フィジオセラピストに聞こう!/前立腺がんと運動による予防~後編

フィジオセラピストに聞こう 体の痛み改善法

フィジオセラピストは、筋肉や関節の痛みや機能障害、神経系機能障害や呼吸器系疾患などの治療やリハビリを行う専門家で、必要に応じてMRIや専門医を紹介し、包括的な治療を行っている。さまざまな体の機能を知り尽くした奥谷先生に、体の痛みの原因や改善法について聞いてみよう!

第95回 前立腺がんと運動による予防~後編

前立腺がんの摘術時に直腸と尿の流れをコントロールする筋肉(骨盤底筋群)が部分的に摘出されてしまうことや、術後1週間程カテーテルを尿道に挿入していることの影響で、カテーテルを抜いた後に失禁や尿漏れが起こることは一般的なことだと言えます。個人差が大きく、軽度であれば数週間でオムツが取れますが、回復に1年を要する人もいます。特にくしゃみやせきをして腹部に力が入ってしまうと、漏れてしまうことが多いようです。がんの予防及び術後回復期における有酸素運動とウエイト・トレーニング、また骨密度改善のためのジャンプなどの運動療法は既に学術的にも大きな成果があることが立証されています。

今回は前立腺がん特有の運動療法ということで、骨盤底筋郡に絞ったトレーニング法を紹介します。術前6~8週間からトレーニングを開始すると術後の回復もスムーズでしょう。

骨盤底筋郡の位置を確かめる

両手の上に座り、左右の臀(でん)部に骨を感じます。次に前身の恥骨と後身の尾てい骨を感じてください。この4つの骨の間をハンモックのように結んでいる何層にもなった複数の筋肉が骨盤底筋群です。これらが収縮することで膀胱と腸を持ち上げ、肛門周辺ではおならを我慢したり、尿の放出をコントロールすることができます。女性には比較的認知度も高いですが男性は前立腺がんになって初めて知る人も多いようです。

骨盤底筋郡を鍛える

骨盤底筋郡を効率的に鍛える運動を紹介します。下記を1日2~3回行うと良いでしょう。

  1. 足は肩幅に開いて立ち、お腹とお尻をリラックスさせる。
  2. 放尿を止めるように力を入れ骨盤底筋を収縮させる。同時に睾丸を持ち上げ、肛門を閉めるように意識する。
  3. 全ての筋肉を完全にリラックスさせ、お腹が出て、睾丸が下がり、肛門まで力が抜けるように意識する。
  4. 1~3を繰り返し行い、骨盤底筋群以外に力が入っていないことを確認し、お腹は下腹部のみ硬くなるように意識する。骨盤底筋群を正しく使えるようになってきたらキュッと収縮させた状態を5秒間維持し、その後5秒間リラックスさせる。

ポイントは、運動中も呼吸は普通に続けることです。骨盤底筋は動きの少ない筋肉なので大きな動きを期待しないことが大切です。力を入れていても外からはリラックスしているように見えることを意識してください。


奥谷匡弘(おくたに・ただひろ)
シドニー大学理学療法学科卒業後、西オーストラリア大学で理学療法修士号取得。ダーリングハーストのセント・ヴィンセント病院で5年間勤務し、プライベート・クリニックでは財界の著名人などの治療に多く携わる。オーストラリア・フィジオセラピー協会公認筋骨格系理学療法士。
Web: www.metrophysiotherapy.com.au

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