【医療特集2017】気になる「現代病」について知ろう!

現代の都市化・産業化した環境や生活様式、そしてそれらによって生じるストレスなどに起因する、さまざまな現代病。歯周病、乳がん、顎関節症、うつ病など、病名は知っていても症状については詳しく知らないという人も多いのでは。今回は、代表的な4つの現代病について、各分野の専門家が病気の原因や初期段階での自覚症状、治療法や予防法などを解説する。日々のセルフ・ケアや受診の目安としてぜひ役立てて欲しい。また、診療や検査で頼れる医療機関ガイドも掲載。いざという時のためにチェックしておこう。

現代病「乳がん、歯周病、顎関節症、うつ病」とは? シドニー「歯科医」ディレクトリー
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乳がん

年齢、家族歴、乳腺密度などがリスクに

乳がんとは?

体に発生した異常な細胞(突然変異)は悪性、または腫瘍(しゅよう)である場合があり、腫瘍はがんを引き起こすと判断される。これが乳房に現れたものを乳がんという。腫瘍は触った時にしこりとなって現れる。しかし全てのしこりががんを引き起こすわけではなく、周囲組織を取り除くことなくしこりの部位の細胞を抑制することができる場合、これらのしこり、または腫瘍は良性である。これは若い女性においてよく見られ、良性の乳房のしこりの例として線維腺腫や乳房のう胞がある。

女性の乳がん発生において、最も大きな危険因子は「年齢」。40歳以下の若い女性における乳がんは比較的少なく、しこりや乳房の痛みなどの異状が無視されることもある。ただ、若い女性の乳房の組織は密集しているため、通常のスクリーニング(健康診断)でのマンモグラム(乳房のレントゲン検査)では異常が検知されないことも。通常の場合、若い女性は年を重ねている女性よりも乳がんの進行性が高く、がん転移のリスクもより高い。年を重ねている女性が乳がんと診断される場合よりも、がんの再発、またはこの病気により命を落とすリスクも大きい上、激しい治療が行われることになり、若い女性の将来や生活の質に影響を及ぼす。

家族で乳がんにかかった人がおらず、寿命を85歳とした場合、人生において乳がんにかかるリスクは40人に1人、もしくは約2.5パーセントとなる。

自覚症状の有無

早期発見により生存率が上がるため、日頃から自身の乳房への意識を高め、通常の感触や見た感じに慣れておくことが推奨される。何かおかしいと感じた際にはマンモグラムや超音波検査などの画像検査を受けるために医師の診察を受けよう。診断を確定するために、生体検査(病気の診断のために生体の組織片を取って顕微鏡などで調べる検査)が必要となることもある。

乳がんの症状は、しこり、皮膚の色や感触の変化、乳頭の変形や湿疹、乳頭からの透明もしくは血液を含んだ分泌液、乳房の一定箇所における皮膚の陥没が挙げられる。

乳がんの再発でもある転移性乳がんは、元々乳房にできた腫瘍が別の部位に広がった際に起きる。転移はリンパ腺や血流を通して起こり、転移する部位としては、骨、肝臓、肺、そして脳が最も多い。

転移性乳がんの患者の中には、疲れ、体重減少、食欲減退などの症状が現れる人も。肝臓に転移している場合は腹部右上部の痛みがあり、肺に転移している場合は呼吸困難、せき、胸痛があり、脳に転移している場合は頭痛、吐き気、脚の虚脱感が症状として出る。

推奨される検査の方法、頻度

母親や姉妹などに乳がんの家族歴がある場合は、乳がんと診断された人の当時の年齢の10年前から、年に1度定期検査を受けることが推奨されている。また、生理中は乳房に痛みが生じたり、しこりがあるような状態になる場合もあるため、生理の時期を避けて検査を受けることが望ましい。

もし乳房にしこりやその他の症状が見られる場合、マンモグラムや乳房超音波検査といった画像検査を行い、しこりが硬いものであるか、水分が入っているかなど、しこりの状態を調べる。MRI(磁気共鳴画像)検査は、磁場を利用して画像を撮影する検査。

触診や画像検査で懸念される部分が発見された場合、その部分の組織を除去し、生検が行われる。採取された組織は顕微鏡で調べられ、がん細胞があるかどうか、ある場合はどのタイプのがん細胞であるかが決定される。

乳がんは現代社会において頻繁に見受けられるがんの1つであり、早期発見、そして管理、治療を行うことが可能な病気。技術の進歩により完治率も高くなっている。乳房に関する認識を深め、気になることやしこりがある際は医師の診察を受け経過観察を行うことで、乳がんのリスクを低下させることができる。

治療の方法、タイミング

乳がんの治療は、乳がんのステージ(病期)によって異なる。第1ステージは乳房にしこりがある状態、第2ステージは腋窩(えきか)(脇の下)リンパ節にがんがある状態が含まれ、第3ステージは乳房を越えてその他の臓器にがんが転移している状態、そして第4ステージは広範囲に転移している状態を指す。

主な治療法は外科手術だが、微視的な細胞は除去できないため、手術に加えて放射線療法が用いられることがある。がんが転移している場合、化学療法で異常な細胞を殺すことになるが、この療法は健康な細胞にとっても毒性がある。また、治療後は処方薬によってがんの再発を予防する。

生活習慣を見直す

乳がんの数ある危険因子の中でも、主なリスクは年齢だ。年齢を重ねている女性のリスクは高く、一方若い年齢で授乳する母親の乳がんのリスクは低い。家族歴もリスクとなる他、最近では、乳腺濃度が高いこともリスクになることが判明している。

これらの危険因子は変えることができないが、健康なライフスタイルを保つことによって乳がんの30パーセントは予防できると言われている。そのために、アルコール摂取はグラス2杯以下に控えることが推奨される。そして喫煙や肥満は乳がんも含め多くのがんのリスクを高めるので注意したい。毎日の運動もとても大切だ。

協力=ソフィー・ヴァヴラデリス先生
(オブザベトリー タワー・メディカル・センター)

プロフィル◎シドニー大学卒業。GPとして20年以上の経験を持つ。シドニーを拠点に診療を続けており、特に女性の健康分野に注力している。写真は通訳の福森さん(右)と。

オーストラリアの保険制度

オーストラリアで使われる医療保険には、主に次の4種類が挙げられる。

① 市民権・永住権保持者を対象とした、メディケアと呼ばれる国民保険

② 移住者、またはメディケアでは補償されない内容を求める永住者、市民権保持者が加入する民間医療保険

③ 海外からの留学生に加入が義務付けられるOverseas Student Health Cover(OSHC)

④ 一時的に滞在する人が使用する海外旅行傷害保険

メディケア以外は、どれも保険会社やプランによって補償内容が大きく異なるので、自分の体と相談して、必要にあった補償内容を選ぶことが大切だ。頻繁に利用するものは補償額の上限を高めに設定するなど、内容を見極めて賢く利用しよう。

歯周病

歯磨きでの出血や歯茎の腫れは要注意

歯周病とは?

現代人の生活の中には、歯周病が増加するたくさんの要因が潜んでいる。不衛生な口内環境、ストレス、糖尿病、喫煙、栄養状態、誤った歯科治療、免疫不全、膠原病(結合組織病)などだ。

特に不衛生な口内環境を放置していたり、定期的に歯科医院でのクリーニングを受けずにいると、歯石や歯茎の虫歯菌の増加を引き起こしやすくなり、歯茎と骨の炎症が起きれば歯を支える骨は気付かないうちに後退していく。早い段階でこれに気付くことは難しく、もし適切な治療をしていなければ連続的な骨量の減少は歯のグラつきや噛み合わせの変化の原因になってしまう。

もし歯の痛みを感じるようになってきたら、それは既に歯周病の後期の症状。最近の研究では歯周病菌は心臓病や心臓発作の原因にもなることが明らかになっている。

自覚症状の有無

歯周病の初期段階では、歯を磨くたびに出血があったり、歯茎の赤みや腫れ、知覚過敏、口臭などの症状が出る。更に症状が悪化すると歯茎が下がり、歯の根元がよく見えるようになってきてしまう。これを放っておくと歯がグラグラしたり抜けてしまうことになる。

推奨される検査の方法、頻度

歯周病を防ぐためには6カ月ごとの検診とクリーニングが重要だ。歯科医院に行き口内全ての骨の状態をチェックしてもらい、もしこれまでに口腔レントゲンや歯周病検査をしたことがなければ医師に相談しよう。もし6カ月ごとに歯科医院で歯のクリーニングを実施していれば、医師が歯茎の健康状態を確認し、歯肉疾患を防ぐために何ができるかを指導してくれる。

治療の方法、タイミング

もし歯周病にかかっていることに気付いたら、治療を受けるのに遅すぎるということはない。通常、治療の最初は非外科的なディープ・クリーニングを行う。

しかし口内の衛生状態を保つためには自分でも歯間ブラシやフロス、歯ブラシを使ってしっかりクリーニングをする必要がある。その後3カ月たったら再び歯科医院を訪れ骨と歯茎の健康状態をチェックし、歯茎の状態が安定していたら、あとは再び6カ月ごとの検診とクリーニングに戻して問題ない。

ただし、口内の衛生状態は良好でも歯茎の状態がまだ良くない場合は、口腔外科のクリーニングを検討する必要も。もし歯が抜け落ちてしまった場合は元に戻すことはできないが、ある特定のタイプの顎の骨の欠損については外科的な骨移植処置によって治せるケースもある。

生活習慣を見直す

口内衛生を保つために、ただ歯を磨くだけでなく「歯と歯の間」を日々しっかりきれいにすることが望ましい。半年ごとの歯科検診と歯石を取ることも忘れずに。たばこを吸わないことや、糖尿病や歯周病に関連した医療的なリスク要因を管理しておくことも大切だ。

協力=クライン・チェン先生
(Kファミリー・デンタル)

プロフィール◎メルボルン大学歯科博士号取得。Australian Society of Endodontology、Australian Prosthodontic Society所属。Australian Dental Association、International Team of Implantology、 Progressive Orthodontic Seminar、Brener Implant Institute会員。

顎関節症

顎に違和感を感じたらまずセルフ・チェック

顎関節症とは?

ストレスの多い社会において、知らない間に歯を食い縛っていることが増えている現代人。本来であれば、上と下の歯が噛み合っている時間は1日のうち3回の食事の時間を含めて15分ほどと言われているが、食い縛る時間が増えることは顎の関節内にとても大きな圧力をかけ、それにより脱臼したり、関節内組織が炎症を起こしたりする。放っておくと、あることが引き金になり、口を開けられない、閉じられないという状態になる。また、痛みもあり、顔面の痛みは手足の痛みなどと比べ、とても不愉快なもの。ひどい場合は変形性関節炎になり、咀嚼(そしゃく)や発声にも痛みを伴い、日常生活に不都合が生じる。

自覚症状の有無


顎関節症は人により、さまざまな症状がある。初期症状としては頬が張る、大きく口を開けると小さくカクっと音が鳴るなど。

症状が進むと顎の不快感、痛み、口を開けると音が鳴る、下顎をまっすぐに下ろせない、口を開けられないもしくは閉じられない、頭痛、耳鳴り、耳が詰まったように感じるなどの症状が出る。

また、顔面にけがをしたことがある人、歯ぎしりをする人、長期間の歯の治療や複雑な抜歯および歯列矯正をしたことがある人は、数年以内に顎関節症になる可能性が他の人より高くなる。

推奨される検査の方法、頻度

自分で簡単にチェックを行うことができる。まず両耳の穴の前に人差し指と中指を添えて、口をゆっくり大きく開け閉めをする。この時、開閉時に音が鳴る、ガクッと感じる、左右が同時に同じ動きをしない、数回繰り返すと顎に痛みが出るという場合は、顎関節に何らかの不具合があると思われる。

顎関節症は顎に違和感を覚えてから痛みが出るまで、長い人では10数年隔てることもある。ハンバーガーを食べようと大きな口を開けた瞬間に口が閉じられなくなることも。

治療の方法、タイミング

顎に違和感を感じたら早めに専門の治療を受けることが大切だ。顎関節は上下、左右、前後と複雑な動きをする関節であり、なおかつ左右の関節の動きがシンクロしていないと違和感を感じる。治療ではまず何が原因かを探り、顎、頬、首を中心に筋肉や靭帯、関節包の硬直をほぐす。完治を目指すためには、顎の動きを良くするためのストレッチが最も効果的。治療は左右のバランスを保ちながら行うことが非常に重要だ。

生活習慣を見直す

普段口を閉じている時、上下の歯の間に軽く隙間を作ることを意識しよう。そして、舌は上顎の少しザラザラしたところ(Lの発音の舌の位置より少し引いた位置)にあるのが理想的。上下の歯が常時噛み合わさっていないだけでも顎にかかる負担は大幅に軽減されるので、日頃から気を付けておきたい。

協力=奥谷匡弘先生
(メトロ・フィジオセラピー・アンド・インジュリー・クリニック)

プロフィル◎総合病院での勤務を経てシドニーでフィジオセラピー・クリニックを開院。主に筋肉や関節など、筋骨格系の疾患を治療。顎関節症に関しては豪州と日本で理学療法士に対して講習を行う。

うつ病

気分の変調や「やる気」の無さが続いたら

うつ病とは?


気分の落ち込み、やる気の無さや無気力、集中力・判断力の低下などを症状とする気分の障害。不眠や食欲の低下による体重減少もよく起こる。このような状態は、ショックなことがあった時やストレスがある環境下にいる時にも起こり、「抑うつ状態」と呼ばれる。死別や大事な対象を失ったグリーフ(悲嘆状態)の時にも起こる。

こうした抑うつ状態がほぼ1日中、毎日、2週間以上続き、日常生活機能の多大な障害を起こしており、外的ストレスによる一時的な反応(適応障害)やグリーフではない場合、「うつ病」と呼ばれる。

自覚症状の有無

気分が落ち込む、やる気が出ない、文字を読んだり映像を見たりしても頭に入らないなどの症状が現れる。

また、疲れやすく、朝起きてもすっきりせず、起きにくかったり、普段は楽しめていた仕事や活動が楽しめなくなる、不眠や食欲の低下により体重が落ちてくる、不意に涙が出る、性欲が減退することなども。自分は価値が無い、人生には生きる意味が無いと思うことなども症状の1つ。

推奨される検査の方法、頻度

気分の変調ややる気の無さが一定期間続いていると感じたら、まずGPの診察を受けよう。問診や質問紙でうつ状態があると診断されれば、投薬治療を受けたり、サイコロジストを紹介されカウンセリングを受ける。気分を測る質問紙でよく使われるのはDASS-21(D項目)やBDI-IIなど。インターネットでこれらを検索し、自分でやってみるのも1つの参考にはなる。

現在、うつ病についてはMRI、血液検査、脳画像での診断が研究中であり、他の精神障害との鑑別診断のために「光トポグラフィー検査」という検査が行われることがあるが、まだあまり身近ではない。

治療の方法、タイミング

うつの治療法は「薬物療法(必要なら)」「ストレスのある現実の調整」「カウンセリング・心理療法」の三本柱。抗うつ剤はGPでも処方してもらうことができ、軽症なら副作用が少なく依存性も無い新型抗うつ剤SSRI、SNRI、NaSSAが出ることが多い。

更に詳しい鑑別診断や薬剤の見立てが必要な場合は精神科医を訪れよう。ストレスの原因になっている環境そのものを極力調整(例:上司と話し合う、仕事を休むなど)し、サイコロジストの心理療法を受ける。「うつ病に対する心理教育」「ストレス・マネジメント」「認知行動療法」「対人関係療法」「マインドフルネスとACT」「分析的療法」などの療法が、問題の成り立ちに応じて行われる。

生活習慣を見直す

コンスタントに週2~3回、1回45分~1時間の有酸素運動をすることが非常に効果的。ジムに行かない人や走ることができない人も、腕を振ってパワー・ウォーキングをしよう。睡眠時間を十分に取り日光を浴びることも重要だ。

また物事に対する認知の仕方を、悲観的ではないポジティブなものに変えよう。マインドフルネスの瞑想(めいそう)や「今ここにいる」という心の持ち方を維持するテクニックを身に付け、心の中の考えごとにばかり浸らず現実的になるよう心掛けたい。

認知行動療法やマインドフルネスに関する読書の他、ウェブサイトやスマートフォンのアプリケーションでの学習と実践も役に立つ。加えて、夜寝る前に「その日にあった良いこと3つ」を紙に書き出す習慣を付けてみよう。

協力=やのしおり先生
(シドニーこころクリニック)

プロフィル◎日本の臨床心理士資格と日本でのカウンセリング経験、オーストラリアのサイコロジスト資格を持ち、2000年にシドニーでカウンセリング・クリニックを開業。ワーホリや留学生、永住者など全ての日系人の保険カバーでのカウンセリングを手掛ける。


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