豪最大のワイン・ブランド「イエロー・テイル」と楽しむ1週間①

豪最大のワイン・ブランド「イエロー・テイル」と楽しむ1週間

ワインは値段が高くて普段あまり飲めない物、ワインを飲み始めて間もない、特に若い人の中にはそう考えている人が多いのではないだろうか。そんなイメージを変えるのが、オーストラリア最大のワイン・ブランド「イエロー・テイル(yellow tail)」。本特集では、本紙連載「幸せワイン・ガイド@オーストラリア」でおなじみのフロスト結子さんが、同ブランドによる日常のワインの楽しみ方を色別に簡単に覚えられる7本のワインとそれに合う晩ご飯を例に挙げて紹介。イエロー・テイルがあなたの1週間を「おいしく」「簡単に」「楽しく」変えてくれることだろう。

オーストラリア最大のワイン・ブランド「イエロー・テイル」とは

ⓒyellow tail
ⓒyellow tail

オーストラリアに来てから、ワインに触れる機会が増えたという方は多いのではないでしょうか。日本よりもずっと身近にワインがあるオーストラリア。ワイン好きならば、特別な日や贈答だけでなく、もっと気軽に、毎日でも飲みたいですよね。日本でもワインは随分日常化してきましたが、まだ少し敷居が高い物だと思われている方が多いようです。

パンや牛乳を買うように、気軽にワインを買う。当たり前のようにワインが毎日食卓にある。今、そんなライフスタイルを実現してくれているワイン・ブランドの1つが、イエロー・テイルなのです。

スーパーマーケットのワイン。そう聞くと、あまり良いイメージを持てない人もいるかもしれません。でも、安くておいしいスーパーマーケット・ワインを作るのって、多くの人が想像する以上にはるかに大変なことなんです。日本であればスーパーマーケットやコンビニ、オーストラリアであれば大手リカー・ストアなど、店舗数の多い店にワインを卸すには、品質やスタイルを一貫して保つこと、相当の生産量を維持し続けること、そして誰もが毎日でも買えるようにコストを抑えることが求められます。これができる力のある生産者は、やはり限られているんです。

イエロー・テイルのサクセス・ストーリー

イエロー・テイルは元々、イタリアのシチリア島からの移民であったフィリッポ&マリア・カセラ夫妻が、ニュー・サウス・ウェールズ州内陸の人口2万人程度のごく小さな町、グリフィスで始めたワイナリーです。イタリア系移民の人びとが多く住むこの町は、オーストラリアのオレンジやレモンの主要産地としても知られています。カセラ夫妻によってここで最初にワインが造られたのは1969年、今からちょうど50年前のこと。カセラ・ファミリー・ブランドの誕生です。最初は友人や家族と楽しむためだけのワインを造るような、本当に小さなワイナリーでした。当時は瓶にすら詰められない、バルク・ワインという形でワインを造っていました。イエロー・テイルは、そんな小さな家族経営のワイナリーが、今や世界50カ国以上で販売されるグローバル・ブランドへと成長したサクセス・ストーリーなんです。

カセラ・ファミリーに転機が訪れたのは、フィリッポとマリアの息子であるジョン・カセラ氏に代替わりした後のことでした。先見の明に長けたジョンは、99年にアメリカ市場への進出を果たし、その後、アメリカ市場での更なる拡大を目指します。低価格帯のワインにポテンシャルを見出したジョンは、イエロー・テイル・ブランドを設立します。価格を安く設定し、ひと目でオーストラリア・ブランドと分かるワラビー(カンガルーではない)とアボリジニー・アートを組み合わせ、カラフルな原色を施したラベル・デザインを採用したのです。これが今や誰もが知るワイン・ブランド、イエロー・テイルの誕生でした。

今や世界50カ国以上で販売されているイエロー・テイルは元々、小さな家族経営のワイナリーだった
今や世界50カ国以上で販売されているイエロー・テイルは元々、小さな家族経営のワイナリーだった
ワラビーのイラストとカラフルな原色が施されたラベルが誰もが知るワイン・ブランドのイメージを確立した
ワラビーのイラストとカラフルな原色が施されたラベルが誰もが知るワイン・ブランドのイメージを確立した

目標の40倍以上の売り上げを達成!

複数の州に広大なブドウ畑を所有し、自社の力だけでワインの原料を大量に賄うことができている
複数の州に広大なブドウ畑を所有し、自社の力だけでワインの原料を大量に賄うことができている

2001年にブランドが設立され、アメリカでは当初年間2万5,000ケースの売り上げを目標に掲げていました。しかし、最初の13カ月で売り上げが何と100万ケースを超えるという大成功を収めます。イエロー・テイルは今でも、アメリカで最も売れているワイン・ブランドです。

ちなみに日本国内でのワインの売り上げトップ10に入っているオーストラリアのブランドは、イエロー・テイルだけ。世界的に見ると、年間10億本以上(2013年調べ)のイエロー・テイルが売られています。

これだけの量のワインの生産には、当然膨大な量のブドウと、それをスピーディーに処理できる施設が必要になります。カセラ社の自社畑はブランド設立以来拡大し続け、同社はニュー・サウス・ウェールズ州、南オーストラリア州、ビクトリア州などに広大なブドウ畑を所有しています。自社でブドウが大量に賄えるというのは、ブランドとしての大きな強みでもあります。ブドウの品質管理が行き届きやすく、かつより多くの選択肢からより良いブドウを低コストで入手できるためです。自社畑以外にも、契約農家とのネットワークを駆使し、不足分のブドウが供給されています。

イエロー・テイルの工場内にある巨大倉庫
イエロー・テイルの工場内にある巨大倉庫

カセラ社は、工場に容量1,094リットルから1,100万リットルの物まで、800を超える巨大ステンレス・タンクを所有しています。更に、カセラ社の誇る世界最速のボトリング・ラインは、わずか1時間で何と3万6,000本のワインの瓶詰めを可能にしています。

でも、始まりは、ほんの小さな小屋から始まったワイナリーだったんです。

カセラ・ファミリーのホーム

イエロー・テイルの巨大な工場の敷地内にあるカセラ家最初の家(ジョンの生家)
イエロー・テイルの巨大な工場の敷地内にあるカセラ家最初の家(ジョンの生家)

実はこの巨大な工場の敷地内には、800以上の巨大ステンレス・タンクや最速のボトリング・ラインの他に、カセラ家の最初の家でありジョンの生家が残っていて、そのすぐ隣には、一番最初の小さく質素なワイナリーが残されています。夏は40度を超えるグリフィス、エアコンもないこの小さな家で、ジョンの両親が4人の子どもを育て、その横でワインを造り始めた、まさにカセラ家の原点でした。ジョンの両親はイエロー・テイル・ブランドでビジネスが大成功した後も、ジョンの父親であるフィリッポが2009年に亡くなる少し前まで、この工場の真ん中に埋もれるようにたたずむ小さな家に「ここが『Home』だから」と住み続けたそうです。

また現社長であるジョン・カセラ氏も、そんな両親と同様、非常に謙虚な人物として知られています。工場内にある彼のオフィスは創業当時のままで、巨大な工場や全世界を網羅したブランドの社長のオフィスとは思えないほど、大変つつましやかです。資金が入れば新たな畑の購入などに充て、より良いブドウの供給に努めているそうです。

イエロー・テイルを代表とするカセラ・ファミリー・ブランドは、これだけ大きなブランドになった今でも家族経営です。これはオーストラリアのワイン・ブランドとしてかなり珍しいケースで、ビジネスの規模がどんなに大きくなっても彼らの原点は変わらないのです。

イエロー・テイルの3つの魅力

その1安くても、ちゃんと&いつでもおいしい

イエロー・テイルの魅力はまず純粋においしいこと。渋味は控えめに、シンプルで果実味中心の分かりやすい味わいになっています。そして毎年大きくスタイルを変えることなく「いつ飲んでも変わらないおいしさ」であることです。原料がブドウのワインは、農産物です。毎年ブドウのできが異なる中、安定した品質とスタイルを毎年保ちながら、しかも大量生産するということは、実はとても大変なことなのです。ヴィンテージ(ブドウの収穫年)ごとの違いを楽しむ、というのもワインの醍醐味の1つではありますが、イエロー・テイルのような量産型のワインは、あえてスタイルの一貫性を重要視しています。ワイン初心者だと、特に買う時期や場所によって極端に味が変わると、「この前と味が違う」「去年と味が違う」など、戸惑ってしまいますよね。

その2分かりやすい

ジョン・カセラ氏はパッケージに、原色のカラフルなデザインで、しかもブドウ品種ごとに異なる色のラベルを採用しました。これは難しいブドウ品種の名前を覚えられなくても誰にでもワインを選びやすくするためです。色による覚え方で良いのであれば簡単ですね。色で選ぶということで、「ワインをどう選んで良いか分からない」というハードルがぐっと下がります。「自分の好きなイエロー・テイルは赤と青」と覚えたり、あるいは「この前は黄色だったから、今日はオレンジを買ってみよう」という楽しみ方もできますね。

その3可愛い・楽しい

そして、ワラビーをモチーフにした可愛いラべル。今でこそ、動物系のデザインの可愛いワイン・ラベルを世界中のワインで見掛けるようになりました。が、実はワインの世界で最初にこういったスタイルのラベルで成功を収めたのは、イエロー・テイルなのです。若い人にも親しみやすく、かつアメリカ市場で「ひと目でオーストラリアのワインと分かる」デザインを目指しました。オーストラリアのナショナル・フラッグとしてブランディングで成功したカンタス航空のロゴからもヒントを得たようです。これもまた、ジョン・カセラ氏のアイデアです。

ワインを食事の一部として生活に取り入れるには、やはり背伸びはしたくない。毎日高いワインや希少なワインばかり飲まなくても良いのです。難しいことは置いておいて、ただ、ご飯を食べるようにシンプルに楽しみたい。そう思っている人には、いろいろな側面からワインへのハードルを下げてくれるイエロー・テイルから始めてみて頂きたいです。サクッと飲めるそのおいしさと気軽さの裏にある、彼らのサクセス・ストーリーも、時々は思い出してみてくださいね。

フロスト結子
オーストラリアと日本でワイン業界に携わり10年以上。フリーランスでワイン専門通訳、翻訳、ライター、市場調査、イベントなど幅広くこなす。私生活ではマラソン・ランナー。世界最大のワイン教育機関WSETの最上位資格、WSET®︎Diploma in Wine & Spirits及び日本酒のAdvanced Certificateを取得。
Web: auswines.blog.jp

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