幸せワイン・ガイド@オーストラリア「今月の銘醸地:タスマニア」

幸せワイン・ガイド@オーストラリア

今月の銘醸地:タスマニア

美食の孤島、タスマニア

今オーストラリアで名実共に「最もクールなワイン産地」、タスマニアを訪れました。

タスマニアと聞いて、読者の皆様は、まず何を思い浮かべるのでしょうか。鬱蒼(うっそう)とした原生林や滝、紺碧(こんぺき)の海岸といった壮大な自然、その中で暮らす可愛い野生動物でしょうか。それとも、その大自然の中で生まれるたくさんのおいしいものでしょうか。採れたてのベリーやチェリー、アプリコットなどのフルーツ、ぷりぷりに太った牡蠣やサーモンなどのシーフードに、地元で丁寧に作られたハンドメイドのチーズやチョコレート。現代美術が楽しめる場所があり、そして、ワインはもちろんのこと、クラフト・ビールやジン、ウイスキーといったプレミアム・スピリッツなどの、世界に誇れる最高品質のお酒がタスマニアにはあります。

自然と人との距離がとても近く、訪れる人びとのハートをわしづかみにする魅力が満載のタスマニア。南極海からもたらされる夏でもひんやりとした空気が、心まで浄化してくれるようです。さて、そんなタスマニアでは、どんなワインが作られているのでしょう。

温暖化と冷涼気候スタイルのトレンド

オーストラリアで最も冷涼な気候のワイン産地であるタスマニア。つい最近までは、南オーストラリア州やビクトリア州などのより規模の大きな生産地の側で、何かと忘れられがちな存在でした。オーストラリア本土と海を隔てていること、生産量がオーストラリア・ワイン全体の1パーセント未満と非常に限られていることなどが、その要因であったように思います。

地球温暖化、そして「冷涼気候スタイル」へのワインのトレンド・シフトと共に注目を集める産地・タスマニア
地球温暖化、そして「冷涼気候スタイル」へのワインのトレンド・シフトと共に注目を集める産地・タスマニア

ですが今、そんな小さなタスマニアが、国内外の生産者、評論家、そして愛好家たちに、一気に注目されています。

その背景の1つにあるのは、まずは地球温暖化です。各ワイン産地の平均気温が年々上昇する中、生産者の目はやはりより冷涼な気候の産地へと移行しています。

同時にオーストラリアのワイン産業全体のトレンドが、より軽やかでエレガントな「冷涼気候スタイル」へシフトしていることも一因です。

タスマニアのワイン・シーン

タスマニアのワイン産地は、島の北部のローンセストン近辺のテイマー・ヴァレー、東海岸、そして南部のホバート周辺にあります。小さな島とはいえ、場所によりその気候や土壌は複雑で多様性に富んでいますが、今はまだ州内の細かな産地よりも、「タスマニア」という全体としての地名が、ワイン産地としてのブランドとなっているようです。

主力品種とスタイル

タスマニアの主力品種は冷涼気候を代表するシャルドネとピノ・ノワール、そしてリースリングなどです。

また、カベルネ・ソーヴィニョンやシラーズなどのより晩熟の品種も、ドメイン・エー(Domaine A)やグレーツァー・ディクソン(Glaetzer-Dixon)などの卓越した生産者がすばらしいワインを生み出しています。カベルネやシラーズと聞くと、フル・ボディの力強い赤ワインを思い浮かべますが、タスマニアのそれらは、あくまで清涼感に溢れた、涼やかかつ芯のあるスタイルです。

また、タスマニアはオーストラリアでも特にプレミアム・スパークリング・ワインの産地として知られています。シャルドネ、ピノ・ノワールを原料としたものを中心に、シャンパーニュに匹敵する品質のスパークリング・ワインを生み出しています。オーストラリアのスパークリング・ワイン・メーカーとして最も有名なエド・カー(Ed Carr)の造るハウス・オブ・アラス(House of Arras)や、ジャンズ(Jansz)などがその代表格です。

量より質

前述の通り、タスマニアのワインはオーストラリア全体の1パーセント未満の数量ですが、その一方で高額ワイン・カテゴリーにおいてはオーストラリア全体の10パーセントを占めています。“Quality rather than Quantity”、まさに「量より質」を地でいくタスマニアのワイン・シーン。品質重視のワイン作りに取り組む小規模生産者が多く存在しています。

お薦めの生産者は前述のドメイン・エー(Domaine A)、グレーツァー・ディクソン(Glaetzer-Dixon)、家族三代にわたりワインを作るプーリー・ワインズ(Pooley Wines)、敷地内に大富豪の私蔵アート・コレクションを展示するMONA (Museum of Old and New Art)で有名なムーリラ・エステート(Moorilla Estate)、そして斬新なスタイルの自然派ワインを生み出すドメイン・シーマ(Domaine Simha)。

次回も引き続き、魅力満載のタスマニアについてお届けします。

*今月のお薦めワイン*
名実共に「クール」なタスマニア・ワイン

特別なゲストとの1本

Domaine A Petit ‘a’ Cabernets 2011/$45
Web: www.domaine-a.com.au
ステーキ、ラムチョップなどと

力強いピノ・ノワール

Pooley Cooinda Vale Pinot Noir 2016/$58
Web: www.pooleywines.com.au
鴨のコンフィなどと

夏にも軽やかな赤

Hughes & Hughes 15% Whole Bunch Pinot Noir 2017/$40
Web: mewstonewines.com.au
サーモン、トロの刺身などと


フロスト結子
日本人としての合格者はまだ少ないワインの国際資格WSET® Diplomain Wine & Spirits及び日本酒のAdvanced Certificateを取得。日本でワイン関連商社の貿易業務に携わった後、2009年オーストラリア人の夫との結婚を機にシドニーへ移住。現在はオーストラリア国内大手オークション会社であるGraysOnlineのワイン部門でカテゴリー・スーパーバイザーとして勤務する傍ら、フリーランスとしてライティング、ワイン関連の翻訳、市場調査などで精力的に活動中。ワインのコメントは「とにかくおいしそうに書く」がモットー。
Web: auswines.blog.jp

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