序章”日豪フード・ツーリズムの提案”

食の宝庫オーストラリア
(Photo: Tourism Australia)

MASUYA GROUP CEO  —KEN定松が歩いた—

食材の宝庫   オーストラリア

序章 “日豪フード・ツーリズムの提案”

 豪州政府は現在、地域、農業、食品産業の振興策として、国内各地の特産食材や農業と、観光を結びつけた新しい旅行形態「フード・ツーリズム(食品観光)」「アグリ・ツーリズム(農業観光)」を推進しています。そこで私は、ワインや農業、畜産、漁業に関わる人たちを通じて、1年にわたって豪州の食材の魅力をお伝えしたいと思います。この試みが日本各地のフード・ツーリズムの活性化に結びつき、日本と豪州の間で新しい人の流れを起こすことができれば幸いです。

■食べることの大切さ、幸せ
 私自身、寝る間も惜しんでがむしゃらに働いていた30歳ごろまでは、家族みんなで一緒に食事を摂ることに、特別な意味を感じていませんでした。しかし今、2人の娘の成長を見るにつけ、1日の始まりの朝食、いろいろなことを話し合うべき夕食など、その大切さをひしひしと感じています。
 レストランの経営者としての私にとって、「美味しい料理」、さらに言えば「儲かる料理」を求めることが今までのすべてでした。結果、人に必要な栄養素とは何か、そして食材の安全性とは何かということについて、これまでは不十分な知識しかありませんでした。
 さらには、早朝から夜遅くまで休みなく働いてくれる中心スタッフの食事についてはどうか。食に関わるプロの集団である私たち1人ひとりの健康を考えれば、賄い食こそ、管理栄養士をアドバイザーに入れてメニューを作成し、そして皆で楽しく食事を摂ることが大切ではないかと考えています。
 今、外食産業は、ただ美味しいだけの料理についてではなく、人々がレストランに求めているものが何なのかについて、考えるべきターニング・ポイントに来ていると思います。
■食に関わる生産者・流通者たち
 例えば、自分の家族の生活のため、悪天候の中で漁に出る漁師。毎日、天候を気にしながら、1日も気を抜くことなく作物を育てている農家の人々。畜産においては、巨大企業がマーケット・プライスを支配し、新しい技術やDNAの仕組みを研究していますが、その中でも愛情を込めて畜産に励んでいる個々の家族たち。
 私は、そうした生産者、そして流通に関わる人たちへの取材を通し、興味深いエピソードを盛り込みながら、周りの自然や観光地、アコモデーション、ワイナリーなどを紹介していきたいと考えています。

食の宝庫オーストラリア
(Photo: Tourism Australia)

■がんばれ ! 日本の農業・漁業
 農業・漁業の衰退、グローバル化による新しい競争…。現在、日本の地方は大きく疲労しています。
 豪州が進めているFTA(Free Trade Agreement/自由貿易協定)は、日本の農業をさらに消耗させてしまうのではないか ? それとも日本の米、野菜、果物が、世界で売れていくことがあるのかどうか ? また、日本酒はどうなのか ?
 私は世界各地を視察した経験から、日本の農業、漁業、畜産には十二分のポテンシャルがあると感じています。
 将来的には、多くの豪州、韓国、ベトナムなどの若い学生が、日本の地方の大学で、低農薬・有機野菜作りや、魚の養殖技術など、日本の技術を学ぶようになるのが望ましいと考えます。そのためには地方の大学は、英語での授業を積極的に採り入れていく必要があると思います。
 日本は世界で一番安全で、美味しい食材があり、四季があり、伝統技術があり、祭りがあります。豪州が1歩先を行く「フード・ツーリズム」を採り入れることこそ、日本の地方が活性化していく息吹となります。
■豪州だからできること
 現在問題となっている、グローバル化が遅れる日本の教育を再生するためには、高校時代から海外に出て、英語を学び、価値観の違いを学び、成長していくことも必要でしょう。各種のスポーツ、医療、芸術など、世界でも優れた教育レベルを誇る豪州に、日本の高校生・大学生に、ぜひ来てほしいと思います…。
 さて、日本酒の酒蔵は日本国内に1,000軒以上あるとのこと。しかし、その酒蔵が毎年どのように酒米を育て、何百年と受け継がれる匠の技術でどうやって酒を創り出しているのか。酒に興味のない最近の若者だけでなく、酒蔵の近所の方でさえそれらを知らず、また味わおうとしません。
 私は日本で数百年と続く酒蔵のオーナーをシドニーからほど近いワイン産地、ハンター・バレーに案内したことがあります。いつも一般客がオープンに試飲ができる店の作りや、地元の野菜・食材を使ったレストランを併設し、自治体と協力してツーリズムを作り上げている様子に、そのオーナーは、「このワイナリーをぜひスタッフに見せたい。そして市の観光課の人間や、レストラン関係者にも見せたい」と、目を輝かせておられました。多国籍国家の豪州で日本が学ぶべきことは、多々あると思います。
 それでは、来月号のトップバッターには、シドニーの魚卸しの第一人者、Wellstone社代表の石井さんにご登場いただき、魚に対する情熱や豪州の素晴らしい漁港について、取材を通してご紹介します。読者の皆さんにはプレゼントもご用意していますので、お楽しみにどうぞ。
〜 Enjoy your meal ! 〜


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手にしているのはピンクレディ、ガラ、グラニースミス、フジなどのリンゴ

プロフィル
◎日本食レストラン「鱒屋グループ」社長。
肉体的にも精神的にも自分では38歳と信じている。
1961年生まれ。愛媛県松山市出身。A型
Web: www.masuya.com.au

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