幸せワイン・ガイド「セミヨン」

今月の品種:セミヨン


シドニー、ニュー・サウス・ウェールズ州にお住まいの皆さんは、日本や州外からご家族やご友人が遊びに来られた時、どんなワインでおもてなしをされていますか?数あるオーストラリア・ワインの中から、せっかくならば「シドニーらしいワイン」を飲ませてあげたい、と思ったこともあるのではないでしょうか。

ワインにもその土地特有の、いわゆる「地酒」があります。今月はシドニーに近いハンター・ヴァレーならではの白ワイン、「セミヨン(Semillon)」をご紹介します。

オーストラリア最古のワイン産地

シドニーに最も近いワイン生産地と言えば、やはりハンター・ヴァレー。シドニーを訪れた時に足を延ばしてみた、あるいはシドニー近郊にお住まいなら、週末に遊びに行ったことがあるという方もたくさんいらっしゃるかと思います。

実はオーストラリアで最古のワイン産地でもあるハンター・ヴァレー。その歴史は、実に1820年までさかのぼります。観光地のイメージが強いと思いますが、実はオーストラリアのワインの歴史上、とても重要な産地でもあるのです。

夏は暑く、収穫時の秋には雨の多いハンター・ヴァレー。本来ブドウの産地としては不向きな気候と思われるのですが、太平洋からのひんやりとした潮風が暑さをクールダウンし、さらに夏の午後は曇りがちで、強い日差しを雲がうまく遮ってくれます。こうした自然条件が重なることで、ブドウの育成に適した環境が作り出されています。

ハンター・ヴァレーのヒーロー、セミヨン

そんなハンター・ヴァレーを代表する白ワインがセミヨンです。セミヨンはフランスのボルドー地方を原産とする白ブドウです。ボルドーはじめ他の地域でも、伝統的にソーヴィニョン・ブランとブレンドされることが多く、他ではいわば補助的な役割を果たすことが多いブドウですが、ハンター・ヴァレーに関して言えば、セミヨンはヒーロー品種の役割を担っています。ここでは世界的にも稀なスタイルでかつ上質な、100パーセント・セミヨンの白ワインが作られています。


収穫を待つセミヨン・ブドウ©Photo Courtesy of Kento Tomita

収穫時に雨のよく降るハンター・ヴァレーでは、セミヨンの完熟を待たずに早々に収穫されます。これによりブドウの糖度が抑えられ、その結果アルコール度数も低く、逆に酸はしっかりと保つことができます。

長期熟成に耐え得る白ワイン

ちなみにかつてセミヨンは、“ハンター・ヴァレー・リースリング”と呼ばれていました。セミヨンの特徴が、リースリングで作られた白ワインに似ていたことから、当初そう呼ばれていたそうです。この表記は90年代ごろまで使われていました。

若いセミヨンは、ライム、レモン、青リンゴ、生のハーブといった、どちらかというと控えめで、すがすがしい香りと味わいを持ちます。料理の邪魔をせず、むしろそっと食事に寄り添うようなワインです。

一見若飲みのシンプルな白ワインのように思えますが、実はハンター・ヴァレーのセミヨンは、驚くほどの長期熟成に耐えることができるのです。

通常ハンター・ヴァレーのセミヨンは、樽を一切介さずに、ステンレスなどの無機質な素材で発酵、熟成されます。若いセミヨンのピュアな果実味はそこから来ています。ですがそこから5年、10年と熟成を重ねると、セミヨンは黄金に色付き、バニラ、トースト、蜂蜜、ナッツといった、まるで樽で熟成したかのような香ばしさを醸し出すワインへと不思議な変貌を遂げるのです。

ハンター・ヴァレーのワイナリーの多くが、収穫したセミヨンの一部をあらかじめ取り分けておき、5年以上寝かせてから「熟成タイプ」としてリリースします。ぜひ一度、若い出来立てのセミヨンと、熟成を重ねたセミヨンを同時に飲み比べてみてください。その驚くべき変異を体感することができます。

食べ物との相性は?

若いセミヨンは生牡蠣やあっさりとした白身魚の刺身、グリルなどと。逆に天ぷらや唐揚げなどと合わせると、セミヨンの爽やかさがレモンやかぼすのように脂を引き締めてくれます。熟成を重ねたものであれば、より濃い味の豚や鶏、あるいはみそを使った料理にもよく合います。次回州外からお客様がいらした時には、ぜひ一緒に楽しんでみてください。

今回は上品なセミヨンからセレクト

梅:平日おうちディナーに

Mount Pleasant Elizabeth Semillon/14ドル
唐揚げ、天ぷら、白身魚のグリルと
Web: mountpleasantwines.com.au

竹:週末和食デートに

Thomas Six Degrees Semillon/24ドル
生牡蠣、フグやヒラメの刺身と
Web: www.thomaswines.com.au

松:大切な方への贈り物に

Tyrrell’s ‘Vat1’ Semillon 2015/48ドル
熟成させてから、豚や鶏、みそを使った料理と
Web: www.tyrrells.com.au


<著者プロフィル>
フロスト結子
◎日本人としての合格者はまだ少ないワインの国際資格WSET® Diploma in Wine & Spiritsを取得。日本でワイン関連商社の貿易業務に携わった後、2009年オーストラリア人の夫との結婚を機にシドニーへ移住。現在はオーストラリア国内大手オークション会社であるGraysOnlineのワイン部門でアカウント・マネージャーとして勤務する傍ら、フリーランスとしてライティング、ワイン関連の翻訳、市場調査などで精力的に活動中。ワインのコメントは「とにかく美味しそうに書く」がモットー。Web: auswines.blog.jp

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