第2回 継承語教育とは ?

継承日本語教育を考えよう
JCS日本語学校での授業風景

Heritage Language 継承日本語教育を考えよう
第2回継承語教育とは ??

 今回は、「継承語教育」の定義について考えてみたいと思います。まず「継承語」という言葉は、1988年に言語学者の中島和子氏によって“Heritage Language”の日本語訳として発表された比較的新しい用語であり、研究分野です。
「継承語」が生まれた背景には、世界中で移民や難民として、自分たちの母語とは異なる言語が使われている国に暮らす人々が増加していることが深く関連しています。中島氏はカナダの多言語主義という環境で研究をされていますが、私たちが暮らす豪州も国民の多くが継承語を持つ多言語・多文化社会です。ただ、“Heritage Language”が、北米を中心に使用されている用語であるのに対して、豪州では“Community Language”という用語も同じ意味で使われています。
 日本の学校教育で行われているのは「国語教育」です。また、外国語として日本語を学ぶ「日本語教育」という分野もあるのは皆さんもご存知だと思います。「継承日本語教育」は、この2つの中間にあるものと言いたいところなのですが、そう簡単に定義できないのが、「継承語教育」の難しさと言えます。「継承語教育」を「国語教育」や「外国語教育」と比較して考える時に、非常に重要になってくるのが「生活言語」と「学習言語」の違いです。
生活言語
−日常生活で必要なコミュニケーションを取る言葉(話す・聞く力に繋がる)
学習言語
−新しい事柄を学んだり、思考したりする時に使う言葉(読む・書く力に繋がる)

 豪州で育つ私たちの子どもたちの場合、家庭内で家族との会話を日本語で行っていれば、生活言語は日本語であり、学校教育を英語で受け、自分の考えをまとめたり表現したりするのに英語を使用していれば、学習言語は英語ということになります。 
 国語教育は、生活言語としての基礎はあるという原則の下に、学習するための言語力を養うのが目的です。一方、日本語教育は、簡単な挨拶などの生活言語を学ぶところから始まり、文法と語彙の習得が主な課題となります。継承日本語教育では、学習者がどれくらい生活言語として日本語を使っているか、接しているかが非常に重要な素地となります。その上で学習言語としての英語で培った知識をどこまで日本語でも身に着けることができるかが、継承日本語の課題と言えるでしょう。これら言語教育の違いを表にしてみます。

国語教育(日本の場合) 日本語教育 継承日本語教育
生活言語 日本語 他言語 日本語/英語
家族の母語や共通語
学習するきっかけ 居住によって決まり、選択ではない 学習者による選択が多い 親による選択が多い
学習目的 生活し、教科全般を学習するための言語力を養う 学習者による
(趣味、試験科目、職業、旅行など)
学習者の家庭や言語環境によって異なる
(家族・親戚とのコミュニケーションをとる、日系人としてのアイデンティティー形成、現地語習得の土台作りなど)

継承日本語教育を考えよう

JCS教育支援委員会
シドニー日本クラブ(JCS)会長、担当理事、日本語学校代表者により構成され、JCS日本語学校3校の運営支援、継承日本語教育の研究・普及に努めている。日本語スピーチ・コンテストや「継承日本語」に関するワークショップを開催
オークス直美(オークスなおみ)
プロフィル◎2001年よりシドニー在住。2003年よりJCS日本語学校NB校での教師を務める。ルドルフ・シュタイナーの教育理念による幼児教育をシドニーの専門学校で学び、現在、自宅にてシュタイナー思想を取り入れた幼児教室を主宰。JCS教育担当理事

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