最終回 Rockpool オーナー・シェフ ニール・ペリーさん

食の仕事人に聞く 私が考える究極の料理
食の仕事人に聞く 私が考える究極の料理
ニール・ペリーさん

最終回

Rockpool オーナー・シェフ
ニール・ペリーさん




次世代のシェフを育ててきたことが私の誇り
  彼らが私のことを思い出してくれたら嬉しい



シドニーの高級ダイニングと聞いて、まずRockpoolを思い浮かべる人も多いのでは ないだろうか。1989年のオープン以来、国内外からの高い評価を誇り続ける、オース トラリア屈指の有名レストランだ。連載最終回となる今回は、モダン・オーストラリア 料理を牽引し続けているRockpoolのオーナー・シェフ、ニール・ペリーさんの言葉を問 答形式でお届けして締めくくりたい。

最善を尽くし、明日はさらに上を 目指す
――ペリーさんは、オーストラリア有数 のトップ・シェフとして評価されていま す。長いキャリアの中で、この国が誇る モダン・オーストラリア料理を生み出し てこられましたが、ご自身の軌跡につい てどのようにお考えですか。
  私の仕事については、私ではなく、ほ かの方が評価してくださるものだと思い ます。私が言えるのは、自分が成し遂げ てきたこと、特に次世代のシェフを応援 し育成してきたことを誇りに思っている という事実、これだけです。
 もちろん、長い年月にわたって自分の 料理を発展させてきた、その道のりも私 の誇りです。国内の最高級の食材と優れ たサプライヤーに恵まれていることを、 非常に幸運だと思っています。
――クオリティーの高さを維持するた めに、特に努力されていることはありま すか。
  私たちのチームは、まず最善を尽く すことに集中し、そして明日はさらに 上を目指す、この姿勢をずっと持ち続 けています。常に完璧さを追求してい るのです。
 「優れた料理を生み出すために最も 重要なのは、最高の食材を入手するこ と」、これがRockpoolの理念です。私 たちは常に、この理念に徹し続けてい ます。
――ペリーさんはこれまでに複数のレス トランを立ち上げてこられました。当時 のご経験は、現在のご活躍にどのように つながっているとお考えですか。
 これまでの人生における活動はすべ て、素晴らしい経験になっていると思い ます。良いことでも悪いことでも、それ は学びにつながるものです。あらゆるこ とから、何らかの経験を得なければなら ないのです。そのように生きてきて、今 の自分があるのだと思います。

食の仕事人に聞く 私が考える究極の料理
パッションフルーツづくしのスフレ
食の仕事人に聞く 私が考える究極の料理
Spice Templeが提供する、湖南スタイルの蒸したブルー・アイ
食の仕事人に聞く 私が考える究極の料理
グリュイエール・チーズがとろける、Rockpool Bar & Grill Melbourneの和牛バーガー

――RockpoolとRockpool Bar & Grillのほ かに、経営されているレストランはあり ますか。
 Rockpoolはシドニーのロックスにあり ます。Rockpool Bar & Grillはシドニー、 メルボルン、パースの3カ所です。そし て、Spice Templeをシドニーとメルボルンに、The Waiting Roomというバーをメ ルボルンにオープンしています。
――Rockpoolは、どのようなダイニング を体験できるレストランですか。
  Rockpoolでは、オーストラリア国内で 入手可能な最高級の食材を、優れた技術 を誇るシェフが調理して、お客様にご提 供しています。国内の最高の食材を入手 できたら、それを誠心誠意で大切に扱わ なければなりません。これはとても大事 なことです。
――Rockpool Bar & Grillはどのようなレ ストランですか。
  店舗は現在、NSW州、VIC州、WA州 の3州にありますが、最高の食材を完璧 に調理するというほぼ全店共通のコン セプトと理念を持っています。料理は Rockpoolとは大きく異なり、よりシンプ ルなスタイルを提供しています。
――これまで、シドニーのレストラン事 情におけるさまざまな変化を見てこられ たと思いますが、今のシドニーのレスト ランとシェフのトレンドについては、ど のようにお考えですか。
  街は常に変わるものです。古いものは 新しくなり、新しいものは古くなる。そ れは生命のサイクルそのものであり、私 たちの誰もがその中にあるのです。私た ちにできるのは、自らに正直であること と、自分たちの作品を信じること、それ だけです。トレンドは移り変わるもので すから。
「究極」は人それぞれ異なるもの
――ご自身の料理のスタイルを、どのよ うに表現されますか。
  オーストラリア料理です。恵まれた土 地と、素晴らしい食材があり、私自身が 周りから得たインスピレーションを交え て、素直に調理する。インスピレーショ ンは、愛読書や、世界各国の料理のプ ロ、旅の経験、オーストラリアに近しい 人々などから受けますね。
 シドニー、メルボルン、パースにある Rockpool Bar & Grillsは、国内最高級の肉 や魚介類を炭火でグリルしたメニューと 贅沢なワイン・リストをそろえたレスト ランに、食前酒・食後酒やカジュアルな ダイニングを提供するバーを併設した店 ですが、これは北米の素晴らしいステーキ・ハウスに刺激を受けたものです。 また、シドニーとメルボルンにある Spice Templeでは、中国の四川省や雲南 省、湖南省などの地方料理からインスピ レーションを得て、チリとスパイスを効か せたモダンな中国料理として、新しいタイ プのアジア料理を生み出しています。
――日本と日本料理は、ペリーさんにど のような影響を与えていますか。
  新鮮な素材、季節の素材を生かすとい う日本料理の特性を、とても気に入って います。これまでと同様に、今後も日本 料理からヒントを得ていくと思います。 私自身の料理に日本料理を大きく取り 入れることはありませんが、レストラン で定期的に楽しみたいですね。
――新しい料理を創作するアイデアはど こから生まれるのでしょうか。
 やはり、まず季節ですね。そして、 マーケットからもインスピレーションを 得ます。美しく熟したトマト、香り豊か なハーブ、旬のシーフードなど…。
 旅行も刺激になりますね。また、料理 本をこよなく愛していて、もう1度読み 返せるようにマークしたページが常にた くさんあります。

食の仕事人に聞く 私が考える究極の料理
The Waiting Roomは落ち着いた大人の空間
食の仕事人に聞く 私が考える究極の料理
シーフードを贅沢に使った、Rockpoolのちらし寿司

――ペリーさんにとって「究極の料理」 と呼べる料理は、どのようなものでしょ うか。
  私にとって「究極の料理」というも のはないですね。インスピレーション も、私が調理するものも、変化します から。
 確かに、例えば「ヤギ乳のチーズの トルテリーニ キング・プロウンのグリ ル添え」など、長い間にわたり私のシ グネチャー・ディッシュと呼ばれてきた 料理はあります。けれども、何を究極 と見なすかは、人それぞれ異なると思 うのです。
――では、シェフであることの最高の喜 びとは何でしょうか。
  若い才能を見い出し、育てることで す。シェフの価値というものは、後に何 を伝えていくかによって測られるのでは ないかと思うのです。
 自らが影響を与えた人々が、どれほど の強さと優秀さを発揮できるか。そうい う意味で、自分が多くのことを伝えられ たらと願っています。
 私自身も、私に料理を教え、時間をか けて説明し、育ててくれた人々のことを よく覚えています。今私が教えている 人々、これまでに教えてきた人々が、い つか同じように私のことを思い出してく れたら嬉しいですね。
――シェフ業務以外で現在関わっている 活動があれば、お聞かせください。
  ちょうど、6冊目の料理本を書き終え たところです。今年末までには書店に並 ぶ予定です。私のレシピと料理哲学につ いて執筆し、皆さんと共有できること は、大きな喜びですね。
  また現在、「Neil Perry Fresh」とい うブランドの製品を、国内のスーパー マーケットで販売しています。商品は、 全く新しいコンセプトのマヨネーズと ソースで、今まさに研究を重ねていると ころです。
 カンタス航空のプロジェクトもありま す。私たちは国際線のファースト・クラ スとビジネス・クラスのメニューを1997 年から手がけており、近年は国内線のビ ジネス・クラス・メニューにも携わってい ます。カンタス航空と私たちの関係はた いへん良好で、提携させていただいてい ることを誇りに思っています。
  さらに、私が大きな関心を寄せている のが、レストランを通じて実施している 数々のチャリティー活動、特に「スター ライト・チルドレンズ・ファウンデーショ ン」と「オージー・ハーベスト」※の活動 です。恵まれない人々のために、私たち が微力ながらも何かお手伝いできるの は、大きな喜びでもあります。

食の仕事人に聞く 私が考える究極の料理
著書「Good Food」
食の仕事人に聞く 私が考える究極の料理
著書「Balance & Harmony ーー Asian Food」

――今後はどのような活動を計画されて いますか。
  何よりも、すべてのレストランが高い クオリティーを維持できるよう、日々最 善を尽くすことです。チャリティー活動 も、カンタス航空との提携関係も継続し ていきます。本をあと何冊書くことにな るかは、神のみぞ知る、というところで すね。いつの日かリタイアするかもしれ ませんし…しないかもしれません。
長年にわたり数多くのレストランを オープンしながら、最高の食材を完璧 に調理するという理念を貫き続けてい るペリーさん。今後もさまざまな活動 や場を通じて、次の世代を担うシェフ に、その理念と真摯な姿勢を伝えてい くのだろう。彼のキャリアにリタイア という文字はきっと出てこない、そん な印象を受けた。 (編集部)

※スターライト・チルドレンズ・ファウンデーション (Starlight Children’s Foundation Australia)は、病気や 障害などにより治療や入院を必要としている全国の子ど もたちと、その家族を支援する慈善団体。ペリーさんは 今年2月、Rockpool Bar & Grillパース店のオープン記念と ともにチャリティー・ディナーを開催し、40万ドル以上 の寄付を実現した。オージー・ハーベスト(OzHarvest) は、企業などが廃棄処分に回す過剰な食材を寄付として 譲り受け、恵まれない人々に食事などを提供する慈善団 体へ配布している。ペリーさんは国内の有名シェフや各 界の著名人とともに、このチャリティー活動の大使を務 めている。


食の仕事人に聞く 私が考える究極の料理
白を基調としたインテリアが美しいRockpool

ロックプール
ROCKPOOL

107 George St., The Rocks NSW
Tel: (02) 9252-1888
Web: www.rockpool.com
Neil Perry
プロフィル
◎シドニーのマクマーンズ・ポイントにあるSail Restaurantで、ホスピタリティー分野でのキャ リアをスタートした後、パーム・ビーチのBarrenjoey Restaurantでヘッド・シェフを務め、パディントンの Perry’sなどで経験を積む。1986年10月、ボンダイ・ビーチにBlue Water Grillをオープンし、短期間で大成功 を収めた。1989年2月にビジネス・パートナーのトリッシュ・リチャーズ氏とともにRockpoolをオープン。 国内外で数々の名誉ある賞に輝き、世界トップ・クラスのレストランに成長させた。現在、シドニー、メル ボルン、パースでレストランとバーを展開中。ビジネスとしてRockpool Consultingを経営し、カンタス航 空の機内食やキャビン・アテンダントの接客トレーニングなども手がける。「Rockpool」「Simply Asian」 「The Food I Love」など著書多数。

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