フィジオセラピストに聞こう!/痛みは脳が認識する?!

”フィジオセラピストに聞こう!体の痛み改善法”

▶▶▶フィジオセラピストは、筋肉や関節の痛みや機能障害、神経系機能障害や呼吸器系疾患などの治療やリハビリを行う専門家で、必要に応じてMRIや専門医を紹介し、包括的な治療を行っている。さまざまな体の機能を知り尽くした奥谷先生に、体の痛みの原因や改善法について聞いてみよう!


第60回 痛みは脳が認識する?!

私たちフィジオセラピストは日々患者さん1人ひとりの痛みと向き合い、寄り添って根治を目指しています。ところで、痛みとは一体何なのでしょうか。痛みの強弱や感じる期間、痛みとの向き合い方は人それぞれです。今回は多くの人が悩みを抱える「痛み」について、お話したいと思います。

痛みは主観的
 痛みはとても主観的なものです。医師に「痛みの度合いは0~10のどれか」と聞かれた時、それを決めるのは自分の脳です。我々が感じる痛みは脳が作り出すパーセプション(認識・感じ方)に由来します。トリックアートは脳の思い込みや認識のずれを利用して錯覚を生み出す技法ですが、痛みも同様に「脳がどのように認識するか」に左右されるのです。

『知らぬが仏』気付くと痛い
 真っ暗闇で画鋲を踏んだとします。最初は足の裏に何か触れたと感じ、数秒後に痛くなり、明かりをつけて足の裏に画鋲が刺さっているのを見た瞬間に痛みが爆発的に増す、と言われています。生死に関わる問題ではないのに、画鋲が刺さった足の裏を見た瞬間、脳の中で痛みの信号の優先順位が突如上がり、痛みが増幅するのです。痛みは脳の制御下にある自己防御システムですが、身体組織の損傷の度合いを示すものではないのです。

急性期と慢性期
 急性期には身体に物理的な損傷があり、炎症も起きて痛みを感じます。炎症も痛みも落ち着くべき3カ月を過ぎても痛みがある場合、医学的には慢性痛と認識します。慢性痛の場合、脳が痛みに過敏になり痛みの信号をうまく遮断できない状態(中枢感作)になります。痛みの個所もはっきりとせず、ぼやけて広範囲に感じることがあります。
 腰痛のためMRIスキャンを撮るとヘルニアが見つかり、椎間板ヘルニアだと診断されることがあります。しかし、30歳以上の健常者もスキャンを撮るとヘルニアが見つかるケースも多く、それ自体はいたって普通の加齢現象です。この場合、椎間板ヘルニアの手術をしたからといって腰痛が改善される保証はありません。

慢性的な痛みには以下の3つを組み合わせて治療を進めていきます。

1.段階的な運動療法により筋力を強化し、機能改善を図る(着座可能時間を伸ばすなど)

2.感覚神経のリハビリ(痛む個所や触感などを正確に把握する訓練)

3.認知行動療法(受け取り方や考え方に働きかける)

慢性的な痛みに対する診断、治療法は日に日に進歩しています。治療の過程を信頼し積極的に取り組めば、その痛みと決別できる日はきっと来るでしょう。


奥谷匡弘(おくたに・ただひろ)

シドニー大学理学療法学科卒業後、西オーストラリア大学で理学療法修士号取得。ダーリングハーストのセント・ヴィンセント病院で5年間勤務し、プライベート・クリニックでは財界の著名人などの治療に多く携わる。オーストラリア・フィジオセラピー協会公認筋骨格系理学療法士。
Web: www.metrophysiotherapy.com.au

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