第8章 感じる旅、西オーストラリア 先住民の知恵とマーガレット・リバーの美酒

MASUYA GROUP CEO  —KEN定松が歩いた—

食材の宝庫   オーストラリア

第8章 感じる旅、西オーストラリア
先住民の知恵とマーガレット・リバーの美酒

 豪州大陸の先住民アボリジニ。灼熱の大地で暮らす彼らの知恵、独特の食文化、ナチュラル・メディスン…。そして上質ワイン、放牧豚、和牛の生産など、さまざまな側面を持つ、西オーストラリア(WA)州のフード・ツーリズムをご紹介したい。

食の宝庫オーストラリア
Voyager Estate

■アウトバックに生きる先住民たち
 私は過去、スワン川河口に広がる州都パース、入植時代の歴史を今に伝える港町フリーマントル(Fremantle)など、幾度となくWA州を訪れました。中でもブルーム(Broome)での海岸線に沈むサンセットや、ダーウィンを目指しキャンプをしながらの2週間のアウトバック・ツアーは、今でも家族の忘れられない思い出です。
 同州面積の大半を占める、赤土の砂漠が広がるアウトバックでは、アボリジニたちがはるか5万年の昔から、部族に伝わる“生きるための知恵”を大切にしながら暮らしています。彼らは臭覚と大地に咲く花だけで乾いた土地に水脈を探し当て、また、蛾の幼虫、蜜アリ、トカゲ、カンガルーの肉や内臓をフルコース・ディナーとして食すのです。星空を見ながら自分たちの位置を知り、聖地と崇める土地で瞑想し、テレパシーで過去の人や友人と心を交わす…。自然と大地をこよなく愛し、そこに生きることに楽しみを見出す彼らの知恵は、現代人の私たちにとって学ぶべきことが多くあります。
■Cossackでのアート前夜祭にて
 パースから北へ1,500キロ、約2時間のフライトで、世界最大規模の天然ガスと鉄鉱石開発の地、Karrathaに到着。そこから車を約1時間走らせれば、海に面した町・コサック(Cossack)です。大陸の西海岸ながら、岬からは大海から朝日が昇る景色が見られます。
 案内してくれたのは、公共事業として同地でアボリジニ・カルチャー・センターの建設に携わる、建築家のロバート・トーランド氏。私は彼から、9基のお墓がある墓地に案内され、今から180年前、真珠養殖の夢を持ち、海を渡ってこの海岸にたどり着いた日本人の墓だと聞き、驚きました。この地では古跡を巡る“遺産ツアー”もありました。
 その夜、招待されたアボリジニ・アート展のオープニング前夜祭は、資源大手リオ・ティント社とワイナリー「Voyager Estate」の協賛によって、エミューやカンガルー、ラクダのケータリング料理とワインをふるまわれ、100点以上の素晴らしいアボリジニ絵画の展示がありました。
 絵画のドット・ペイントは心を込めて見つめると、静・動・水・大地・愛・家族…、何か物語のようなものを感じることができました。
■マーガレット・リバーのワイナリー巡り
 パースの南280キロの海沿いに広がるマーガレット・リバーは、世界有数のワイナリーがあるWA州を代表するワイン産地です。今回まず訪れた「Voyager Estate」は、著名グルメ誌の「Best Tourism Experience」賞を獲得したワイナリーです。ワインのテイスティング・バーはもちろん、美しく造られた庭園や、ワインに合う料理を取りそろえたレストランなどは、日本の蔵元にぜひ見学してもらいたいと思いました。
 そこから車で10分で次のワイナリー「Leeuwin Estate」に到着です。早速、レストランで地産地消のメニューの中から、生ガキ、フリーレンジ・ポークなどを注文。テラス席でのワイナリーを眺めながらの食事は、つい時間が経つのを忘れます。
 その後、「Moss Wood」「Cullen」「Pierro」などを訪ねてみました。これらのワイナリーはオーストラリアTop100に入るワイナリーです。
■Piglet(子豚)に囲まれる私たち
 パースから飛行機で南へ2時間。1870年代から入植が始まったアルバニー(Albany)に向かいました。涼しい気候の中で栄養素の高い牧草が育つこの地には、フリーレンジ・ポークのLinley Valley社の牧場があります。その環境は素晴らしく、子豚が森林の中に入っていっても母豚の呼び声で戻ってくる光景は可愛いものでした。
 私は「食の安全」を経営の重要なテーマとしています。作り手である料理人には、生産地を実際に訪れ、食材を大切に扱うことを学んでもらっています。しばらく見学を続けていると、私と大江シェフの足元には、人を恐れることなくPiglet(子豚)が何百匹と集まってきました。「豚は犬よりかしこい」とよく言われますが、意外に本当かもしれません。
 ほかにもアルバニーには、和牛生産で有名なIrongate社があります。オーナーは日本チームとしてアメリカズ・カップに挑戦経験のある、世界的セイラーのピーター・ギルモア氏。彼は以前、日本の一流ホテルで和牛ステーキを食べ、8万円も支払ったとのことですが、その美味しさに魅了され、この地で和牛生産を始めたとのことでした。
■フード・ツーリズムの可能性
 州西北に位置するブルームの「月の階段」とサンセット、野生のイルカが集まるモンキー・マイア(Monkey Mia)、素晴らしいシーフード・レストランが集まるフリーマントル、一大ワイン産地マーガレット・リバー、ワーキング・ホリデー(WH)旅行の聖地の1つ、エスペランス(Esperance)のビーチ。東海岸とは違う魅力とともに、アボリジニ・アート、そしてワイルド・フラワーが咲き誇るこの地は、フード・ツーリズムの可能性を秘めた私の大好きな場所です。
 さて、来月はシドニーの各地で行なわれているオーガニック・マーケットの紹介とともに、世界遺産として知られる岐阜県飛騨高山の白川郷の自然、人、伝統食をリポートします。
Enjoy your meal!
・Leeuwin Estate Web: www.leeuwinestate.com.au
・Voyager Estate Web: www.voyagerestate.com.au


プロフィル
◎日本食レストラン「MASUYA Group」社長。趣味=庭の草刈りと読書。座右の銘=「道のないところに道をつくる」。豪州初の日本食フード・フェアの実施や日本酒の普及促進活動など、日本の食文化の浸透に尽力。また、日本の観光業・外食業との事業提携や人材育成などを進めている。本コラムではオーストラリアのフード・ツーリズムを紹介中。
Web: www.masuya.com.au

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