幸せワイン・ガイド@オーストラリア「キャンベラ・ディストリクト」

幸せワイン・ガイド@オーストラリア

今月の銘醸地:キャンベラ・ディストリクト

オーストラリアの首都、キャンベラ。そのキャンベラ周辺で、実はワインが造られているのをご存知ですか? キャンベラと言えば政治や学術の中心地、国会議事堂に、各国の大使館、美術館や大学が整然と建ち並ぶ美しい街です。一方首都でありながら、その規模はオーストラリアで上から8番目、ちょっと街並みから外れるとあちこちでカンガルーが跳ねているほど自然が近い街でもあります。シドニーやメルボルンに比べて、少々眠たそうなイメージを持つ人も多いかもしれません。しかし、キャンベラには、オーストラリアの食とワインの文化が楽しめる隠れ家的なスポットが、実はたくさんあるのです。

キャンベラ・ディストリクト

キャンベラ周辺のワイン産地のことを、正式には「キャンベラ・ディストリクト(Canberra District)」と呼びます。キャンベラ市自体はACT、つまりオーストラリア首都特別地域に属していますが、キャンベラ・ディストリクトのワイナリーの多くは、ニュー・サウス・ウェールズ州内の区域であるヤズ(Yass)、レイク・ジョージ(Lake George)、コレクター(Collector)、マランべイトマン(Murrumbateman)などにあり、実はACT内にある畑やワイナリーは少数です。

「キャンベラ・ディストリクト」とは、ACTと、これらのニュー・サウス・ウェールズ州内のワイナリーや畑のある地域を総括した名称です。

キャンベラ・ディストリクトには約40ほどのワイナリーがあり、そのほとんどが小規模生産者です。全てキャンベラ市内から車で35分程度の近距離内にあり、地元の人びとはもちろん、観光客が気軽にセラー・ドアを訪れ、ワインの試飲や購入をすることができます。

気候と地形

内陸のキャンベラ・ディストリクトの気候は、年間、そして昼夜の気温差の激しい、極端な大陸性気候です。夏場、日中は暑く乾燥し、夜間には急激に気温が下がり、ブドウの樹に休息の間を与えます。冬には、時には氷点下まで気温が下がる、厳しい寒さが待っています。また、産地内には500mから800mと大きな標高差があり、更に異なる土壌や気候の組み合わせが加わるため、それぞれの場所に、最も適したブドウ品種を選ぶことが重要となります。

気温差や標高差、土壌など多様な条件があるキャンベラ・ディストリクトでは、場所に最も適したブドウ品種の選定が重要になる(ⓒHelm Wines)
気温差や標高差、土壌など多様な条件があるキャンベラ・ディストリクトでは、場所に最も適したブドウ品種の選定が重要になる(ⓒHelm Wines)

歴史と生産者たち

そんなキャンベラ・ディストリクトでワイン造りが始まったのは、1971年のことで、オーストラリアの中では比較的まだ「新しい」ワイン産地です。科学研究者であったエドガー・リーク博士が、この土地にプレミアム・ワインのポテンシャルを見出し、ワイン用のブドウを植えたのが始まりです。その後リーク博士に続き、幾つものワイナリーが設立されました。ジョン・カーク氏のクロナキラ(Clonakilla)、ジュディス&ケン・ヘルム夫妻によるヘルム・ワイン(Helm)、スー&デイブ・カーペンター夫妻によるバイオダイナミック・ワイナリーであるラーク・ヒル(Lark Hill)。彼らは現在も、キャンベラ・ディストリクトを代表するワイン・メーカーです。

リースリング、シラーズ、オルタナティブ品種も

キャンベラで生育されている品種は多数ありますが、中でも特筆すべき品種として、ここではリースリングとシラーズ、そしてヴィオニエを挙げたいと思います。

リースリングは前述したヘルム・ワインのケン・ヘルムが、創設から情熱を注ぎ続けた品種であり、キャンベラ・ディストリクトで最も広く植えられている白ブドウ品種でもあります。キリリとした極辛口のリースリングが主流ですが、最近では「オフ・ドライ」と呼ばれるやや甘さを残したスタイルも人気です。

シラーズは、冷涼気候らしいエレガントで白コショウのようなスパイス感のあるスタイルの物が造られています。そしてキャンベラのシラーズと言えば、「シラーズ・ヴィオニエ」です。オーストラリアで最初に黒ブドウであるシラーズに、白ブドウであるヴィオニエの混醸に成功したのは、前述したクロナキラの創設者ジョン・カークの息子、ティム・カークです。これは、フランスの北ローヌ地方にあるコート・ロティの赤ワインに倣ったもので、濃厚なシラーズにヴィオニエの華やかなフローラルな香りと軽やかさが加わり、絶妙なバランスの赤ワインとなります。

また、キャンベラ・ディストリクトでも、他の多くの生産地と同様に、イタリア品種のサンジョヴェーゼ、スペイン品種のテンプラニーリョ、オーストリア品種のグリューナー・フェルトリナーなど、いわゆる「オルタナティブ品種」の生産も広まっています。オーストラリアの食文化を、より一層楽しく豊かにしてくれるワインの生産は、キャンベラ・ディストリクトにも確実に存在しています。

*今月のお薦めワイン*
首都周辺のワイン

程良く上品な甘さが魅力

Helm Half Dry Riesling 2017/$30
Web: www.helmwines.com.au
パパイヤ・サラダ、生春巻き、キムチ鍋などと

オーストリアの主力品種

Lark Hill Gruner Veltliner/$45
Web: larkhill.wine
ロースト・ポーク、エビの天ぷらなどと

ひと味違ったシラーズ・ブレンドを

Clonakilla Shiraz Viognier/$100
Web: www.clonakilla.com.au
ラム・チョップ、フィレ・ステーキなどと


フロスト結子
日本人としての合格者はまだ少ないワインの国際資格WSET® Diplomain Wine & Spirits及び日本酒のAdvanced Certificateを取得。日本でワイン関連商社の貿易業務に携わった後、2009年オーストラリア人の夫との結婚を機にシドニーへ移住。現在はオーストラリア国内大手オークション会社であるGraysOnlineのワイン部門でアシスタント・バイヤーとして勤務する傍ら、フリーランスとしてライティング、ワイン関連の翻訳、市場調査などで精力的に活動中。ワインのコメントは「とにかくおいしそうに書く」がモットー。
Web: auswines.blog.jp

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