咽喉の痛み、腫れ

 

第25回 咽喉の痛み、腫れ

伝統医療の東洋医学と現代医療の西洋医学、良く対比されるこの2つの医学ですが、違いはどこにあるのでしょうか。私は、人間観や世界観に最も大きな違いを見ます。

西欧思想はキリスト教中心であり、その根はプラトン哲学です。そこでは、魂(心)は肉体に閉じ込められており、その肉体の死によって初めて天国に返れるとします。精神と体は、全く融け合うことの無い異質な存在であり次元の違うもの、という心身二元論の考え方です。

それに対し東洋世界では、仏教などインド思想や道教が思想哲学を担ってきました。それらによると、宇宙は気(プラーナ)という微細なエネルギーによって一元的に満たされています。そのエネルギーが、運動しつつ生成発展することによって、偏差を生じ、2から5、6(7)から9…と分かれて属性を持つことになります。それら気の寄り集まったものが人間である、という考え方です。

そこでは、心と体を明確に区分することはなく、常にある一定の絶え間ない交流が存在し、お互いに何らかの影響を及ぼし合っています。精神と体を厳しく分断し、医学は体の問題を解決するのみ、としてきた西欧近代医学とは対照的ですが、どちらが優れているという問題では無く、東西の精神風土によって培われてきた違いです。それでも最近、伝統医療に注目の集まる理由は、心が体に及ぼす影響や作用について、長く臨床の知恵が蓄積されてきた結果なのでしょう。

咽喉の痛みや腫れの原因には、さまざまなものがあります。咽頭部は食物や呼吸によって外から侵入し得る細菌ウイルスなどの入り口となっており、ここはリンパ節によって守られています。病原微性物の侵入があると、白血球の防衛反応により急性扁桃炎となり、繰り返されることにより慢性化します。

これを東洋医学では、急性慢性の違い、また原因不明に関わらず1つの病態ととらえ、治癒の方向性を見ていきます。咽喉から四肢へ気の滞りを流すような感覚で、翳風(えいふう)天容、扶突、風池そして手の列缺、尺沢、足の大鍾(だいしょう)とします。

翳風:耳垂と後頭骨の乳様突起との間。口を開けると大きく凹み押すと響く所
天容:側頚部、下顎骨の角よりすぐ後方。胸鎖乳突筋の前縁
扶突:側頚部、喉頭隆起(喉仏)の外側へ3横指。押して痛みを感じる所
風池:後頚部、後頭骨乳様突起の下方、髪際部の陥凹
列缺:前腕前面、腕関節の横紋から1.5横指。動脈外側の凹みを押すと響く所
尺沢:肘関節前面、肘の横紋上を強圧すると痛む所
大鍾:足の内踝の後下方。踵骨の上際とアキレス腱停止部

印藤裕雄(いんどうひろお)
1991年北里研究所付属東洋医学総合研究所および間中病院東洋医学科を経て開業。2004-08年メルボルンの国立モナシュ大学日本研究センター客員研究員(伝統医療の研究および技術指導)。森ノ宮医療大学講師(東洋医学)。09年茨城県土浦市に、新しい時代ニーズに合った総合的東洋医療を目指し、東洋医療センターを開業。11年から東京での診療活動も開始。日本統合医療学会評議員、全日本鍼灸学会会員など。著書『癒しの芸術と科学‐身体・心・魂の調和』三恵社、『潜在能力の科学』など。コラム・診療についての質問は、facebook:hiroo.indo@facebook.comまたはwww.facebook.com/CentreForEasternMedicineJapanまで。

 

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