Heritage Language 継承日本語教育を考えよう
オーストラリアと日本のしつけ
日本で一般的に奨励される基本的なしつけ と、オーストラリアの学校教育で子どもたちが実 地に身に着けてくる生活態度との間に矛盾を感 じたことはありませんか ? 日本では、主にお行 儀やあいさつの重要性、他人に迷惑をかけない こ と 、謙 譲 の 精 神 、仲 間 と の 和 を 乱 さ ず 協 調 性 を 養 う こ と 、な ど を 基 本 と し て 、子 ど も に し つ け を行います。一方、オーストラリアの学校では、 個性を生かすこと、自己主張をすること、積極性 を養うこと、さらには自分と違う文化背景を持つ 人への寛容性を養うことを主眼にした指導がな されているようです。
集団の中で仲間と仲良く協調しながら、集団 内部の人に対する思いやりやマナー、集団内で の責任感や帰属意識を高めることを目的とした 日 本 の し つ け と 、あ く ま で も 個 人 1 人 ひ と り が 、 1 個 の 人 間 として 独 立 して 積 極 的 に 個 性 を 発 揮 し、その上でほかとの違いを認めながら他人と の協調性を探るオーストラリアのやり方。どちら が 良 い 悪 い で は な く 、そ れ ぞ れ の 歴 史 ・ 社 会 ・ 文 化背景により培われてきたマナーや社会的態度 だと思います。
けれども私たちの子どもたちは、日系である 以 上 、日 本 語 だ け で な く 、親 で あ る 私 た ち を 通 じて日本の文化や社会的な生活態度に触れ、 一 方 で は オ ース ト ラ リ ア の 学 校 や 社 会 を 通 じ て オーストラリアの文化・社会的な生活態度を学 びます。その2つがかなり異なっていることによ り、子どもたち自身が矛盾を感じることもあるで しょう。
例えば、Year 6の私の娘は、日本に行くと祖 父や祖母から、“お行儀が悪い”とか“わがまま” だと思われている部分が自分にあることを敏感 に察知して、やや気にしています。「日本ではお となしくてお行儀の良い子がいいと思われるけ ど、オーストラリアでははっきり自分が思ったこ
とを言う子が先生に褒 められるんだよ」と彼女 は言います。確かにその 通りです。娘は同じよう に振る舞っているだけ なのに、一方では評価 さ れ 、一 方 で は 非 難 さ れ る わ け で す か ら 、彼 女 としては混乱してしまうでしょう。
こ の よ う な 時 は 、や は り 親 と し て き ち ん と 説 明することが必要です。まずは、2つの国の文化 ・社会的な違いによる生活態度の違いを認識で きるようになったその成長を認め、褒めてあげ るべきでしょう。その上で、日本は昔から集団の 中 に 帰 属 し て 、そ の 中 で 協 調 し な が ら 仲 間 と 力 を合わせて共同作業を行う重要性に主眼が置 かれてきた文化・社会的背景があることを説明 し、「日本に行った時、日本語を話す時は、その 文化・社会に合わせて行動できる賢さを身に着 ける」ことを教えてあげましょう。一方、オースト ラリアのように異文化が混ざり合う社会では、 お 互 い の 文 化 を 尊 重 し 協 調 し つ つ も 、個 々 の 個 性を生かし積極的に行動することが大切なの で 、オ ー ス ト ラ リ ア で 生 活 し 英 語 で 話 す 時 は そ の よ う な 態 度 を 身 に 着 け て い くこ と を 奨 励 し ま しょう。
バイリンガルになることはバイカルチュラル に な る こ と で す 。話 す 言 語 に よ っ て 社 会 的 な マ ナーや態度を変化させることも、継承語を学ぶ 私 た ち の 子 ど も た ち が 学 ん で い くべ き 大 切 な こ と の 1 つ で す 。そ し て 言 葉 だ け で な く 、真 に 双 方 の文化を理解し、1つの価値観だけでなくいくつ も の 価 値 観 を 受 け 入 れ る こ と 、つ ま り 異 文 化 に 対 す る 認 容 性 を 養 う こ と は 、子 ど も た ち の 将 来 にとって大きな力になるはずです。
西牟田佳奈(JCS日本語学校ノーザンビーチ校教師)
