まずは、受け取る力を伸ばすことから

Heritage Language  継承日本語教育を考える

 

まずは、受け取る力を伸ばすことから

9月1日に7回目を迎えた「JCS日本語スピーチ・コンテスト」が行われました。毎回のことながら、子どもたちの豊かな感性と日本語学習の成果から生まれる素晴らしいスピーチに感動し、子どもたちの無限の可能性を目の当たりにして、たいへん励まされました。そして当日、スピーチを行った子どもたちが人前で堂々と発表できるようになるまでに多くの学習過程を経たこと、たくさんの人たちとの関わりがあったことを忘れてはならないと改めて思いました。

言語発達、特にコミュニケーション能力の中で、自分が思ったことや考えたことを自由に自分の言葉で話せる産出能力は、受容能力(聞いたり、読んだりして理解する能力)の上に成り立っています。産まれたばかりの赤ん坊が親や周りの人たちからかけられる言葉を常に吸収し、ある日「まんま」など簡単な言葉を発話できるようになる過程と同じです。ですから、自分の言葉でしっかり思っていることを話せるようになるためには、まず周りの人たちの話や、読み聞かせてもらう「お話」などを聞いて理解することが大切な土台となります。

最近、日本国内でもまとまった話が聞けない(集中できない)、聞いたことの要点を理解できない子どもたちが増えているそうです。私の推測ではテレビやネット上で得られる情報が過多で、同時に異なる情報が発信されていることが多いことから、何となく聞いて何となく分かったような感じになることが多いせいではないかと思っています。また親も子どもも何かと忙しいスケジュールの中でじっくり会話をする時間も少なくなっているのではないでしょうか。

先月号の記事でもご紹介しましたが、やはり「子どもと過ごす日常の時間」がとても大切だと思います。子どもを学校に送り迎えする時間、夕食を準備しながら1日のことを話す時間、そして寝る前の読み聞かせの時間など、日本語を使った対話の積み重ねの中で子どもたちは、日本語を聞いて理解する力を養っていきます。

子どもが小学校に上がり、英語で言語活動、特に社会生活を送るようになると英語の語彙や表現力の方が上になり、なかなか返事を日本語で返さないようになるかもしれません。それでも受容能力を飛び越えて、産出能力は育たないということを思い出し、諦めずに日本語での対話や話を聞かせる時間を作り続けてほしいと思います。

週末に家族で出かけたり、一緒に活動をする際は、さまざまな場面と状況で日本語を聞かせる絶好の機会となります。ぜひ親が率先して見たこと、感じたことなどをできるだけ多くの表現や語彙を使って表現してみてください。そういった意味では子どもに接する立場の私たちこそが、海外にいても、日本語の豊かさを常に意識することが大切だと思います。


継承日本語教育を考えよう

JCS教育支援委員会

シドニー日本クラブ(JCS)会長、担当理事、日本語学校代表者により構成され、JCS日本語学校3校の運営支援、継承日本語教育の研究・普及に努めている。日本語スピーチ・コンテストや「継承日本語」に関するワークショップを開催

オークス直美(オークスなおみ)

プロフィル◎2001年よりシドニー在住。2003年よりJCS日本語学校NB校での教師を務める。ルドルフ・シュタイナーの教育理念による幼児教育をシドニーの専門学校で学び、現在、自宅にてシュタイナー思想を取り入れた幼児教室を主宰。JCS教育担当理事

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る