幸せワイン・ガイド「グルナッシュ」

ワインの産地、ブドウ品種名などの表記は、オーストラリア連邦政府のワイン振興団体であるワインオーストラリアの基準に合わせています。

今月の品種:グルナッシュ

オーストラリアのワインの歴史は、ヨーロッパに比べるとずっと浅いのですが、実はオーストラリアには「あるブドウ品種に限って言えば」という前置き付きで、「世界最古のブドウ畑」が存在します。今月ご紹介したい品種は、そんな歴史ある畑から生まれる「グルナッシュ(Grenache)」です。

味わいの特徴、料理との相性

©Photo Courtsey of Smallfry Winery / Yuki Nakano
©Photo Courtesy of Smallfry Winery / Yuki Nakano

グルナッシュはスペイン原産(一部イタリアという説もある)の黒ブドウで、オーストラリアの代表的な産地は、南オーストラリア州のバロッサとマクラーレン・ヴェイル。乾燥に強く、温暖な気候を好むグルナッシュに良く適した環境の産地です。ブラック・チェリーやベリー系の果実の味わいとスパイスの香りが特徴で、アルコール度数はやや高めのものが多く、渋味は控えめで、温かくソフトな口当たり。上質なものは、熟成により土や皮革などの複雑な風味が折り重なっていきます。

相性が良いのはタパス、ラム、仔牛、トマト系のシチューなど、地中海系の料理。和食では焼き鳥、すき焼き、鶏レバーなど、味の濃い料理が良いでしょう。

ラベルの表記

グルナッシュの古い樹と、ワイン・メーカー©Cirillo Estate
グルナッシュの古い樹と、ワイン・メーカー©Cirillo Estate

グルナッシュは100パーセント単一品種のワインもありますが、どちらかというとブレンドされることが多い品種。「GSM」と表記されたものはその1つで、「グルナッシュ、シラーズ、ムーヴェドレ(別名マタロ)」の3品種のブレンド。この組み合わせはフランスの南ローヌ地方に倣ったものです。

更にグルナッシュのワインによく見かけるのが、「Old Vine」という表記。文字通り「古い樹からできたワイン」という意味です。ブドウは、樹齢を重ねる程その収量が減少する傾向にあります。一方で、その分凝縮感のある良質な果実を付けるようになり、古い樹のブドウからはより上質で複雑な味わいのワインが生まれるのです。ただし、具体的に「樹齢何年以上のものをOld Vineとする」というような定義がある訳ではないので、購入の際には裏のラベルを注意して読むようにしましょう。

グルナッシュと南オーストラリアの歴史

グルナッシュは、バロッサには1842年にヨーロッパ人による開拓が始まった時に持ち込まれ、当時は主に酒精強化ワインの原料に使われていました。今月のお薦めワインにセレクトした「シリロ・エステート(Cirillo Estate)」には、1848年に植えられたグルナッシュの樹があり、現在世界に残っている中でも最古のグルナッシュの畑の一部だと思われます。実に170年にも及ぶ樹齢、これこそが本物のOld Vineですね。

体長1ミリの脅威

ではなぜ、ワイン作りの歴史の長いヨーロッパよりも古い樹が、オーストラリアにあるのでしょうか?その背景には「フィロキセラ」という名前の、体長1ミリにも満たない小さなアブラムシの存在があります。ブドウの葉や根に寄生してコブを作り、やがて樹を枯死に至らせる害虫です。フィロキセラの繁殖力は恐ろしく高く、一度付着してしまうとその畑を全滅させるまで歯止めが利きません。この害虫が、ブドウ農家にとっては最大の脅威なのです。

1862年、ニューヨークから持ち込まれたブドウの樹に付着する形で、フィロキセラがフランスへ持ち込まれます。フィロキセラへの耐性を持たないヨーロッパのブドウはあっという間にその侵食を受け、その後10年間でフランス全土に蔓延しました。フィロキセラの勢いはその後もとどまることなく、ヨーロッパ全域に広がり、多くの歴史あるワイナリーの畑が壊滅に追い込まれました。

フィロキセラは1877年にオーストラリアにも持ち込まれ、VIC州やNSW州にあるブドウ畑も打撃を受けますが、南オーストラリア州に関しては徹底した検疫を行い、フィロキセラの侵入を未然に防ぐことができたのです。現在でも南オーストラリア州は、世界でも数少ないフィロキセラ未侵入のワイン産地です。バロッサの大地に根を張り、生命をつなぎ続けるグルナッシュ。歴史を飲むつもりで、ぜひお試しください。

今回は歴史あるグルナッシュからセレクト

梅:可愛いパッケージが女子会向け

Bethany Old Vine Grenache/25ドル
タパス、ソーセージのパスタと
Web: www.bethany.com.au

竹:BYOデートに

Turkey Flat Grenache/30ドル
ラム、仔牛のトマト煮と
Web: www.turkeyflat.com.au

松:大切な記念日に

Cirillo 1850s Grenache Barossa/50ドル
上質なステーキと一緒に
Web: www.cirilloestatewines.com.au


<著者プロフィル>
フロスト結子
◎日本人としての合格者はまだ少ないワインの国際資格WSET® Diploma in Wine & Spiritsを取得。日本でワイン関連商社の貿易業務に携わった後、2009年オーストラリア人の夫との結婚を機にシドニーへ移住。現在はオーストラリア国内大手オークション会社であるGraysOnlineのワイン部門でアカウント・マネージャーとして勤務する傍ら、フリーランスとしてライティング、ワイン関連の翻訳、市場調査などで精力的に活動中。ワインのコメントは「とにかく美味しそうに書く」がモットー。Web: auswines.blog.jp

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