腕のしびれと痛み

ドクター印藤の「ここがツボ」

第32回 腕のしびれと痛み

人の脊椎骨は、頸椎、胸椎、腰椎、仙骨と便宜上分類されています。その数は、7・12・5・1となっています。この中で頸骨の7個というのは、哺乳類においてかなり厳密な遺伝上の決まりがあるようで、種による例外はほとんどありません。キリンはもとより鯨でも胎児の頃は7個です。

このように頸部の機能と構造は、爬虫類〜哺乳類時代の進化初期に固定され、その後は大きく変わることがなかったのです。しかし人類の祖先の生活が、樹上生活から草原での狩猟生活に変わり、頸の機能が大きく変化することになりました。4足歩行から直立2足歩行へと移行したのは、約4〜500万年前と推定されています。

直立歩行の結果、人類は脊椎骨の構造を大きく変更しなければならなくなりました。猿類を見ると、歩行は常に4足で前足(腕)は地面に着いており、腕を空中に置く事は食事や休憩時のみで、重さを自覚することはありません。対照的に人は、常に腕を下げて歩かなければならなくなりました。加えて重い頭を垂直に支える必要ができたため、関節に大きな負担がかかるようになりました。

腕のしびれや痛みは、この直立姿勢と2足歩行にその根源があります。頸骨の圧迫と腕の重さによるストレスが慢性的になり発生する胸郭出口症候群、進化上失ったはずの頸椎横突起が伸びて、頸神経を圧迫する頚肋などです。

実は椅子に長時間座って首をまっすぐに固定し仕事をするのは、人体の構造上相当不自然な姿勢であり、常に緊張を強いられている状態なのです。肩や腕に感じるだるさやしびれ、不快感は、異常を感じる知覚センサーが働いている証拠なので、できるだけ早めに解消する必要があります。なぜならセンサーの感度はそれを放置しておくと鈍ってしまい、症状を進行させてしまう事も非常に多いからです。

このように人体の仕組みは、進化による知能の発達とともに犠牲になっている部分も多く存在します。大切なのはそれに対する正確な理解であり、同時に体への気付きを増すことなのです。

肩井:鎖骨中央部の凹み(欠盆)より直上し、肩上部を押して固く響く所。
斜角:肩井と欠盆の中間位置で、頚の根を押すと響く所。
曲垣(きょくえん):肩甲骨、肩甲棘の起始部の湾曲の止まる所。
神堂:肩甲骨内側骨際の中央(膏肓)より約1.5横指下。
曲池:肘を深く曲げ、肘窩(ちゅうか)横紋の外端を探ると上腕骨の外側上顆を触れ、押すと響く所。
四瀆(しとく):肘頭から約5横指、橈(とう)骨尺骨間の筋溝を押して響く所。
曲沢:肘内側、上腕橈尺骨接合部中央。筋溝を押して響く所。
少海:肘を曲げ、横紋の内端の所。骨と腱の接合部。


印藤裕雄(いんどうひろお)
1991年北里研究所付属東洋医学総合研究所および間中病院東洋医学科を経て開業。2004-08年メルボルンの国立モナシュ大学日本研究センター客員研究員(伝統医療の研究および技術指導)。森ノ宮医療大学講師(東洋医学)。09年茨城県土浦市に、新しい時代ニーズに合った総合的東洋医療を目指し、東洋医療センターを開業。11年から東京での診療活動も開始。日本統合医療学会評議員、全日本鍼灸学会会員など。著書『癒しの芸術と科学‐身体・心・魂の調和』三恵社、『潜在能力の科学』など。コラム・診療についての質問は、facebook:hiroo.indo@facebook.comまたはwww.facebook.com/CentreForEasternMedicineJapanまで。

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