下肢のしびれと歩行困難

ドクター印藤の「ここがツボ」

第34回 下肢のしびれと歩行困難

遺伝学の知見ばかりでなく、最新の考古学の発見からも人間について興味深いことが分かりつつあります。今まで直立歩行の初期人類は、アウストラロピテクス(猿人)という、体格も容貌も猿に近いものでした。しかし、それとは骨格の明らかに異なる人骨が、南アフリカで発見されました。しかも、この約200〜300万年前の人骨は、洞窟の奥でまとまって発見され、墓地に埋葬されていました。彼(彼女)らは、死という抽象概念を理解していたことになります。肉体が滅ぶ死を理解していたということは、葬儀や治療などもしていたことが可能性として考えられ、医療や宗教の文化起源を考える上でも興味が尽きません。

人類は直立歩行によって大脳の進化が促進され、脳機能の外部化による道具の使用から文明を発達させて、種族を繁栄に導いたことは疑いようもありません。ただ、そのことによって、身体の他の部分、特に足腰に対し常に負担のかかる状態になってきた、というのも否定しきれない事実なのです。

脊椎と骨盤が直立になる姿勢によって、腰背部の筋肉痛から始まり、椎間板ヘルニアや変形性脊椎症を経て脊柱管狭窄症へと至る病気の流れはこの典型だといえます。また、体を支える骨(躯幹骨)の完成は10代の終わり頃ですが、最近では既に20代に腰椎変形の認められるケースもあります。

脊椎と骨盤骨を立たせておくために、身体は筋肉で骨をくるむように発達させ、それによって長時間の歩行や姿勢の維持を可能にしました。完全な2足歩行は、今のところ人間だけであり、ほかの霊長類では部分的2足歩行でしかありません。このことは、直立歩行がいかに難しいバランスのもとに成立しているかを示唆しています。この体こそが、さまざまな文化を生み出す源となったものであり、私たちの身には、地球の生命の歴史と智慧が凝縮されている、といっても過言ではないのです。

外部の世界に惑わされず、自らの心を落ち着かせ、体の中の声を静かに聴いていくことも時には必要です。常にそう心がけることによって、より高度な身心の調和を目指せるのです。

【衝門】恥骨結合部より外側4横指。動脈拍動部。
【大腸兪】うつ伏せで腸骨(骨盤)上端を定め、その線と腰椎の交点より外側2横指。
【膀胱兪】うつ伏せで仙骨部の中央から外側約2横指。仙骨外縁の、押すとよく痛む所。
【足三里】膝を立て、脛骨の外側前面を指で押し上げていくと止まる所。強圧すれば響く。
【陽陵泉】下腿部外側、腓骨(ひこつ)頭の突起の前下際。
【委中】膝関節、膝窩の中央、動脈拍動部。
【承山】下腿部後方の正中、腓腹筋の膨らみの下。


印藤裕雄(いんどうひろお)
1991年北里研究所付属東洋医学総合研究所および間中病院東洋医学科を経て開業。2004-08年メルボルンの国立モナシュ大学日本研究センター客員研究員(伝統医療の研究および技術指導)。森ノ宮医療大学講師(東洋医学)。09年茨城県土浦市に、新しい時代ニーズに合った総合的東洋医療を目指し、東洋医療センターを開業。11年から東京での診療活動も開始。日本統合医療学会評議員、全日本鍼灸学会会員など。著書『癒しの芸術と科学‐身体・心・魂の調和』三恵社、『潜在能力の科学』など。コラム・診療についての質問は、facebook:hiroo.indo@facebook.comまたはwww.facebook.com/CentreForEasternMedicineJapanまで。

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る