【医療特集2016①】基本からわかる オーストラリアの医療制度

オーストラリアの医療制度は日本と違う。病院のかかり方も日本とは異なるため、とまどうことも多い。本特集では、日本とオーストラリアの医療システムの違いから、病院にかかる前に日頃から検診や予防医療をどうすればいいのかなどを、専門家のアドバイスを交えながら解説する。併せて、日本人が安心して使える医療・健康機関やサービスも多数紹介したい。文=空閑睦子

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不調の際はまずはGPへ

日本では、風邪を引いたら内科、耳の調子が悪いなら耳鼻科、ケガをしたら外科といった具合に、症状に合った病院・医院を自分で選んで受診する。しかしオーストラリアでは、体調に異変を感じた場合は、たいてい、まずGP(General Practitioner)と呼ばれる一般開業医を訪れる。ただし日本のように行けばすぐに診てもらえるわけではなく、まずはGPに電話などで予約をすることが必要だ。診察もしくは治療後、必要であれば処方箋を書いてもらい、それを薬局(ChemistあるいはPharmacy)に持って行き薬を買う。GPでは対応できない症状の場合や特別な検査が必要な場合は、専門医(Specialist)への紹介状(Referral letter)をGPに書いてもらい、予約を取って専門医を訪れることになる。

各専門医や検査機関での結果は、すべてGPとも共有されるので、GPは引き続き患者の状態を把握できる。このため、「かかりつけ医」のような感覚で自分が頼れるGPを決めておくといいだろう。

なお、複数のGPで運営している診療機関、メディカル・センター(Medical Centre)は、診療内容は個人営業のGPと基本的には変わらないが、検査設備などが充実している場合もある。深夜まで診察を行っている所や、24時間体制の所もあるので、突然のケガや体調不良に備えて、最寄りのメディカル・センターを確認しておくと安心だ。

医療体制の概要

GPの看板には、GPという文字はない
GPの看板には、GPという文字はない

■GP(General Practitioner、一般開業医)

オーストラリア全国で約3万2,000人(2014年)のGPがいる。GPは、内科、外科、婦人科、小児科、皮膚科、耳鼻科など、さまざまな分野の医療知識を持っており、風邪、湿疹、アトピー、鼻炎、高血圧、軽いケガや骨折、婦人科検診など、歯科以外のほぼすべての分野の病気やケガに関して診察を行うのが普通だ。専門医に行かなくても、GPを訪れるだけで解決することも多い。
 GPを訪れるに当たっては、特に制限はなく、どこのGPを選んでもかまわない。しかし、通勤・通学時の利便性などを考えると、自宅や会社などの近くのGPに行くのが安心だろう。

■専門医(Specialist)

前述したように、GPの診察だけでは無理だと判断された場合、内科、外科、小児科、整形外科、耳鼻科などの専門医に紹介されることになる。
 GPと一緒に、電話やオンラインで予約を入れるのが普通。ただ込み合っている場合が多く、予約が取れるのは最低でも1週間後、場合によっては1カ月以上先になることもあると言われている。ただし、緊急性が高いとGPが判断した場合は、優先的に手配してくれる。

■病院(Hospital)

病院は、公立病院(Public Hospital)と私立病院(Private Hospital)に分けられ、またそれぞれが総合病院と専門病院に分けられる。『Australian Hospital Statistics 2013-14』(Australian Institute of Health and Welfare)によると、オーストラリア全土に公立病院は747施設、私立病院は612施設ある。公立病院は、州政府と連邦政府の資金補助により運営されている。なお私立病院は、さらに営利と非営利の2つのタイプがある。

薬局(Chemist)の看板例
薬局(Chemist)の看板例

■薬局(Chemist)

オーストラリアの薬局は「Chemist」と呼ばれる場合が多い。まれに「Pharmacy」と表示されていることもある。医師からもらう処方箋には、処方薬を指示したものと、一般市販薬を指示したものがあり、処方薬を出してもらう場合には、「Prescription」と掲げられたコーナーに行く。処方箋を必要としない一般市販薬の場合は、どれが何の薬か分かりにくいこともあるので、店員や薬剤師に薬の名前を伝えて場所を教えてもらうのがいいだろう。

医療保険制度について

オーストラリアの医療保険は、市民権保持者や永住権保持者を対象とした、公的医療制度であるメディケア(Medicare)と、市民権保持者、永住権保持者以外の人の医療費や、メディケアがカバーしない範囲の疾病を補うための保険である民間医療保険に分かれ、民間医療保険には、海外からの留学生に加入が義務付けられている留学生用健康保険Overseas Student Health Cover(OSHC)も含まれる。その他日本人が関わる可能性があるものとしては、一時的に滞在する人が加入する海外旅行傷害保険などもある。

メディケア以外の補償内容は、保険会社やプランによって大きく異なるので、必要に合ったものを選ぶことが大切だ。

■メディケア

日本の健康保険に相当するのがメディケアである。オーストラリアは1984年に全国民を対象とした医療保険制度としてメディケアを導入した。連邦政府によって全国一律で運営されている。導入に当たり、連邦政府は州政府とメディケア協定を結んだ。運営するための資金は、4分の3が一般財源、残りの4分の1が国民から徴収する「メディケア税(Medicare Levy)」によって賄われている。また、個人で年間所得が9万ドル以上、家族で18万ドル以上ある高額所得者は、収入に応じて、1パーセント、1.25パーセント、1.5パーセントの上乗せ課税(Medicare Levy Surcharge)が発生する。

メディケアを意味するものとして、しばしば「Health Insurance」という言い方も用いられる。メディケア加入はオーストラリア市民権を持つ者、外国人であってもオーストラリアで永住権を持つ者が対象となる。

メディケアは、医師の診察・検査・治療費などをカバーするが、すべての医療費が全額カバーされるわけではない。治療や検査によっては差額の支払いが必要となる。また、歯科治療費や鍼治療、メガネ・コンタクトレンズ、救急車、カイロプラクティックなど、適用外も多い。

■医療制度の枠組み

オーストラリアの医療制度に関わる主な機関は、保健・高齢化省(Department of Health and Aged Care)、健康福祉研究所(Australian Institute of Health and Welfare: AIHW)、オーストラリア政府間評議会(Council of Australian Government: COAG)、退役軍人省(Department of Veterans’ Affairs: DVA)、州政府・自治体、民間医療サービス提供者、州政府医療サービス提供者、民間保険会社である。

メディケアを管轄しているのは保健・高齢化省である。健康福祉研究所は、87年に設立された法定機関。健康・福祉分野におけるサポートを役割としている。92年設立のオーストラリア政府間評議会は、医療分野だけでなく連邦政府と州政府間におけるさまざまな事案の最高決定機関と位置付けられている。

■在住者別保険加入例

加入者 利用できる保険 内容その他
市民権・永住権保持者 メディケア 民間の医療保険 メディケアは、GPや専門医などの医療負担をカバー。加えて自分で保障内容を組み立てられる民間の医療保険に加入する人が大半。
永住権を持たない
長期滞在者
民間の医療保険 保障内容は自分で組み立てられる。
学生ビザを持つ留学生 OSHC(留学生用健康保険) 家族を連れての留学生にファミリー・サービスなどもある。
短期間海外に
一時滞在する日本人
海外旅行傷害保険 日本を出発前に加入することが必要。24時間日本語で応対してくれるサービスなどもある。保険会社によってサービス内容は異なる。

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