語学教育の中の「劇」の効用

Heritage Language  継承日本語教育を考える

 

語学教育の中の「劇」の効用

平成20年に発表された文部科学省の「教科書の改善・充実に関する調査研究報告書(国語)」によると、国語の教科書に「演劇教材の復活」が提案されています。昭和30年代の教科書には掲載されていたのに、その後の音読から黙読への流れや配当時間数の削減などで、演劇教材は長い間、国語の教科書から姿を消していました。しかし最近になって、言葉における対話性の回復が必要と認識され、「言語教育、特に口語表現の教材として演劇教材が有効」と報告されています。

日本語学習においても、授業で「漢字」や「語彙」などの知識を教えるインプットばかりではなく、実際に日本語を用いるアウトプットが必要であり、その方法として日本語を使う必要性・状況を作っていくコミュニカティブ・アプローチが有効です。そのコミュニカティブ・アプローチの一形式として、「劇」の活用があります。一般に、コミュニケーションは「情報」と「感情」の2つの基本要素を交換することで成立すると言われていますが、会話で成り立つ「劇」では、まさに「情報」と「感情」の両方を自然に交換することができるため、非常に良いコミュニケーションの練習になります。また、ドラマには普通の対話練習やディスカッションにはない以下の特徴があります。

(1)状況設定:「いつ、どこで、誰が、何をしたのか」というドラマの状況設定により、日常とは異なる世界を日本語の語彙で構築することができます。例えば、日本の昔話を台本に選ぶことにより、その時代の風俗、文化、習慣などを学習する効果があります。

(2)登場人物の立場になる:ドラマでは、自分以外の人物の立場に立ってみることにより、普段できない経験、物の見方を学習することができます。

(3)非言語要素の重要性:役作りのため、ジェスチャー、アイ・コンタクト、髪型や衣装、立ち居振る舞いなど、普段のコミュニケーションでは実は言語よりも大きな役割を果たしている、非言語要素に注意を払うことができます。それにより、「日本人的な」コミュニケーションの学習にもつながります。

(4)クラスの協力体制、達成感、学習意欲の促進:クラス全員が参加して1つの劇を作り上げることにより、クラスの協力体制が固まります。また最後に学校内で発表することにより、日本語で1つの大きなことを成し遂げたという達成感を味わい、その後の学習意欲につながります。

現在私の担任クラスでは、日本の歴史学習としての効果も踏まえ、平安時代の物語「竹取物語」を取り上げています。子どもたちにとっては、言葉だけではなく、身体を使ってジェスチャーも交えて日本語を学ぶことがことのほか楽しいようです。

 
■参照1:文部科学省ウェブサイト
Web: www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/seido/08073004/002.htm
■参照2:モデル・ランゲージ・スタジオ(MLS)ドラマ・メソッド
Web: mls-co.com/drama.html


継承日本語教育を考えよう

 
 
西牟田佳奈(にしむたかな)
 

プロフィル◎日本企業の駐在員として3年間シドニー勤務。その後、シドニー日本クラブ理事、副会長を務め、日系の子どもたちの日本語教育支援に携わる。現在、翻訳業およびJCS日本語学校ノーザンビーチ校日本語教師

 

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