フィジオセラピストに聞こう!/体は日常に順応する

”フィジオセラピストに聞こう!体の痛み改善法”

▶▶▶フィジオセラピストは、筋肉や関節の痛みや機能障害、神経系機能障害や呼吸器系疾患などの治療やリハビリを行う専門家で、必要に応じてMRIや専門医を紹介し、包括的な治療を行っている。さまざまな体の機能を知り尽くした奥谷先生に、体の痛みの原因や改善法について聞いてみよう!


第62回 体は日常に順応する

出典:山形県酒田観光物産協会
出典:山形県酒田観光物産協会

写真にあるのは、世界でも有名な日本のドラマ『おしん』の舞台となった山形県酒田市の女丁持(おんなちょうも)ちの作業風景です。一昔前、米どころの山形では女性が1俵60キロの米俵を担いで運ぶことは日常の1コマだったようです。

ところで、この時代の女性たちは腰痛や肩こりといった症状に悩まされなかったのでしょうか?

おそらく、彼女たちの腰痛や肩こりの発症率は、デスク・ワークをしている現代の私たちの発症率とそれほど変わらないのではないかと思います。それは、体は毎日行う作業に順応するという特性があり、作業負荷に応じて筋肉、腱、そして骨まで強くなるからです。60キロの米俵を背負うことは、当時の女性の体でも十分に順応できる範囲内の労働だったと考えることができます。

デスク・ワークによる体への負荷

一方で、デスク・ワークで必要となる身体機能は、せいぜい1日7~9時間の勤務時間中に頭(約7~8キロ)と両腕(約8キロ)を支えることです。体が習慣に順応するのなら、デスク・ワークは米俵を運ぶほど重労働ではないため、腰痛などに悩まされなくても良さそうなものです。しかし、デスク・ワークでは体に負荷はかからずとも、体がエネルギーを必要としないために代謝が悪くなるという悪影響があります。低い代謝レベルで長い時間を過ごすと、体はその状況に順応し身体機能の低下につながります。デスク・ワークで肩こりや頭痛に悩まされるのは、ゆっくり時間をかけ全身の機能が首や両腕を支えきれないほど弱まったからです。例えば、腰痛は立っている時よりも6倍もの負荷を絶えずかけられ続けた結果です。

私たちの生活は技術革新により日々便利になっていきます。それと反比例するように、人間は体を使う機会を失い体力も持久力も弱まっていくようです。エレベーターでなく階段を使う、ロボット掃除機でなく床拭き掃除をするようにする。あえて不便な方を選択することは体にとって悪くないのかもしれません。


奥谷匡弘(おくたに・ただひろ)

シドニー大学理学療法学科卒業後、西オーストラリア大学で理学療法修士号取得。ダーリングハーストのセント・ヴィンセント病院で5年間勤務し、プライベート・クリニックでは財界の著名人などの治療に多く携わる。オーストラリア・フィジオセラピー協会公認筋骨格系理学療法士。
Web: www.metrophysiotherapy.com.au

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