコール度数が一般的に3.5パーセントを超えるビールを指す。フル・フレーバード・ビール(Full flavoured beer)、フル・フレーバー・ビール(Full flavor beer)と呼ばれることもある。ミッド・ストレングスはアルコール度数3パーセント超〜3.5パーセント以下。ラベルに「Midstrength」や「Gold」と書かれていることが多い。ロー・ストレングスは1.15パーセント超〜3パーセント以下のビールをいう。軽めの口当たりだ。ロー・ストレングスのものは特に「ライト(Light)」とも呼ばれ、たいていビールの商品名に「Light」と表示されている。

アルコールの度数によって、いわゆる酒税である「アルコール度数税」(Volumetric Tax)が異なる。度数が低ければかかる課税率も低いため、ロー・ストレングスの商品価格は必然的にほかの2種に比べて安くなる。

ビールの主な分類

ペールエール
上面発酵。代表的なエール。苦味、深く濃いコク、フルーティーで複雑な香りが特徴。
スタウト
上面発酵。ローストしたモルトや大麦を使用。色は黒、茶褐色などが多い。
ビター
本来は上面発酵のエールの一種だが、商品名にビターと付いていても違う場合もある。
白ビール
上面発酵。エールの一種。小麦を使用していることから「小麦ビール」とも呼ばれる。
ラガー
一般的には下面発酵で造られたビール全般をラガーと呼ぶ。すっきりした飲みやすさ。
ピルスナー
下面発酵(ラガー)の一種。日本で造られている多くのビールがこのタイプに属する。
ドライ
一般的に、辛口でアルコール度数が高めのビールを指す。商品名にも付くことが多い。
タップ、ドラフト
瓶や缶ではない、大型容器につながった蛇口様の注ぎ口から注ぐものをこう呼ぶ。
ライト
アルコール度数が低めのものを指す。商品名に付いている場合が多い。

*この図はビール分類の一例であり、国や地域により分類法・呼び名、各定義は異なる場合がある。
 一般的に、上面発酵で造られるビールを総称して「エール」と呼ぶ。

瓶ビール・缶ビールの種類

オーストラリアで使用されているビール瓶は、大きいサイズの「ロング・ネック」(Long Neck)と小さなサイズの「スタビー」(Stubby)、そしてその他のサイズに分類される。ロング・ネックは750ml。日本の大瓶633mlより大きい。スタビーは375ml前後のポピュラーなサイズ。そのほか、小さなブルワリーで作られるブティック・ビールや限定販売のビールなどには、ユニークな形状のボトルもある。大半の瓶は栓抜きが不要で、手で開けられるのが特徴だ。

日本に比べると缶ビールはメジャーではなかったが、最近では家庭用に少しずつ広まっている。10缶で30ドル前後というお手頃価格が人気上昇の理由のようだ。

なお、オーストラリアでは酒販店を「ボトル・ショップ(Bottle Shop)」あるいは「リカー・ショップ(Liquor Shop)」と呼ぶことが多い。日本のようにコンビニエンス・ストアでお酒を24時間販売していたりはしない。また、オーストラリアにはコールス、ウールワースといった大型スーパーマーケット・チェーンがあるが、やはりこうしたスーパーの店舗自体では酒類は販売していない。ただし、これらのスーパーと同系列や提携しているボトル・ショップなどがあり、スーパーのレシートに割引きプレゼントが表示されれば、それを同系列のボトルショップに持って行くと安くお酒が買えるといったサービスも実施されている。

グラスやジョッキの種類

パブやバーでタップ(ドラフト・ビール)を注文する時に必要になるのが、大きさ(容量)の指定だ。ビールのグラスには実に多くの種類、呼び方がある。例えば、グラスやジョッキの容量には、200ml(7オンス)、285ml(10オンス)、425ml(15オンス)、1,140ml(40オンス)などがあり、「スクーナー」、「セブン」など、独特の呼び方があったりする。しかも、州によってその呼び名が異なったり、同じ名前でも容量が違ったりするのでけっこうややこしい(表参照)。もっともこうした複雑さに慣れていくのも楽しさの1つでもある。

州によるグラスの呼び方の違い

容量 NSW Queensland Victoria South AU Western AU NT Tasmania
200ml a seven,
a glass,
a beer
a glass a beer a butcher a beer,
a bobby
a seven,
a seven ounce
a seven,
a seven ounce
285ml a middy a pot a pot a schooner a middy a pot,
a beer,
a handle
a ten,
a ten ounce,
a beer
425ml a schooner a schooner a pint a pint a schooner a pint
485ml a schooner
1,140ml a jug a jug a jug a jug a jug a jug a jug

*『AUSTRALIAN BREWS NEWS』(Web: www.brewsnews.com.au)を基に作成。
 各州でポピュラーなものに絞っている。これ以外の容量や呼び方もある。

スタンダード・ドリンク

スタンダード・ドリンク表示例
スタンダード・ドリンク表示例

オーストラリア連邦政府では、お酒を飲む時の目安として、アルコールの量を表す「スタンダード・ドリンク(Standard Drink)」という単位を定めている。「1スタンダード・ドリンク」はアルコール10グラム。ビール瓶の裏側などには、例えば「1.4 Standard Drinks」など、その瓶を1本飲むとどれだけのスタンダード・ドリンク量になるかが示されたシールが貼られている。

このスタンダード・ドリンクは、健康的な飲酒量を示したりする場合に用いられることが多い。また、オーストラリアでは、自動車を運転する際、一般的なドライバーの場合、血中アルコール濃度が血液100ml当たり0.05グラム未満でなければならない。逆に言えばそれ未満ならば少量飲酒の運転はOKということで、よく「Xスタンダード・ドリンクをX時間かけて飲めば大丈夫」などと言われたりしており、また実際、自家用車で来ているのにお酒を飲んでいる人を見かけたりもするが、政府のウェブサイトでは、「個人差もあるので、そうした計算は危険」と注意をうながしている。日本と同様、運転するならお酒は飲まないのが一番だ。

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