フィジオセラピストに聞こう!/前立腺がんと運動による予防~前編

フィジオセラピストに聞こう 体の痛み改善法

▶▶▶フィジオセラピストは、筋肉や関節の痛みや機能障害、神経系機能障害や呼吸器系疾患などの治療やリハビリを行う専門家で、必要に応じてMRIや専門医を紹介し、包括的な治療を行っている。さまざまな体の機能を知り尽くした奥谷先生に、体の痛みの原因や改善法について聞いてみよう!

第94回 前立腺がんと運動による予防~前編

前立腺がんは、オーストラリアにいる男性の最も発症率が高いがんと言われています。日本人男性では胃、大腸、肺に続き第4位の罹患(りかん)数となっています。オーストラリアでは毎年約2万人が新たに前立腺がんと診断され、約3,300人が命を失っています。

術後の尿失禁と性機能不全

前立腺がんの基本的な治療法は手術による除去術です。その副作用として尿失禁や、勃起障害(ED)などの性機能不全を発症することがあります。どちらも術後の筋肉の弱化が原因の場合が多いため、筋トレなどのリハビリが有効です。特に尿失禁には骨盤底筋群のトレーニングが効果的です。運動療法を行う時期は、術前6~8週間前から始めるのが好ましく、術後はカテーテルが抜け次第、早めに始めることが望ましいです。とにかく、術前のハビリテーションは術後の副作用を最小限に抑える効果が認められているので、診断直後から運動療法に取り組むことを強くお勧めします。

その他に、放射線治療が行われることもあります。その副作用は倦怠感・疲労感などです。また、前立腺がんの進行を遅くする目的で男性ホルモンのテストステロンを抑える治療を行うこともありますが、それには多くの副作用が発症します。筋肉と骨の密度低下、体重増加、認識機能障害、心臓疾患の増加、2型糖尿病、そして不安神経症やうつ症状などです。

運動でがん予防

運動療法は前立腺がんを含め、さまざまながんによる体と心の不調に対して予防や改善に有効な手段であると科学的に立証されています。週に合計3時間以上の強度の運動を行うことにより前立腺がんの発症率は70パーセント減少し、前立腺がんに由来した死亡率は49パーセント減少したという研究があります。また、運動と前立腺がんに対する予防効果は男性の年齢が上がるに連れてその効果も高まることが分かりました。これがどういったメカニズムによるものなのかは解明されていませんが、体重を維持し、ストレスや不安感をコントロールし、体の運動機能を高め、免疫力を最適に保つことで可能になる考えられています。

前立腺がんの発症年齢が比較的高い理由は、加齢に伴う筋肉と骨密度の低下により普段の生活や行動が制限され、免疫力が低下しがん発症率を高めているからと言えます。そのため運動により機能低下を予防できれば前立腺がんを含めた多種にわたるがん予防になるということでしょう。

具体的な予防としてどの様な運動をどれくらい行えば良いのかを次号で一緒に考えていきましょう。


奥谷匡弘(おくたに・ただひろ)
シドニー大学理学療法学科卒業後、西オーストラリア大学で理学療法修士号取得。ダーリングハーストのセント・ヴィンセント病院で5年間勤務し、プライベート・クリニックでは財界の著名人などの治療に多く携わる。オーストラリア・フィジオセラピー協会公認筋骨格系理学療法士。
Web: www.metrophysiotherapy.com.au

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