ゆる〜く、でもスタイリッシュに決められる“自然派ワイン”でおいしい組み合わせ

ワインを飲み始め好きになったけど、料理とおいしく組み合わせながら楽しむにはどのようなワインを選べば良いのか分からないという人も多いだろう。さまざまなシチュエーションで直面する悩みを、あまり考えすぎず、しかしスタイリッシュに解決できれば理想的だ。こうした悩みを解決すべく今回、本紙「幸せワイン・ガイド@Australia」でおなじみのフロスト結子さんがパーティーや大切な人とのディナーなど3つのシチュエーション別に、今注目を集めている「自然派ワイン」を基にした食事との組み合わせ方を伝授する。注目のワインと共に、ワインと食事をもっと楽しもう。(文=フロスト結子)

自然派ワインの基礎知識

“自然派ワイン”とは?

ここ数年オーストラリアのワイン・シーンで、特にブームの様相を見せているのが「自然派ワイン」(または「ナチュラル・ワイン」)と呼ばれるカテゴリーのワインです。何だか体だけでなく、環境にも良さそうな響きではありますが、そもそも自然派ワインとは、一体何なのでしょうか?

自然派ワイン、ナチュラル・ワイン、その定義や使い分けは、実はかなりあいまいなのが現状です。「自然派」と呼ばれるワインの多くには、その原料となるブドウの栽培方法で、更にはその後ワイナリーでの醸造方法の違いが見られます。例えば、化学肥料や除草剤を使わない、酸やタンニンの調整をしない、人工酵母を加えるのではなく野生酵母による自然発酵を待つ、酸化防止剤である亜硫酸塩の添加を減らす、あるいは完全に無添加にするなど、その方法や加減は、ワイン・メーカーによって実にさまざまです。

前述の通り、「何をしたら(しなかったら)」あるいは「加えたら(加えなかったら)」自然派ワインになるというような、明確な定義は存在しません。一般的に、いわゆる自然派ワインと呼ばれている例を、幾つかご紹介します。

自然派ワインと呼ばれる例

●オーガニック(organic):有機栽培農法(オーガニック)とは、殺虫剤、除草剤、化学肥料などの合成物質、遺伝子組み換え製品などを使用しない農法を指します。オーストラリアには、「オーガニック認証」を与える公的機関があります。

●バイオダイナミック(biodynamic):バイオダイナミック(フランス語ではビオディナミ)とは、有機農法の一種で、オーストリアの哲学者・ルドルフ・シュタイナーの提唱した農法です。月の満ち欠け、天体の運行に合わせて農作業を行います。また、牛の角や水晶の粉を調剤として使用するのも特徴です。全ての生命は、地球だけで完結するのではなく、宇宙全体の営みからも影響を受けているという概念が基となっています。

●サステナブル(sustainable):長期的な視点で自然環境に配慮し持続可能性を考え、合成物質や化学肥料などの使用を最低限に抑えた農法を指します。また、廃棄物の処理、省エネ、そして畑やワイナリーで働く人びとの心身の健康もしばしば配慮しています。

●ミニマム・インターヴェンション(minimum intervention):この言葉を、最近頻繁に聞くようになりました。直訳すると「最小限の介入」。ワイナリーで手を加えることを最小限に抑え、自然のままに発酵させることを意味します。例えば、人口酵母を加える代わりにワイナリーに生きる野生酵母による自然発酵を待つ、酸やタンニンなどを足すことをしない、亜硫酸塩を加えない、あるいは量を極限まで減らす、清澄・ろ過を行わないなど、手法や程度はワイナリーにより異なります。 オーストラリアでナチュラル・ワインと呼ばれるものにはこれら全てに当てはまるものもあれば、一部、あるいは複数当てはまるものとそれぞれです。

“悪名高い?”酸化防止剤(亜硫酸塩)への誤解

自然派ワインはブドウの栽培方法を始め、醸造方法の違いもさまざま
自然派ワインはブドウの栽培方法を始め、醸造方法の違いもさまざま
ワインの関連書籍でも自然派ワインの定義には細かな違いが見られる
ワインの関連書籍でも自然派ワインの定義には細かな違いが見られる

ここで、酸化防止剤についてお話ししましょう。ワインのお話になると、割と頻繁に「私はワインを飲むと酸化防止剤のせいで頭痛がするんです」という方がいます。ワインに使われる酸化防止剤は亜硫酸塩(SO2)。これはワインを安定させ、バクテリア感染などの劣化から防ぐ大切な役割を果たします。ちなみに、バクテリア感染してしまったワインは、酷い悪臭を放ち、飲めたものではありません。

そもそも亜硫酸塩は、ワイン醸造の過程において自然発生する副産物でもあります。また、人工的に添加する量も非常に微々たるものです。

ワインは、そもそもとても酸化に弱い繊細な農産物です。赤ワインより白ワインの方が(リンゴを切ってしばらく放置すると酸化して茶色くなるように)影響を受けやすいため、赤ワインと比べると、白ワインの方が比較的量が多めに使われています。

オーガニックやバイオダイナミックのワインであっても、品質安定のために亜硫酸塩を使うワイナリーは多くあります。同時に、自然派のワイン・メーカーたちの中には、その添加量を減らすワイナリーが多いことも事実です。

ちなみに、亜硫酸塩が頭痛を起こすという科学的根拠は存在しません。この亜硫酸塩は、ドライフルーツや甘納豆などにも頻繁に、しかもワインの何倍もの量が使われていることもあります。ドライフルーツを食べても同じように頭痛がするという場合でない限り、二日酔いを亜硫酸が原因とするのは、大きな誤解であると思われます。

ワインはそもそもアルコール飲料ですから、飲みすぎればどんなワインであっても当然酔っぱらいますし、更にそれ以上に飲めば必然的に二日酔いになります。それは、焼酎でもビールでも同じことが言えるはずなのに、なぜかワインの場合だけ二日酔いの原因は亜硫酸塩、と誤解される方が多いようです。

ちなみに、二日酔いを避けるには、飲みすぎに注意することはもちろんですが、ワインと同量の水分を取ることです。食事と一緒にこまめに水を飲むようにすると、脱水状態にならず、悪酔いを防ぐことができます。

1つ注意して頂きたいのは、「自然派ワイン」とうたわれる全てのワインが、必ずしも全て良質で、おいしいとは限らないということです。オーストラリアではオーガニック認証のシステムはあるものの、前述の通り「自然派」の定義はまだまだあいまいです。そして自然派と呼ばれるワインの中には、一般的に出回っているワインと比べるとかなり奇抜な味わいを持つものもあります。それをおいしいと感じるかどうかは、それぞれの方の五感に委ねるしかありません。注目されているから、流行っているからといって、それをおいしいと感じるかどうかは、結局人それぞれなのです。

醸造過程で自然発生する亜硫酸塩が、ワインを飲んで感じる頭痛を引き起こしているわけではない
醸造過程で自然発生する亜硫酸塩が、ワインを飲んで感じる頭痛を引き起こしているわけではない

「自然派」「ナチュラル」という耳に心地良い言葉に人が惹かれるのはごく当然のことですが、そういった心地良い言葉だけに惑わされずに、素直においしいと思えるかどうかでワインを楽しんで頂ければと思います。自然派であってもなくても、ワインにはすばらしい物もあれば、正直「二度と口にするものか」と思った物もあります。

では、良くできた自然派ワインとの魅力とは何でしょうか?

私がこれからここにつづることは、何も科学的根拠もなく、あくまで私の私的な感覚的なお話です。

良くできた自然派ワインの魅力は、何と言っても「ピュア」であることです。口に含むと体にじわりと無理なく染み込んで、体がワインを、異物ではなく体液に近い物として、素直に受け入れているような、不思議な感覚にとらわれます。

これと対照的な感覚として、真水がうっかり鼻に入っしまった時や、水道水で洗ったコンタクトレンズを無理に目に入れようとした時の不快感や異物感を思い出します。

良い自然派ワインを飲んだ時に感じる心地良さは、体が拒否反応を起こさずにしっくりと受け入れてくれるようで、体とワインの境目がなくなるような、そんな心地良さがあります。

それでは、その自然派ワインをどのようなシーンでどのように飲めば良いか、ケース別にお薦めのワインをご紹介します。今回は自然派ワインの中でも、比較的飲みやすいものからピックアップしました。

シチュエーション1 持ち寄りのバースデー・パーティー・ランチに呼ばれた。用意した料理はちらし寿司と鶏のから揚げ。お昼のパーティーなので、軽めの白ワインを持って行きたい。

お昼にもワインを飲むことがよくあるオーストラリア。軽食の邪魔にならないものは、軽やかなスパークリングや白ワイン、ロゼなどでしょう。ここではサクッと飲める白ワインをご紹介します。柑橘類のような爽やかさを持つ白ワインは、揚げ物との相性もぴったりです。から揚げや天ぷらに添えるレモンのように、後口をさっぱりとしてくれます。

お薦めワイン1

オーガニック認証。各品種に異なる花の種のパッケージをイメージしたデザインが施され、同じワインでも異なる花のラベルが3種類と、女性の心をくすぐるデザインも魅力。女子会やママ友で集まる時などに特にお薦めです。

Spring Seed Wine co. Forget-me-not-blue
Sauvignon Blanc Semillon/$20

産地:マクラーレン・ヴェイル
Web: www.springseedwineco.com.au

お薦めワイン2

ハンター・ヴァレーにバイオダイナミックの畑を持つクリンクル・ウッド。エレガントで洗練されたスタイルのシャルドネで飲みやすいのが特徴。白身の刺し身はもちろん、鶏のから揚げやとんかつ、シーフードのフライなど、幅広い食材に合わせやすい1本です。

Krinklewood Chardonnay 2016/$28
産地:ハンター・ヴァレー
Web: www.krinklewood.com

お薦めワイン3

キャンベラのバイオダイナミック・ワイナリー。グリューナー・フェルトリナーは、オーストラリアではなく、オーストリア原産の品種。青リンゴのような爽やかさ、蜜ろうを思わせるワックスのようなリッチな口当たりが特徴です。少し変わり種のワインを持っていきたい時にお薦め。

Lark Hill Gruner Veltliner/$49
産地:キャンベラ
Web: larkhill.wine

シチュエーション2 ゴルフ仲間との恒例の鍋パーティー。メインはキムチ鍋。居酒屋メニューやピリ辛のお鍋にも合うワインをBYOで持って行きたいけど、どういうワインを選べば良い?

鍋料理に合うワインは、何と言っても万能のロゼ、そしてオレンジ・ワインです。ほかほかの室内で冷やして飲め、肉、魚、野菜、あらゆる食材とけんかをしないのが魅力です。ピリ辛味とも相性抜群です。自然派ワインの中でも、まずは最近話題のオレンジ・ワイン(2017年2月号参照)と鍋料理を合わせてみましょう。オレンジ・ワインととろみのある鍋は、特に相性が抜群です。

お薦めワイン2

ゲヴュルツトラミネール(白ワイン用のぶどう品種)が主体の、アロマティックなオレンジ・ワイン。「公園に持って行きたいワイン」、ということで「パーク・ワイン」という名前になったとか。キリッと冷やして、ピリ辛の料理と合わせても、そのままでもおいしい。

Vinteloper Park Wine White 2017/$19.50
産地:アデレード・ヒルズ
Web: www.vinteloper.com.au

お薦めワイン2

夏みかんを思わせるようなどこか懐かしい香りのするセミヨン主体のオレンジ・ワイン。しっかりとテクスチャーもあり、濃いめの味の料理と良く合います。

Smallfry Tangerine Dream Semillon 2017/$32
産地:バロッサ
Web: smallfrywines.com.au

お薦めワイン3

クリーンで爽やかなイメージの、一般的なハンター・ヴァレーのセミヨンと対照的な、面白いオレンジ・ワインのセミヨン。ちなみにコーシャー・ワイン(旧約聖書の戒律に基づいたユダヤ教の食の規定に従った食品)でもあります。

Harkham Aziza’s Semillon 2017/$32
産地:ハンター・ヴァレー
Web: harkhamwine.com.au

シチュエーション3 義両親と親戚の集まるディナー·パーティー。集まる人たちの世代を考えると、あまり突飛なワインは避け、できるだけ飲みやすい赤ワインを用意したい。

ロースト料 理 やバーベキューなど、オーストラリアではがっつりとボリュームある肉料理を楽しむ機会が1年を通して頻繁にあります。また赤ワインは贈答品としてもよく使われるため、ことさらセンスが問われやすいワインだと言えるかもしれません。そんな時に差し入れのワインをスマートに選べるとうれしいですね。

お薦めワイン1

バイオダイナミック農法、マーガレット·リヴァーの先駆者ワイナリーの1つでもあるカレン。癖がなく、食べ物と合わせやすい赤ワインです。柔らかな口当たりが飲みやすいですが、バランス良くボリュームのある肉料理とも十分合わせられるボディも。

Cullen Cabernet Merlot 2017/$39
産地:マーガレット·リヴァー
Web: www.cullenwines.com.au

お薦めワイン2

しっかりと凝縮した果実味と、滑らかな口当たりを持つ品のあるグルナッシュ。スタイリッシュなパッケージで贈り物にも最適。同じワイン・メーカーの更にワン·ランク上のグルナッシュには、日本伝統の陶芸の補修技術「Kintsugi(金継ぎ)」の名前が付いています。

Ministry of Clouds Grenache/$38
産地:マクラーレン·ヴェイル
Web: www.ministryofclouds.com.au

お薦めワイン3

軽やかで溌剌とした赤ワイン。ワイン·メーカーいわく「白ワイン好きな人向けの赤ワイン」とのこと。昼間のバーベキューなどの場合や、まずは食前に軽く1杯飲みたい、という時にもお薦めです。

Smallfry Barossa Stella Luna Cinsault Shiraz 2017/$28
産地:バロッサ
Web: smallfrywines.com.au

番外編 カップルの記念日編

結婚記念日、今年はあえてどこにも出掛けず、家でゆったりと2人だけで過ごしたい。定番のシャンパーニュも良いけど、今年はいつもとは少し違ったスパークリング·ワインが飲みたい。そんな大人の週末を演出するのなら、奥様に「ブレックファースト·シャンパーニュ」ならぬ「ブレックファースト·ペットナット」はいかがでしょうか。ペット・ナットとは、フランス語「ペティアン·ナチュール」の略で、ブドウ果汁の糖分が全て発酵する前に瓶詰し、瓶内で発酵させることによってガスが閉じ込められます。ほんのり甘く、元気に立ち上る泡、ゴクゴクと飲めるのど越しが爽やかなオーストラリアのペット·ナットは、よく「gluggable(がぶ飲みできる)」と表現されます。シャンパン・グラスも良いですが、ここはあえてカジュアルなタンブラーなどで、カウチやベッドで気軽に楽しんでみてください。


フロスト結子◎日本人としての合格者はまだ少ないワインの国際資格WSET®Diploma in Wine & Spirits及び日本酒のAdvanced Certificateを取得。日本でワイン関連商社の貿易業務に携わった後、2009年オーストラリア人の夫との結婚を機にシドニーへ移住。現在はオーストラリア国内大手オークション会社であるGraysOnlineのワイン部門でアシスタント・バイヤーとして勤務する傍ら、フリーランスとしてライティング、ワイン関連の翻訳、市場調査などで精力的に活動中。ワインのコメントは「とにかくおいしそうに書く」がモットー。
Web: auswines.blog.jp

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