フィジオセラピストに聞こう!/腰痛の画像診断の有用性

”フィジオセラピストに聞こう!体の痛み改善法”

▶▶▶フィジオセラピストは、筋肉や関節の痛みや機能障害、神経系機能障害や呼吸器系疾患などの治療やリハビリを行う専門家で、必要に応じてMRIや専門医を紹介し、包括的な治療を行っている。さまざまな体の機能を知り尽くした奥谷先生に、体の痛みの原因や改善法について聞いてみよう!


第63回 腰痛の画像診断の有用性

ヴィルヘルム・レントゲンが放射線を発見し、1901年に第1回ノーベル物理学賞を受賞して100年以上が経ちました。その間レントゲン、CTスキャンやMRIなど、医療における画像診断は凄まじい発展を遂げています。ただ、疾病やけがの見落としを防止する目的もありますが、特に日本では点数制の医療保険制度のため、安易に画像検査を指示されるケースもあるようです。レントゲンやCTスキャンは撮影時に放射線を浴び、MRIの受診は高額です。

撮れば何か見つかる?

腰痛になったことがなくても、30歳以上であればMRIによりほとんどの人にヘルニアが見つかると言われています。
 2013年のオレゴンヘルス&サイエンス大学発表の研究では、MRIの結果を知らされなかったグループの方が、腰痛の改善が早かったそうです。例えばヘルニアが見つかったとして、それが本来の痛みの原因でなくても「ヘルニアがある」という事実に注目し痛みに過敏になりやすくなるからです。更に同研究では、結果を知らされた方が、手術を受ける割合が高かったといいます。もちろん手術が必要な場合もありますが、外科的手法で痛みを取り除けると安易に考えるからかもしれません。

痛みはどこから?

腰痛の場合、痛みは腰椎の関節、靭帯、筋肉、神経の炎症などが原因であることが多く、必ずしもスキャンには写りません。正確な診断には医師やフィジオセラピストの綿密な問診と診察が重要です。薬物乱用歴、ガンといった病歴、原因不明の熱、急激な体重減少などがなければ画像診断は必要ないと判断できます。逆に、治療にもかかわらず症状が悪化している場合、画像診断は有用です。

レントゲンで受ける放射線量

放射線診療の照射条件は国際放射線防護委員会がガイドラインを定めており、豪州ではそれを参照に独自のガイドラインを設定しています。腰椎レントゲンでは胸部レントゲンと比較すると65倍の放射線を浴びます。脊椎CTスキャンでは300倍になります。腰椎レントゲンは1回の撮影で、私たちが普段1日に浴びている放射線量の158日分、脊椎CTスキャンでは720日分の放射線を浴びる計算です。
 また画像診断の結果と症状は、必ずしも合致するわけではありません。そして、画像診断の結果によって治療方針が変わることはほとんどありません。放射線を浴びるリスク、不必要な手術に至るリスク、費用対効果を考慮し、安易に画像診療を受けるのではなく、その有用性は慎重に考える必要があります。


奥谷匡弘(おくたに・ただひろ)

シドニー大学理学療法学科卒業後、西オーストラリア大学で理学療法修士号取得。ダーリングハーストのセント・ヴィンセント病院で5年間勤務し、プライベート・クリニックでは財界の著名人などの治療に多く携わる。オーストラリア・フィジオセラピー協会公認筋骨格系理学療法士。
Web: www.metrophysiotherapy.com.au

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